最後の課題はオーディエンスではなく、クリエイティブ
ここで横山氏は、「オーディエンスベースで最適化をしていく流れの中で、既存のメディアという枠のアトリビューションからオーディエンスアトリビューションへという発想が出てきた。そして、オーディエンス最適化の次の波は、一番大きな変数であるクリエイティブだ」と述べた。


それに対して、菅原氏も「最後の課題はオーディエンスではなく、クリエイティブ」と同意した。「あるクリエイティブを出した際、それに反応する消費者もいれば、無反応の消費者もいる。そこで自動最適化プログラムが働くと、本来はそのクリエイティブ自体に消費者が反応しない問題があるのかもしれないのに、そのクリエイティブのまま反応してくれるオーディエンスを探してしまう。
マーケター側からすると、クリエイティブに反応する人に合わせてターゲティングするのは、本意ではないだろう。自分たちが本来メッセージを届けたいオーディエンスの人たちに反応してもらうには、どのようにクリエイティブを変えていけばいいのか。ここの進化が、今後クリエイティブオプティマイズの分野で進んでいくだろう」(菅原氏)
そして、「私もその発想に共感する」と村松氏。「アドテクノロジーはアドバタイジングテクノロジーの略だ。アドバタイジングは、もちろん数字で定量的に追っていくのは大事だが、同時に消費者の需要や購買意欲を起させるクリエイティブの力は確実にある。テクノロジーでダイナミックなクリエイティブをつくったり、もしくはまったく逆のことをやってみたり。クリエイティブな世界の中でのテクノロジーではそうあるべきだ」(村松氏)
オーディエンスデータの価値
そして、最後の問いとして、横山氏から「オーディエンスデータはマーケティングの通貨足り得るか」と提示された。
まず初めに「イエス」と答えたのは、菅原氏。「枠ではなく、人へ。通貨というと売買のイメージが湧くが、そうではない。オーディエンスデータの単位であるセグメントがマーケティングの基本になっていくと思う。どういうセグメントにどのようなコミュニケーションとった結果、どんな反応があったのか。企業はこのようなデータを蓄積して、次のコミュニケーションプランニングに活かしていく、そんな世界が来るだろう」(菅原氏)
一方で、渡辺氏は「ならないと思う」と答えた。「例えば不動産を購買しそうな人のデータは、不動産会社にとっては価値があるが、コスメなどの会社にとっては価値はない。オーディエンスデータそのものの価値は、万人において等価ではないという視点から、成りえないと思う。弊社としては、一人ひとりのオーディエンスが未来に何を欲しがるかを予測できる状態をつくっていきたい」(渡辺氏)