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MarkeZine Day 2025 Retail

統括編集長インタビュー

「ブランドは企業がつくるものではなく、消費者の中に生まれるもの」 無添加石けんの“真の価値”を伝えるマーケティング施策


04年にWeb上で動画プロモーションを展開「Webは自由な媒体」だと実感

 ── いい商品を作っていたシャボン玉石けんさんが、17年も赤字続きだったとは意外です。環境意識の低さが原因だったのでしょうか。

 そうですね。マーケティング施策も、社会の目が「無添加」に向いたときを狙って行っていたようです。例えば75年の発売当初は、朝日新聞紙上で連載されていた小説「複合汚染」横に広告を出しました。合成洗剤への関心が、シャボン玉石けんの爆発的な売上につながったそうです。しかし価格が他社よりも高かったため、連載終了と同時に売れなくなってしまいました。次に注目されたのが91年です。

 ── 15年以上も、低迷していたのですね。

 無添加石けんへのこだわりをまとめた書籍『自然流「せっけん」読本』を出版した91年、湾岸戦争が勃発しました。当時有名になった「油にまみれた水鳥」の写真が環境意識を高めたようで、書籍への問合せが増えたようです。また、1999年に「買ってはいけない」という書籍にて、買ってもよい商品として当社商品をご紹介されたことも売上増加に火をつけました。最近もある評論家に『「シャボン玉石けん」の挑戦』という書籍を発行してもらいました。ブランド自体は広告ではなくPRで構築されると考えています。そのため、今後もPR活動は強化していきたいですね。

 ── 時代の潮目に合わせて、商品の価値を伝えていったわけですね。ちなみに松永さんのマーケティング人生の潮目はどこにありましたか。

 03年に入社した食品メーカー「ハインツ」です。04年に、ケチャップの蓋を下につけたさかさまボトルを発売したのですが、一般の方に、町でその驚きを体験してもらう「ケチャップ・リポート」という企画を行いました。さかさまで使いやすい、液ダレしにくいという利用者の驚きを動画にし、そのままWebで公開したところ、大きな反響を頂きました。

 ── 04年に動画プロモーションを行ったとは、画期的ですね。

 結果として「東京インタラクティブアワード」のグランプリを頂きましたが、最初から「画期的なことをしよう」と考えていたわけではありません。利用者の生の声が最も伝わるのは何かと考え、動画プロモーションを選びました。

 ── その後も、様々な活動をされたのですか。

 06年には、テレビ番組とのタイアップで、ユーザーから「ケチャップを使ったCM」を募集しました。自ら制作した動画CMをYoutubeに投稿頂くものですが、気になったのは、他社商品との比較をしたCMです。味やボリュームなどに並んで「液ダレ」を比較して下さり、「ハインツケチャップは液ダレしづらい」というメッセージを発して下さいました。

 ── ハインツが言いたかったことを、代弁していたのですね。

 そうです。もちろん、メーカーが「液ダレしづらい」というCMをつくることもできますが、メーカーが自社の商品の良さを伝えても、「あ、そう」となる。でもネットユーザーが同じ立場である消費者に伝えると、きちんと届く。ユーザーの力を実感したと同時に、そんな取組ができるWebは、とても自由な媒体だと感じました。

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ターゲットを絞ると企業のメッセージが「宣伝」から「自分ごと」になる

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

齋藤 麻紀子(サイトウ マキコ)

フリーランスライター・エディター

74年生まれ、福岡県出身、早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。 コンサルティング会社にて企業再建に従事したのち、独立。ビジネス誌や週刊誌等を通じて、新たなビジネストレンドや働き方を発信すると同時に、企業の情報発信支援等も行う。震災後は東北で起こるイノベーションにも注目、取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/06/20 13:57 https://markezine.jp/article/detail/17753

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