デジタルの情報接点から販売店への来店につなげる「デジタルイン、リアルアウト」
青葉 ―― ここから現在のお話を伺っていきたいのですが、具体的に、現在どのような業務を担当されているのでしょうか。また、何に関心をお持ちですか?
私が担当している業務は大まかに、すでに日産車に乗っていただいているオーナー向けの取り組みと、他社自動車保有者向けの取り組みの2種類があります。前者の施策としては、例えばオーナー専用の紙媒体のマガジンを約260万部発行したり、オーナー向けサイトを提供したりしています。
また、ここ数年はデジタルの活用が最大のテーマです。お客様のカーライフに対するニーズは本当に様々なので、それにどう応えてリアルな現場に返していくかということを常に考えています。私が販売促進に携わってからずっと掲げているテーマに“デジタルイン、リアルアウト”という考えがあります。今よく使われる言葉に置き換えるとO2O(Online to Offline)になるのでしょうが、デジタルの情報接点から実際に販売店などに足を運んでもらう流れをたくさん作っていきたいと思っているのです。
青葉 ―― 「デジタルイン、リアルアウト」についてもう少し詳しく聞かせてください。具体的には、どのようなことに注力されているのですか。
お客様とのコミュニケーションをダイレクトに取って、自分たちでしっかりトリプルメディアをマネジメントしていくことは引き続きやっていきたいと考えています。企業が活用できるチャネルが増え、我々もさまざまなチャネルを通してコミュニケーションを展開していますが、お客様がどこから見ても「日産らしく」見えることを大事にしていきたいと考えています。
また各地域のディーラーは別会社のため、地域のお客様それぞれに合ったコミュニケーションを展開しているので、本社が厳しい統制を図るのは得策ではありません。しかし、日産という統一したブランドイメージを作り上げ、販売促進するために、ディーラー向けに20~30個のプログラムを用意しています。例えば、各ディーラーのポータルサイトを作成するシステムを構築したり、年間10億枚発行するチラシの企画から印刷、DMの発行も一括で請け負ったりするなど、今もいろいろと工夫して進化しています。
青葉 ―― デジタル活用の観点では、ソーシャルメディアへの対応も無視できないと思いますが、その点についてはどうお考えですか。
クルマの保有期間が長期化する中で、お客様と緩やかにで構わないので長期的につながりを持ち、常時コミュニケーションが取れる環境が大事だと考えています。現在のソーシャルメディアを活用した取り組みも、そうしたことを踏まえて展開しています。日産という会社やブランドをその人に合った形で知ってもらい、親近感を持ってもらうことが重要です。その積み重ねが、企業のブランドを築いていくと思っています。
ただ、ソーシャルメディアを活用した緩やかな展開は、ともすれば成果があいまいにもなりがちです。そこで当社では、数値を重んじています。20~30万アクセスが増えて終わりではなく、その先に何が起きるか説明できて初めて、その施策を行う意味があると思います。「リアルの成果に導くためのストーリーを考えるように」と部下にも常に伝えています。
青葉 ――貴田さんご自身は、20~30代の頃どのような考えで仕事に取り組んでいたのですか?
営業に移る前のことですが、仕組みを改善していくプロセスには興味があったので、営業をやりたいと思いながらも目の前のことに邁進していたように思います。ただ、同時に若い頃はどうしても甘えたところもありました。20代後半で「全工場の部品物流改革プロジェクト」を任されたとき、当時はワープロもなかったので手書きの企画書を上司に提出したところ、目の前で書類を破かれてしまいまして。それはショックでしたが、見直すと自分でもひどい出来でしたし、どこかで甘く見ていたのだと反省しました。
そのプロジェクト自体は10年に1回あるかないかの大きなもので、自分にとってもチャンスでしたし、上司の期待に応えたいという気持ちももちろんあったので、奮起して企画書をすぐに出し直しました。厳しい上司でしたが、マネジメントや部下の育成方法を身を持って教えて下さった方で、本当に感謝しています。
