オーディエンスターゲティング広告をユーザーはオプトアウトできるのか?
── 先程お話に出ましたプライバシーのルールに関して、もう少し聞かせてください。国内、海外の環境はどのようになっているのでしょうか。
広屋:米国では、政府が個人情報に対してプライバシーを保護する方針と法整備が整っています。それに基づいて、広告主、エージェンシー側双方が顔を連ねる団体が、枠組みを作っています。また、団体で予算を持ち啓蒙活動も行っています。
米国では、個人のクッキーデータを使ったターゲティング広告を理解してもらうためと、使われたくない場合は安全にオプトアウトをするためのサービスサイトが立ち上がっています。
メディアに紐づく広告の場合は、そのサイトでオプトアウトすればターゲティングされなかったのですが、オーディエンスターゲティングの場合、一般消費者はどこでオプトアウトできるのかが不明なことが多いです。そのため、そのサービスサイトに行けば利用サイト一覧が出てくるので、自分でサイトを選択し、オプトアウトできる環境が整備されています。
日本の状況はというと、個人のクッキーデータに関してのガイドライン、啓蒙などを進めるためにDDAIという組織をcciとDACが立ち上げています。
大島:日本の場合は、ヤフーという大きなポータルメディアがあり、その中に大量のオーディエンスデータが溜まっている状況と言えます。つまり、日本のデジタルメディアは1対Nの特殊環境のため、米国のようなオーディエンスデータ整備の環境が進んでいないということがあります。結果として、データがヤフーに溜まっていく傾向がさらに強くなっていると感じます。
DSPとアドエクスチェンジは一蓮托生の関係
── 次に、DSPについて教えてください。DSPの利用メリットとして何が挙げられるのでしょうか。サービス数は国内も出揃ってきたのかなと感じています。
大島:まず、DSPの裏側には必ずアドエクスチェンジがセットになっているということを忘れてはいけません。DSPとはあくまでもツール・サービスであり、そこにRTB(Real-Time Bidding)というテクノロジーが加わり、さらにオーディエンスデータを提供するプラットフォームであるアドエクスチェンジがあって、初めて成り立ちます。広告主側のメリットは広告枠が安く購入できるという点でしょう。確かに通常より安く購入できると思います。
オーディエンスターゲティングの本質的な意味は、スペースではなくオーディエンスを購入するということが、国内の場合は先にも申し上げたとおり、そもそもオーディエンスデータ量が少ないので、メリットと言われると価格面になってしまうと思います。
広屋:その他にもDSPのメリットとして、広告主さんがキャンペーン運用などを細かい精度で管理をしやすいという点もあると思います。例えば、フリークエンシーコントロールにおいて、媒体を横断してある人へのフリークエンシーが一定値まできたら購入を止めるということも可能になります。コストが発生する前にコントロールができることが大きいと思います。
大島:管理という意味ですと、ほとんどの会社の方は運用も含めてアウトソーシングしていると思いますが、私たちの場合は、ハウスエージェンシーで運用をしておりましてノウハウを内部で保有しています。自分たちで経験し内部で運用してノウハウを保持することが、とても重要だと思っております。
広屋:大和ハウス工業さんのような大手企業さんの場合ですと、内部運用していらっしゃる広告主様もおりますが、現状は外部に運用を任せているケースが多いと感じます。
大島:この領域はスキルを持つ人材がいないと、内部での運用がそもそも厳しいという面があります。私どもの場合、その人材がおりましたので運用ができています。仕組みの理解、自社のブランド、ニーズを把握し、KPIを設計できる能力がまず求められます。実際に運用を開始してからは、PDCAを素早く回していくスキルが求められます。これら全体を理解していないと効果の高い運用は難しいのではないでしょうか。
広屋:おっしゃる通りですね。さらにつけ加えるのならばDSPへの知識だけでなく、つなぎ先であるアドエクスチェンジへの理解やログ解析の能力も問われます。ログ解析データを見ながらどのパフォーマンスがいいのかがわからないといけません。つまり、デジタルテクノロジーとブランドへの理解が高いレベルで求められるというわけです。
