消費者がわざわざ見に来るコンテンツとは?
さて、少し理屈っぽい話が続いてしまいました。せっかくなので、ここで、僕が大好きな、そして、ブランデッド・コンテンツの草分けと言える名作を、ご紹介しましょう。

坂をころげ落ちる、数えきれないほどのスーパーボール(小さな弾むカラーのボール)。時にアップになり、時にスローになり、門柱のうしろに隠れる少年や、倒れるゴミ箱、排水口から飛び出るカエル、道路を埋め尽くすスーパーボールなど、一遍の映像詩とも言えるようなビジュアルが、叙情的な歌とともに映し出されます。メッセージは、「他のどこにもない色(Colour like no other)」。ソニーUKの大画面テレビ、ブラビア(BRAVIA)のテレビCMです。

このテレビCM「弾むボール(Bouncy Balls)」は、2006年のカンヌ国際広告祭フィルム部門金賞受賞。僕から見ると、ブランデッド・コンテンツの草分け的な存在です。まず、コンテンツとしての魅力に溢れています。テレビCMとして放映しただけではなく、自社Webサイトでも積極的に公開しています。
そして、撮影手法についても、CGを使っているのか、まさか本当にボールを落としたわけではないよね、などの噂を醸成しました。メイキングも公開し、そこには、何十万個というスーパーボールをサンフランシスコの坂にバズーカ砲のようなもので落とし、機動隊が持つような透明な盾で自らの身を守りながら撮影に臨むクルーが映し出されています。

何度もできる仕掛けではありません。一度きりの撮影チャンス。撮影隊のドキドキまで伝わってくるようです。撮影の成功に、歓声をあげる撮影隊。
噂が噂を呼び、ユーチューブでも、当時の作品としては記録的な視聴回数を達成しています。これだけの魅力のあるコンテンツであれば、人々は、わざわざ「見に来る」のです。当時、そんなことに気付かされた1本でした。
一大勢力となりつつあるブランデッド・コンテンツ的なもの
こんな風に、インターネットの発達、さらにはソーシャル・メディアやモバイル・シフトなどの要素が加わって、ブランデッド・コンテンツ的な作品/施策は、広告界/マーケティング界において、一大勢力とも言える存在になっていきます。
次回は、ブランデッド・コンテンツの特徴を、従来の広告との相違に注目してひも解いていきたいと思います。また、そうすることで、「有効なブランデッド・コンテンツ制作のためのヒント」にまで迫ってみたいとも考えています。こちらも、どうぞご期待ください。