今回は「クロスメディアからクロスコミュニケーションへ」というテーマでお話をしたいと思います。ちょっと、わかりにくい概念的なテーマですが、非常に重要な大きな変化の潮流を示していると考えています。それは、広告展開をプランニングする際の視点、あるいは大きくは広告業の業態に対する考え方の改変にも由来していると思うからです。
広告メディアに関する考え方の激変
そもそも、広告会社が考える広告展開とは、メディアを使って広く消費者に情報を提供することであり、メディアの広告取次がビジネスの根幹です。しかし、一方で広告主の考える広告とはメディアを使うことが目的なのではなく、商品がより売れるために、より多くのお客様を獲得するために展開する活動が広告ということになります。
これまでお話してきたように、広告のメディアに関する考え方は昨今劇的に変化しています。従来の新聞・TV・雑誌・ラジオのマス4媒体は、基本的にタイムテーブルや誌面といった枠があり、人気の枠に広告を載せることでクライアントの商品が売れていました。しかし、現在は消費者の心をつかむ仕掛けとともに、表現する場所も大きく変化しています。たとえば、屋外広告(OOH:Out Of Home Media)などでは、「クリエイティブメディア」といわれるような新しい、これまで広告のフィールドとしては見られていなかった場所がメディア化しています。また、インターネットには無限とも言える掲載領域が存在し、広告主のサイトが大きなトラフィックを稼いでいます。そしてUGC(User Generated Content)の登場によって、広告のアプローチの変化はますます拡大しています。つまり、現在は広告活動そのものの意義が変化しているのです。
これまでの広告は、メディアの活用と表現はある種の別作業としてとらえられていました。なぜなら、それは広告会社のセールス活動はメディアセールスが主体だからです。しかし、「消費者との対話」や「ブランドの育成」などの重要性が認識されるようになった今、単に知らせれば(告知すれば)モノが売れるという構造が成立しなくなってきています。現在のマーケットでは、メディアを中心とした活用よりも、その上で何を語り、どうコミュニケーションするかのほうが重要になっているのです。そこで注目されるのが今回のテーマでもある「クロスメディアからクロスコミュニケーションへ」という視点です。