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COLUMN

戦略の見直しが必要な時代に求められるWebアナリスト像
事業戦略からWeb解析業務に落とし込む5つのステップ


事業戦略からWeb解析業務に落とし込む5つのステップ(1~2)

 では、どのようにして事業戦略にWebアナリストが貢献するか。事業戦略を再確認し、どのように解析業務、レポート業務に落としていくのか、そのための5つのステップを以下に示す。

  1. 事業戦略を理解する
  2. オンライン活動の位置づけと目的を整理する
  3. チャネルごとに目的と指標(KPI)を設計する
  4. レポーティング体系を決める
  5. 各レポーティングの内容とインターフェースのデザインを作る

1.事業戦略の理解

 まず、事業環境を把握し、自社の事業戦略を理解する必要がある。企業によっては、経営方針などが文書化されていても、全社レベルの方向性だけが書かれ、機能別、組織別にまで落とし込んで書かれていないことも多い。自らの頭で自社の戦略を考えて理解することが重要である。

 特に、近年では海外市場の強化や低価格帯製品の導入など戦略レベルで大きな変化がある企業も多い。そのような場合は、Webアナリストも過去の延長で仕事をするのではなく、新たな気持ちでポーターの5つの力による分析(業界構造分析)やビジネスモデルキャンバスなどのフレームワークを使って事業の本質について社内のメンバーで議論することも理解を深める方法として有効だ。ビジネスモデルキャンバスは、事業について、以下の9つの要素ブロックを検討し、創造していくツールだ【注3】。

【注3】
ビジネスモデルキャンバスのフォーマット
(出典:『ビジネスモデル・ジェネレーション』,翔泳社,
アレックス・オスターワルダー (著), イヴ・ピニュール (著), 小山 龍介 (翻訳) 2012/2/10)
ビジネスモデルキャンバス
  1. 顧客セグメント(Cusutomer Segments)
  2. 顧客価値(Value Propositions)
  3. チャネル(Channels)
  4. 顧客との関係(Cusutomer Relationships)
  5. 収益の流れ(Revenue Streams)
  6. リソース(Key Resources)
  7. 主要活動(Key Activities)
  8. パートナー(Key Partners)
  9. コスト構造(Cost Structure)

 少し例をあげて説明しよう。ここでは京都に残る伝統的な町家をオーナーから借り受け、改装して旅行者が宿泊できるようにする「町家ステイ事業」を新規事業として始めたと仮定しよう。

 日本の自然や文化遺産を源にして訪日外国人を増やす観光業は閣議決定された日本の新成長戦略にも含まれており、放置すれば老朽化して壊されていく町家を保存し、京都の景観を守り、また滞在した人たちに贅沢な空間と落ち着いた時間を楽しんでもらえることは社会的にも意義があることだと思う。

 ちなみに、これは実在するビジネスで、私自身も2回町家に宿泊したことがあり、和風でセンスのいいインテリアや檜風呂などの設備も気に入って、京都にいく友人にはよく薦めているところである【注4】。 この町家ステイ事業のビジネスモデルキャンバスを描くと図1のようになる。

【注4】

 町家ステイ事業の参考のため株式会社庵にヒアリング協力いただいた。

2. オンライン活動の位置づけと目的の整理

 企業活動の多くが事業戦略の実現のために行われるが、オンラインでの活動もその例外ではない。事業戦略実現に必要な企業活動のうち、Webサイトの役割やオンライン活動の目的を整理する。

 企業は潜在顧客や既存顧客に対して適切なコミュニケーションを図っていかなければならない。第1のステップで整理した「顧客価値」をどのように「顧客セグメント」に伝え、「顧客との関係」を気付いていくか、オンラインで実現することを整理する。

 町家ステイ事業の場合であれば、まず町家に宿泊できるということを多くの人に知ってもらわなければならないため、富裕層を読者にもつ媒体に広告を出す。また、きれいに整備された中庭や上品な調度品のある空間でゆっくりお酒を楽しんだりするイメージを描いてもらえるような、体験を思い描けるようなWebコンテンツを充実させることが必要となる。ソーシャルメディアを使って双方向のコミュニケーションを意図する場合もあるだろう。

 このようにWebアナリストは、事業戦略上、企業がどのような手段でどのような目的のために、どのようなメッセージを市場に伝えるべきかを理解し、そのうちオンラインチャネルに期待されていることが何かを整理することが重要である。この際、Webアナリストは自分の管理範囲(オンラインチャネル)だけでなく、雑誌や旅行代理店向けキャンペーンなどについても理解しておくほうが、後に改善施策を立案する時により効果の高い対応を考えるとができる。

次のページ
事業戦略からWeb解析業務に落とし込む5つのステップ(3~5)

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この記事の著者

手嶋 進(テシマススム)

エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社 取締役

1988年慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。1995年ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。帰国後、ベンチャー企業(現ソニーグローバルソリューションズ)の執行役員として自社の事業開発を進め...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2012/11/27 20:36 https://markezine.jp/article/detail/16762

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