大小と窓口の大小をミックスさせる “ツイッター未来像”
例えば商品の使い方についての質問がオンラインで挙がったとき、店舗ならば現場で使い方の動画を撮影し、それをもって応えることができる。オンラインでリアルな情報を手にできれば、それはオフラインへの大きな誘客経路になる。逆に、店舗では全社的な規模感の情報は扱いにくいので、その場合は本部アカウントと連携する。
「このように、情報の規模の大小、そして窓口の大小をミックスさせて洗練させることが、ハンズの描く“ツイッター未来像”であり、ネットとリアルの連携のひとつの形だと思っています」(緒方氏)。
一方、話しかけやすい雰囲気を作り上げただけに「これ店舗にある?」というリプライが多くなったため、それに対応するべく前述の「コレカモネット」を開設した。商品を探しているツイートを検出し、独自のアルゴリズムと分析によって適した商品を検索、店舗またはECを案内する仕組みだ。
加えて2010年より開始しているフェイスブックでも、新鮮さや共感を覚える投稿を意識している。写真の有無でインプレッションが大きく変わるため、写真は必須というが、「あくまで共感を誘うのは言葉であり、内容。邪魔にならない投稿を心がけています」と緒方氏。
東急ハンズを愛してくれる人を増やすことがゴール
同社ではさらにオンラインとオフラインのシームレス化を促進するため、昨年12月にネットストアのリニューアルを敢行。商品ページには各店舗の在庫状況や売上ランキングを表示し、また「今、コレ売れました!」と銘打ったスペースで全店舗のPOSデータとのリアルタイム連動も実現した。店舗で購買された商品をリアルタイムで表示し、未知の商品への関心を喚起している。
地道な運用を続けた結果、今ではツイッターで紹介した商品が当日にネットストアで3~5倍と一気に売れ、翌日以降では店頭の動きに反映されるという好事例も増えてきた。ネットストアへのアクセスも、年を追うごとにソーシャルメディアからの流入が増えている。ただ、売上や流入数などを無理に追わないのは、ソーシャルメディア運用を始めた当初と変わらない。
「来店喚起となる投稿や問い合わせのしやすさなどにより、東急ハンズを愛してくれる人を増やすのが最終的なゴール。実際に『東急ハンズ』アカウントのツイート内容はその8割がリプライに対する返信です。商売の基本である対話から生まれる愛着が、買い物時の第一想起率を上げると考えています」。
それに加えて、顧客の生の声を社内の各部門にフィードバックすることで、インナーモチベーションの向上に大きな手応えを得ているという。緒方氏は、「ハンズにとってソーシャルメディアとは、顧客とより深く関わるための新しい窓口」だと定義する。そのぶれない意識が、ファンの拡大につながっているといえるだろう。