エージェンシー・オブ・ザ・イヤーに選出された「コンシューマー」
アメリカの有名な広告業界誌の一つに「Advertising Age」があります。この業界誌では、毎年、前年に一番活躍した広告代理店を“エージェンシー・オブ・ザ・イヤー”として選出、表彰しています。JWT、BBDO、DDB、ワイデン&ケネディなどと言った有名広告代理店が、その活躍具合を競うわけです。
しかし、この年、2006年のエージェンシー・オブ・ザ・イヤーは、多くの人に衝撃を与えました。選ばれたのは、どこの広告代理店でもなく、“コンシューマー(The consumer)”だったのです。これは、いったい何を意味しているのでしょうか?実は、こういった動きが、最近のブランデッド・コンテンツの注目につながっているのです。
この年あたりから、消費者自らが創り手/送り手となるCGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)やUGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)の台頭が大きな話題となっていました。
受賞理由の中でも、「マーケティング界のリーダーたちは、コントロールすることをあきらめ、いまやコンシューマーたちが彼らのブランドをコントロールしていることを受け入れている」と述べられています。
広告を無視することで、消費者はブランドをコントロールする力を得た
では、なぜ、「受け手がブランドをコントロール」するようになったのでしょうか?それは、インターネットの発展、それに続くソーシャル・メディアの勃興、進展するモバイル・シフトによる、消費者やコミュニケーションの変化の影響に他なりません。そして、その影響は大きく分けて、2つの点が考えらます。
ひとつは、消費者が受け取る情報量の爆発的増大(量的側面)で、もうひとつは、ブランド・メッセージと消費者の関わり方の特性(質的側面)です。
量的変化についてよく引き合いに出されるのは、総務省による「情報流通センサス調査」です。例えば平成17年度の調査では、この経緯を“情報爆発”と呼び、量的変化の甚大さについて述べています。この調査によると、1995年に比べると10年後の2005年には、消費者を取り巻く情報量(選択可能情報量)が実に410倍に増加している、というのです。そして、実際に利用されている情報量(消費情報量)も13倍に増加しています。
しかし、410倍と13倍という差を見る時、そこには「無視される情報量の爆発的な増加」という状況が見てとれます。昔から広告は、トイレットタイムなどと言われ歓迎されない部分がありましたが、この“情報爆発”を受けて、さらに積極的に広告を避けようとする「Ad Avoidance(アド・アボイダンス)」という傾向に拍車がかかっています。そうなると、“従来型の広告”は無視されるリスクが、格段に高まっていると考えられるわけです。