消費者・生活者とのコミュニケーションの確立
広告会社のミッションは企業体としての必要性からメディアをセールスするということがメインになりがちですが、今、クライアントが求める広告展開は「消費者とのコミュニケーション」です。そして、そのコミュニケーションの確立には、単体のメディアでの一方向的な告知活動ではなく、さまざまな、消費者とのあらゆる接点を駆使した統合的な(ホリスティックな)コミュニケーション活動が必要だということになります。
そのため、重要になるのが総合的なコミュニケーション活動、「ホリスティックコミュニケーション」とか「360°コミュニケーション」などと言われていますが、これは、単に消費者・生活者への到達効率を分析し、望まれるターゲットに広告接触の機会を創出するという考え方だけでは成立しません。なぜならば、まず「何を・どのように伝え・どうコミュニケーションを構築するか」というグランドデザインのもとに、単なる接触効率だけでなく、消費者・生活者のマインドを考慮した影響力や、好感度・消費欲求を刺激する機会の創出として考えなければいけなくなってくるからです。
しかし、コミュニケーションの確立を成功させるには、360°あらゆる接点を活用しなければいけない!というものではありません。いかに継続的に良好な関係をマーケットの中で形成し、モノが売れることに貢献できるか、消費者・生活者に豊かさやメリットを提供することができるかを真剣に考える必要があるということです。その点においては、これまでのクリエイティブ=メディア上での表現制作という考え方やそれにもとづく体制では、望まれるアウトプットを生み出すのは難しいかもしれません。メディアの選定、コミュニケーションの構造開発、そしてそれらを体現して最大効果を生み出す表現開発にいたるまで、トータルに構築することができなければならないからです。
360°コミュニケーションとは
これまで、告知(認知)としての広告展開では、マス4媒体といわれる圧倒的なサーキュレーションのある(不特定多数の圧倒的に多くの人が目にする・耳にする情報接点)が広告活動の中心でした。現在のようにインターネットや携帯電話が普及する以前、情報網が発達する前の環境では、新商品やより快適な生活を提供してくれるような情報が一般的に広くは知られていないかたちで多く存在していました。そして、それを広告によって知らしめることで、圧倒的に大きな規模の消費者・生活者が購買行動に移るという現象があったのです。
しかし、現状ではインターネットなどの発達により新商品はその開発段階から多くの一般の消費者・生活者の注目を集め、さまざまな情報がフリーペーパーなどで手軽に日常的に手に入るようになりました。この状況では、いざ発売の際に大きな広告展開を行っても「それは、知らなかった。試してみよう!」とアクションを誘発するまでの原動力にはなり得ません。

さらには購入するよりも先に、一般の信頼できる生活者・消費者からの評判を知る機会が増えたため、すでに事前の印象・先入観が形成されてしまうという現象にまで至っています。つまり、日常的に情報が氾濫している生活環境では、新商品登場のトピックスや商品改良などのプロダクトやサービスに特化した情報だけでは、ニュースバリューを持ちにくくなっているということが言えると思います。
そこで、ニュース性に頼るだけではなく、常日頃からの継続的で良好なコミュニケーションを構築し、事前にさまざまな情報に接していても「やはり、自分で試してみたい!」と思えるような関与度を高める関係づくりが重要になってきていると考えることができます。そこで重要になるのが360°、日常の接点でいかに効果的で良好な関係を構築し、消費者・生活者の興味・関心の度合いを高めながら、常に関与度を高めることであり、それが広告効果を高める上で重要なコミュニケーションになっているのです。