アトリビューションの観点ではアクセス解析ツールのデータでは不十分
これまで述べてきたように、媒体社のレポートはコンバージョンの重複カウント問題を抱えています。その原因は、重複リーチという現実を考慮していないことにありました。
前回の記事でも触れたように、インターネット広告は効果測定ができるといって売り込んでいた時期がありましたが、この重複カウント問題という致命的な課題は長い間見過ごされてきました。その解決策として、2005年頃から媒体社側のレポートはあくまでも参考値程度であって、予算配分などを決定する際には、アクセス解析ツール側のコンバージョン数を使っていくという流れが業界に出てきました。

アクセス解析ツールでコンバージョンをカウントすることが定着するかに見えましたが、やはり問題が露見し始めました。セッション単位でコンバージョンを計測するアクセス解析ツール自体に問題はないのですが、広告効果測定という視点、つまりアトリビューションの観点から考えた場合に、十分なデータが取得できているとはいえないのです。
アクセス解析ツールは広告効果測定のために作られたツールではない
アトリビューションの観点から、アクセス解析ツールでは解決できないこととしては、リーチとフリークエンシーの問題などは容易に思い浮かぶでしょう。
また前回の記事で触れた広告効果測定のコミュニケーション効果の側面、AIDMAとAISASにおける消費者の意思決定プロセスについては、アクセス解析ツールのデータだけでは何も分かりませんよね。


また、セッション単位のコンバージョン数に基づいてCPAを算出して、CPAの目標値を満たすために日々のオペレーションをおこなっていると、CPAの目標値はクリアできても、コンバージョン数の目標値をクリアできなくなってくるという課題も出てきます。
これは縮小最適化とも呼ばれます。1セッションという30分という単位でコスト効率だけを追求すると、超短期的視点でペイする広告だけが効果のある広告だとみなされることになります。その結果、目標値をクリアできる広告は少数になり、縮小最適化に陥り、コンバージョン数を増やすことができないのです。これでは本来のマーケティング目標を達成できなくなってしまいます。
もともと、アクセス解析ツールは広告効果測定のために作られたツールではありません。そのため、広告効果測定、あるいはアトリビューションのニーズを満たすことができないのは、ある意味当然かもしれません。本来のアクセス解析ツールの役割は、サイト内でのユーザーの動きや閲覧時間、閲覧ページ数などを計測し、サイトの改善のために役立てるものです。そのため、コンバージョン数を測ったりして広告効果測定をおこなうのは、そもそも無理があるとも言えます。
さて、今回はアクセス解析ツールによるコンバージョン測定の仕組みを説明しました。その基本的な仕組みを知ることで、広告効果測定、すなわちアトリビューションをきちんと行うためには何が足りないのか、理解できましたでしょうか。次回はアクセス解析ツールの問題を解決するソリューションの一つである広告効果測定ツールについて解説していきます。