これからアナリストは、どうなっていくのか
小川 今後、アナリストはどうなっていくんでしょうね。変な話ですけど、MarkeZine編集部にアナリストはいないけど、仕事はまわってるじゃないですか。アナリストって必要ですか?
押久保 MarkeZineでは、どの記事経由で会員を獲得しているのかというのをKPIにしているんですけれど、だんだん傾向が見えてくるのですごく意味があるなと思います。ただ、そこに人を付けてもっと改善するかっていうと、直接お金を生まないものなので、現状の規模ぐらいであれば、僕が片手間でやるぐらいで事足りるという感じですね。それより、企画をつくったり人と会うといった、ビジネスを伸ばす本流の部分の優先順位が高い。
小川 今の話はポイントがふたつあって、ひとつは「アナリストが亜流に見られている」ということ。それはアナリスト自身にも責任がある。レポート出してるだけなら、たぶんいらないんですよ。だから「アナリストって結局何よ」という話なんです。
押久保 清水さんや小川さんみたいなトップアナリストに解析してもらったら、僕なんかが想像もできないようなことが出てくる。そういう経験をしたら「人を付けたほうがいいな」と思うはず。
清水 それはホントにそう思います?
押久保 お、思います…。 なんか言質とられたみたいな(笑)。
清水 でも、やってないわけじゃないですか。やっぱり信じてないんじゃないんですか? たとえば、MarkeZineの競合サイトが、清水と組んで売上2倍になりましたってなったら信じます?
押久保 そうですねー。うん、信じるかもしれない。
小川 アナリストっていうものが今後どうなっていくのかを考えるうえで、そこが本質だと思っていて。アナリストがちゃんと成果にコミットしないと、ずっとこうなると思う。優先順位的には下のほうなんです。アナリストがいなくても、ビジネス回るし。レポート出すだけ、分析だけではコミットしてないんですよ。施策を提案して、それをやって売上が上がったときにはじめて、アナリストが貢献できたと言えるんです。
アナリストは、成果へコミットすることを望んでいない?
小川 あとは、アナリストや分析をやってる人が、本当に結果にコミットしたいのかですよね。
清水 コミットしてないと思うし、躊躇してると思う。ラクだからレポート出しておしまい。頭では「結果が大事」とわかっているけど、実質的には縮こまっている。そこの打破が大事で、今年はそこを崩してマインドを変えないと次はないんじゃないかと思っている。
小川 最初の話につながるんだけどツール以前の話なんですよ。いいツールを入れても、それを使ってレポーティングしているだけじゃないですか。だからこんなにお金かけて入れたのに……という不毛な議論になってしまう。
清水 主体的に目的をもって動いていれば、ツールのせいにはならないはず。現場はなぜコミットしないのかという話ですけど、僕は捨て身の覚悟がないんだと思う。
押久保 捨て身の覚悟、ですか?
清水 怒られたらどうしようとか、クビになったらどうしようとか。でも、冷静に考えると最悪クビになるだけじゃないですか。別に誰も死なないし、借金抱えるわけでもない。
押久保 そこのリスクをとる覚悟があるかということですね。僕自身は意見言わないと価値がないと思うので、新しく入ってきたスタッフにも「価値を出せ」と言います。サイバーエージェントさんもそうなんじゃないですか?
小川 うちは年齢が若いから「当たって砕けろ」でとにかく行く。サービスの責任者の大半が20代で、非常に積極的なので。
押久保 外で人に会うことも大事だと思う。海外もチャンスがあったらすぐ行ったほうがいい。編集部に入って1年目の子も、すぐにアドビのサミットに行かせましたし。
清水 アメリカはもっとオープンで、どんどん外に出てコネクションつくってます。アドビのサミットみたいな大きなイベントも、まさにそのコネクションの場で。アメリカってデカイからめったに会えない。飛行機で5時間かけてソルトレイクまでやって来るからには、3~4日間泊まり込んで、夜はみんなで交流して……っていう場なんですよね。
小川 ひとつ決定的に違うなと思ったのは、日本はセミナーに参加したらすぐ帰るじゃないですか。コミュニケーションしないですよね。アドビのサミットなんか、そこら中でみんな話してる。この間も会場でサンドイッチ食べてたら隣の人から話しかけられて。「どういうサイトやってるの?」「ブラジルで車の販売やってるんだ」「ブラジルの解析どうなの?」みたいに会話が始まるんですよ。
清水 アメリカのカンファレンスは半分以上それが目的だったりしますしね。日本はそういう場がないから遠慮しているだけで。それはイベントの設計だと思う。