モバイルシフトによりブランデッド・コンテンツが一般化した
「ブランデッド・エンタテイメント」という言い方は、ご存じでしょうか?2003年頃、BMWフィルムズのような作品は、そう呼ばれていました。実際、それまでは、ミッション・インポシブルにSONYのバイオが出て来るとか、007にアウディが出て来るとか(これらは、プロダクト・プレイスメントと呼ばれます)、ブランドのために映画に代表されるエンタテイメントをどう活用するか、という狭い視点で語られていました。BMWフィルムズも、発想としてはその延長線上にあるわけです。

しかし、ソーシャル・メディアやデジタル・デバイスの発達により、“エンタテイメント”という言い方では、つかまえ切れない事例が出てくるようになりました。ツイッターやフェイスブックを活用した施策だったり、プロジェクション・マッピングを用いたイベントだったり、ネット×屋外広告だったり、読者の方も思い浮かぶのではないでしょうか。そこで、より広い範囲を指す言葉として“コンテンツ”が使われるようになり、いまでは「ブランデッド・エンタテイメント」よりも「ブランデッド・コンテンツ」という言い方の方が一般化したということでしょう。
しかし、今でもエンタテイメントという言い方も一部では使われています。欧米のメガエージェンシーは、例えばJWTエンタテイメント、Ogilvy&Mather エンタテイメント、Wieden&Kennedy エンタテイメントなど、この分野の子会社や部門を持ち始めています。
冒頭でご紹介したカンヌ国際広告祭(現在はカンヌ国際クリエイティビティ祭に改称)では、2012年に15番目の部門としてブランデッド・コンテンツ(&エンタテイメント)部門が創設されました。ここでは、コンテンツという言葉とエンタテイメントという言葉が並列で使われています。
「ブランデッド・コンテンツ(&エンタテイメント)の定義は、ブランドによるオリジナル・コンテンツの制作、あるいは、既存のコンテンツとの自然な統合だ。その目的は、伝統的な広告の手法を使わずに、ふさわしいコンテンツやプラットフォームを通してコンシューマーとエンゲージし、ブランドのメッセージを伝えることにある。」
上記はこの部門の紹介文の一部です。わりとわかりやすいですよね。
消費者に受け入れられる広告の秘訣はブランデッド・コンテンツにある
こうした「ブランデッド・コンテンツ」が注目される背景には、Ad Avoidance(アド・アボイダンス)つまり「広告を避けようとする消費者の傾向」の強まりがあります。そこに、ソーシャル・メディアやデジタル・ディバイスの発達という要素が加わって、いまや、「ブランデッド・コンテンツ」的な作品/施策へのチャレンジは、さまざまな企業によって日常的に行われています。
次回は、「ブランデッド・コンテンツ」が注目されるようになった背景についてを中心に、引き続きこの話題をお送りします。ご期待ください。