エステーの宣伝の要は「左脳で考え抜き、アウトプットは右脳に落とし込む」
青葉―― CM制作をはじめ、色々と工夫をされていると感じましたが、コミュニケーションの仕方に関するポイントを教えていただけますでしょうか。
それを話すのは……安くありませんよ(笑)。というのは冗談ですが、集約すると大きく2点挙げられます。ひとつは「右脳的で“下から目線(お客様目線)”のアウトプット」を心がけること。もうひとつは、「ネット展開」を意識することです。
まずひとつ目の「右脳的で“下から目線(お客様目線)”のアウトプット」ですが、企業発信のメッセージは、とかくロジックをそのままぶつけて上から目線になりがちです。一方で、生活者としての私たちはテレビを論理的には見ていません。映画だって人間関係だって、言うならば右脳で受け止めたりかかわったりしています。そこに訴えかけようとするのなら、もちろんロジックは大事ですが、アウトプットは右脳的でないと届かないのです。
例えばCMなら現状の課題やそれを打破するメッセージを「どういう順番」で「何が届けばそれが伝わるか」緻密に考えていきます。その上で、「どういう印象が残ればいいのか」を受け手の目線で導き出していくのが、右脳的にアウトプットするということです。そしてさらに、「目線を下げる」。これは、一例としてあげるなら、CMでコミカルな歌を作ったりおかしな動きを真面目にやったりして、敷居をぐっと下げるということです。
エステーは一般的な企業とは真逆の立ち位置でコミュニケーションを立案している
「目線を下げる」と言っても、それを表現するのはメンバーにとって苦労を要するポイントです。例えば当社は1998年から毎年ミュージカル「赤毛のアン」を開催しています。今年で11年目になりますが、そのキャッチフレーズをコピーライターに考えてもらうと、ロジックで説明されて挙句の果てには、「生きる力をあなたに」とか「湧き上がる感動」などの案が出てくる(笑)。
しかし、考えてみてください。友達に「生きる力がもらえるんだよ!」とミュージカルに誘われて、行きたくなりますか? 普通の感覚なら一瞬でヘンだと分かるのに、ビジネスという枠の中で考えた途端、左脳的な考えのアウトプットになってしまうのです。
