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Owned Media Report~オウンドメディアマーケティング戦略の潮流

「1億2千万人へ直接語りかけたいので“コミュニケーションの代理”という発想が生まれた」森永乳業の広告戦略全貌


3年後に“真”のコミュニケーションデザイナー集団へ

 ── 人材育成の面はどのようにお考えでしょうか。また、育成方法などあるのでしょうか。

 広告部の人材は、コミュニケーションデザイナーになるべきだと考えています。コミュニケーションデザイナーに求められる能力とは、土台となるマーケティング/ブランド論、左脳的な脳力にあたるロジカル思考、右脳的な脳力にあたるクリエイティブ力・創造力、さらには対外交渉を円滑に進めるコミュニケーション能力の4つだと思っています。

 具体的な能力強化策として、3つの軸と6つの方向性という考え方を示しています。3つの軸とは、プロダクト軸/シナリオプランニング軸/コミュニケーション軸です。この3つを軸としてインプットとアウトプットを実行します。それぞれの軸でインプットとアウトプットを行うので、下図のように6つの方向で仕事を進めることになるのですが、それぞれ必要なスキルが異なります。

 例えば、コミュニケーション軸でのインプットにはユーザーインサイトの把握が必要であり、その情報を得るために生活者接点を知り、ユーザー調査をし、KPIを作る作業があります。アウトプットには、メッセージ開発やコミュニケーション開発とその情報を消費者に届けることが必要です。それぞれに外部パートナーが存在するため、円滑な協業体制を構築することも重要です。

 このようにスキル開発を進めている最中ですが、3年後にどうなりたいのかというビジョンを部署全体で共有しております。2015年にはブランド課題を発見し、ユーザー視点とニュートラルな発想で自らシナリオを設計し、外部パートナー企業と力強い協力関係を築いて、お客様と当社とのコミュニケーションを実施運用できるトータルコーディネーター集団になっていることが理想です。

広告部組織としての3年ビジョン

調査データの蓄積で、ノーム値を求めて評価する

 ── ここまで綿密に人材育成に取り組まれているとは驚きです。御社の場合マスメディアやイベントなどの費用対効果の可視化が難しい施策にも多く取り組まれているかと思いますが、それらをどのような基準で評価をされているのでしょうか。

 広告キャンペーンの販売到達目標は、消費者調査の結果や一部フェルミ推定などの考え方も取り入れて設定し、販売部門が作る店舗DB率×回転率から積み上げた目標計画と近づくように計画しています。この推計には、過去のキャンペーンで得た「認知」「購入意向」「購買行動」の数値やその間の転換率などを、ノーム値(基準値)の算出根拠に使っています。ここから目標達成に必要な投下量・露出量を推計するということを試みています。

 キャンペーン評価に関しては、求められることもあり増分利益/投資額のROIでも管理をしておりますが、利益水準には広告以外の要素が多く含まれるため、評価はそれだけではしていません。広告キャンペーン実施後に前述の3つの指標(「認知率」「購入意向率」「実購入率」)を調査し、それを掛け合せた数値を「広告効果指標」として重視しています。広告効果指標軸とROI指標軸の4象限マトリクスにて各キャンペーンをプロットし、評価しております。

 ── 最後にこれからのオウンドメディア含め、これからのデジタル戦略についてお伺いさせてください。

 現在、企業としての統一感を高める取り組みをしています。今まではそれぞれのブランドがそれぞれの方針でサイト運用を行っておりましたが、30以上にも膨らんだこれらのブランドサイトに、共通の思想のもとで全てのサイトにおいて、設置目的の明確化・運用ルールの共通化・PDCAサイクルの導入をしていきたいと考えています。

 サイトごとの目的とKPIを明確にし、アクセス解析をベースとしたPDCAができるよう全サイトにグーグルアナリティクスを導入し、営業本部室と広告部が主体となった勉強会も開催しております。ソーシャルメディアに関しては広報部が主体となりガイドラインを作り、組織としての統一した活用、運用を図っております。

 さらに今後の取り組みとして考えているのが、お客様と生涯にわたって継続的なコミュニケーションを図っていくことです。当社は、赤ちゃんから高齢者まで全ての年齢の方に向けた商品を持つ、とても大きな強みを持った企業だと思います。例えば、当社は赤ちゃん用のドライミルクでは、国内で約3割のシェアを持っております。

 この商品を使っていただいているお母様とは、子育ての悩みを相談できる『エンゼル110番』などの社会貢献活動なども通じて密なつながりができるのですが、お子様が大きくなり商品の利用時期が過ぎると、コミュニケーションが無くなってしまいます。これは弊社にとって非常に大きな損失だと考えています。

 このような反省を踏まえ、お客様と生涯コミュニケーションが図れる環境を作っていきたいと考えておりまして、そのテーマや切り口の検討を現在進めている最中です。

 デジタルは直接お客様との接点を持て、長期的な関係構築を可能にしてくれる便利なメディアです。さらにデータの蓄積・分析ができ、他のメディアに比べ新しい技術を用いて、新しいことにも取り組みやすいです。これらの利点を最大限に活用し、よりデジタル活用を推進していきたいと考えております。

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この記事の著者

松矢 順一(マツヤ ジュンイチ)

株式会社アサツーディ・ケイ クロスコミュニケーション局を経て、伊藤忠商事株式会社情報産業部門でデジタルマーケティングを担当し、株式会社ADKインタラクティブ取締役就任。その後、楽天株式会社メディア事業副事業長を経て株式会社Tube Mogul執行役員就任。著書には共著で『次世代広告コミュニケーション』『トリプルメディアマーケティング』。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/09/30 17:12 https://markezine.jp/article/detail/18352

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