ラストクリック偏重問題
このように広告効果測定ツールは、媒体社のレポートの問題点とアクセス解析ツールの問題点をクリアしているので、インターネット広告の効果測定には最適なツールだと当時は考えられていました。
しかしながら、一見優れているように思える広告効果測定ツールも、アクセス解析ツールと同様の問題を抱えていることが指摘されるようになります。それは、短期的な視点でしか広告を評価していない点です。
アクセス解析ツールはセッション単位(30分単位)で「コンバージョン直前の広告のクリック」だけを評価しています。一方で、広告効果測定ツールはクッキーの有効期間という時間単位で「コンバージョン直前の広告のクリック」だけを評価しています。測定時間の単位(長さ)は異なりますが、どちらも「コンバージョン直前の広告のクリック」だけを評価対象にしている点は同じです。

この「コンバージョン直前の広告のクリック」のことをアトリビューション用語で「ラストクリック」と呼びます。ユーザーがコンバージョンに至る経路があるとして、その経路の中でコンバージョンの直前、つまり、経路のなかで最後にクリックした広告ということです。
ちなみに、コンバージョンに至る経路のなかで最初のクリックは「初回クリック」、初回クリックとラストクリックの中間に位置するクリックを「中間クリック」と呼んだりします。「初回クリック」と「ラストクリック」は1回のみですが、「中間クリック」は1回のみとは限らず、複数回の場合があり得ます。そして、このラストクリックだけではなく、それ以前の「初回クリック」や「中間クリック」についても評価しなければならないのではないか、という問題提起が出てきました。
広告主企業がぶち当たった縮小最適化の壁
そのひとつは、縮小最適化の壁にぶち当たるからです。すでにセッション単位でのコンバージョン数測定の問題点として、この縮小最適化については説明をしました。セッションという30分単位よりはクッキーでのラストクリックの方が長いですが、コンバージョンに至る経路を考えると最後にクリックされた広告しか評価対象にしていないのです。
そのため、ラストクリックで計測したコンバージョン数に基づいてCPAを算出し(これをラストクリックCPAと呼んでいます)、CPAの目標値を満たすために日々のオペレーションをおこなっていると、ある程度しかコンバージョン数を伸ばすことができないという課題が出てくるのです。

CPAの見合わない広告はどんどん切り捨てると、その結果、目標値をクリアできる広告は限られてきます。CPAの目標値をクリアする広告で獲得できるコンバージョンをすべて取りきってしまうと、そのあとは限界値に達してしまいコンバージョン数を増やせなくなるのです。
インターネット広告の効率化に対して真剣に取り組んでいる広告主企業ほど、この縮小最適化の壁を感じるようになっていきます。つまり、ラストクリックだけを評価していても限界値に達したあとはコンバージョン数を増やせない、と真剣に取り組んでいる広告主企業は気づき始めたのです。