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「テレビCM好感度ナンバー1。でも実際はネットを活用した戦略が6割を占める」 ─ エステー 鹿毛康司氏

最終的な目標は、お客様の目をハートにさせること

 青葉―― 具体的には、どのようなステップでアウトプットを導いているのですか?

 例えば今、モーニング娘。OGの高橋愛さんを起用した「かおりムシューダ」のCMを放映していますが、香りつき防虫剤では当社は競合他社と比べてシェアが低いという課題がまずありました。“ニオイがつかないムシューダ♪”は、長年のサウンドロゴの功績で浸透している一方、「防虫剤独特のニオイはつかないが、いい香りがついているムシューダ(=かおりムシューダ)もある」ことが伝わっていなかったのです。

 そこで訴求ポイントを「ムシューダは防虫剤のニオイがつかない」「それに香りをつけたら『かおりムシューダ』」とし、2軸をしっかり見せることにしました。

 では、これをどうやって右脳的に伝えるか? 設定や撮影方法、トーン、歌やダンスをつけるならどんなものがいいか、ロジカルな思考と受け手が感じるであろう印象の両方から探り、明確なクリエイティブの方針を立てていきます。さらに撮影後の編集で、30分の1秒のコマの調整を重ねながら、狙いどおりの表現に近づけていくのです。

エステー宣伝部ドットコムでは、制作裏話を紹介している

 青葉―― なるほど。最終的なアウトプットは“右脳的な”笑いがあるユニークな表現になっていますが、そこに至るまでにはロジカルな思考があるわけですね。

 そうです。というと偉そうですが……、決してノリでつくっているわけではありません(笑)。また、本当にそのアウトプットでいいのかを検証することも大事です。例えばよくアンケート調査結果からお客様の反応を得るということをよくやりますが、数字ではお客様の本音はでてきません。数字ではなく、お客様の顔、反応から感じるべきですね。

 だから我々は、商品やCMをお客様に見てもらうグループインタビューの模様をマジックミラー越しに確認して、本当の受け止められ方を見極めています。私たちの最終的な目標は、お客様の目を「これステキ!」「これがほしい!」とハートにさせること。特にネットマーケティングではクリック数をはじめ数字ばかり見てしまいがちですが、そういう人には「目指すものを忘れていませんか?」と声をかけたいです。

 青葉―― おっしゃる通りで、読者の中にもネットの数値に一喜一憂して目的を見失っているケースが多いようです。ヒットCMを作る鹿毛さんが「右脳的なアウトプット」ともに重要視されているのが「ネット展開」だということが興味深いのですが、もう少し詳しくお聞かせいただけますでしょうか。

 当社の宣伝戦略は、実はその6割がネットを活用した戦略になっています。具体的な手順としては、ソーシャルメディアで論調を作り最終的にはネットニュースを狙います。テレビとネットをいかに掛け算するかという点を考え、話題作りや浸透を図っています。2010年の前代未聞の「お詫びCM」も、2011年のミゲルの「消臭力CM」シリーズもネット展開がカギでした。

 直近では「かおりムシューダ」の新作CMで、私は愛ちゃんファンに対して4月21日にツイッターで「おい!高橋愛を溺愛してるお前ら!明日の月9ドラマで『高橋愛の可愛さをフィーチャーしたバージョン』を一回だけ放送するぞ。本当に微妙な10分の1秒の違いからカット違いまで!全五箇所!わかった奴のTwitを愛ちゃんに直接見せてやる!録画しろ!」というコメントをツイートしました。このようにネットで話題になるような展開を見据えてCMをつくっているのです。

2013年4月21日の高田鳥場ツイート
2013年4月21日高田鳥場のツイート

 本気でネット上の拡散を狙うのならば、ネットにいる皆さんが何を求めているのか、その気持ちを考えないといけません。ネットは他のメディアに比べ自由度が大きいので、あれも言いたい、これも言いたいとなりがちです。最終目標はお客様の目をハートにさせることと言いましたが、情報で溢れかえっているネットで届けるには、もう一捻り知恵を振り絞って、届けるための工夫をしないとダメなのです。

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この記事の著者

青葉 哲郎(アオバ テツオ)

サイコス株式会社 代表取締役
東京都出身。明治大学政治経済学部卒業。1994年4月 ジャスコ (現イオン)入社。1995年マイクロソフト入社。トップセールスを経て、最年少ブランドマネージャに就任。MSN事業開発など担当。2001年インテリジェンス入社。マーケティング部を設立し『はたらくを楽しもう。』で同社を転職ブランド1位に。2008年リクルートエージェント入社。『転職に人間力を。』で新ブランドを立ち上げ、コスト減と広告効果の最適化...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/05/20 08:00 https://markezine.jp/article/detail/17607

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