自信をもってプレゼンするために
MZ:マイクロソフトの全製品を担当するということは、あらゆる製品に精通していないと務まらないですよね。
西脇:マイクロソフトは、サーバーから、クライアント、コンシューマ、ゲーム、ソーシャルもやっています。ですから、ゲームのデモをやることもあります。でもXboxがいかに楽しいかということを知らないと価値を伝えられないので、自分で買って勉強するんです。会社から与えられたものもありますが、基本的には自分で投資をし、使いこなして相手に伝えるようにしています。これは競合製品も同じです。
MZ:「プレゼンするからくださいよ」といえば、いくらでも製品をもらえそうな気がするんですが。
西脇:そうすると、「仕様を届ける」ことになってしまうんですよ。自分でお金を払って実際に使うことではじめて価値が語れるんです。今日も広島出張から戻ってきたばかりなんですが、新幹線に乗っている移動時間などを使って効率的に勉強しています。

MZ:そういう知識の裏付けがあるからこそ、プレゼンの迫力が出てくるんでしょうか。
西脇:エバンジェリストが価値を伝えるときに「不安」が出ちゃだめなんです。出てほしいのは「自信」なんです。不安が出るときというのは、「この人は自分よりも知ってるんじゃないか」とか「自分がやってることは不確かかもしれない」と思っているとき。だからそれを確かめるために自信をもつまでやる。
MZ:西脇さんはエグゼクティブの方にプレゼンすることもあるわけですが、そういうときは、製品知識だけでは補えないような別の不安やプレッシャーがあると思うのですが。
西脇:エグゼクティブの方は仕様はどうでもいいんです。あの方々はすぐに気づきますよ。「ああ、こいつは製品の説明してるな」と。私も、仕様や機能を伝えようとしていた時期があります。「こういう機能があって、こんな重さで、こういう形で、タッチするとこういうふうになって……いかがですか」と。今から思うと、その当時、必ず言われたのは「で、それで何ができるの?」。
MZ:言われた瞬間に、説明していた人はフリーズしそうですね。
西脇:だから、「何ができるか」を自分で買って試すんですよ。お客さんは経営層になればなるほど、仕様じゃなくて価値にお金を払うんです。これは、マーケティングで非常に重要な要素なんですけど、仕様でお金を払おうとすると原材料費の積み立てになる。だから「高い、安い」という話になる。でも価値だったらなかなか値段は言えないじゃないですか、お互いに。だから仕様を届けるのと価値を届けるのは違うんです。この違いは重要です。