ディスプレイ広告の本当の価値とは?KDDIが提示する2つの事例
「最先端アドテクノロジーから読むマーケティングデータ分析」というテーマで行われたパネルディスカッションには、デジタルインテリジェンス 代表取締役 横山隆治氏をモデレータとして、KDDI コミュニケーション本部宣伝部 担当部長 塚本陽一氏、グーグル Head of DoubleClick Platform 村松直樹氏、マイクロアド 代表取締役 渡辺健太郎氏、ALBERT 代表取締役 山川義介氏、mediba CMO 菅原健一氏が登壇した。
同セッションでは、「ブランディング効果指標の可視化」というテーマで、KDDIの事例が紹介された。「クリックやコンバージョンの結果だけでは、本当のディスプレイ広告の価値は明らかになっていないという前提に立って、2つの事例を紹介したい」と塚本氏は語った。
事例1:CPAだけでは見えてこなかったメディアの価値を可視化
3PASの活用によって、いわゆるCPAなどのパフォーマンス系の指標を測ることができる。そこにオンラインの調査パネルを掛け合わせることで、配信しているオーディエンスのデモグラフィックがどんな人たちなのかを把握し、認知や興味・関心、利用意向、来店意向がどのように変化しているのかを、広告の非接触者と広告に触れた接触者で比較して、この調査では評価を行った。
上図には、リターゲティング広告、純広告、DSP1、DSP2、アドネットワーク1、アドネットワーク2というメニューがプロットされている。そして折れ線グラフでは、左軸のCPAを示している。この折れ線グラフから、リターゲティング広告が最も効果が良いことが読み取れる。次に5,000~6,000円くらいのCPAでDSP1、アドネットワーク1、純広告、DSP2が位置している。このグラフから、CPAベースだけでみると、アドネットワーク2のパフォーマンスが最も悪いことがわかる。
「これだけを見ると、次のキャンペーンのプランニングを考える際には、アドネットワーク2に使っていた予算を別のものにアロケーションするという議論になるだろう。しかし、このままではミスリードにつながる」と塚本氏は指摘し、次のグラフを提示した。
上記の棒グラフは、auのスマートバリューというサービスの利用意向を調査した結果を表している。この調査結果から、CPAのパフォーマンスが一番悪かったアドネットワーク2は、サービスの利用意向の視点では、広告接触者の利用意向が約12%アップし、パフォーマンスが高いことが明らかになった。
「本来はプランニングの中に組み込んでいくべきアドネットワーク2を、CPAだけで評価していたら、次のキャンペーンでは採用しないという結論に至っていただろう。CPAだけでは見えてこなかったメディアの価値が見えてきたことは非常に大きな成果だった」と塚本氏。
事例2:ディスプレイ広告とTVCFの自社サイトへの来訪貢献度/ROIを可視化
2つ目の事例は、自社サイトに対してユーザーが来訪する際の貢献度とROIを見える化している事例である。マス広告の露出とディスプレイ広告のインプレッションについて、直接のサイトへの送客ではなく、表示自体がどう自社サイトへの来訪へ貢献しているのかを重回帰分析を行った結果が下図である。
同調査ではTVCF(Television commercial film)を、キャンペーン訴求をする販促系コミュニケーションと、auの通信キャリアとしてのイメージ訴求をするブランディング系のものと、大きく2つに分けて分析した。
販促系のTVCFは、ウェブにアクセスさせるモチベーションを誘発していることもあり、1visitあたりの貢献度が高い(17%)のは納得できる。そして注目すべきは、ブランディング系のTVCFの1visitあたりのROIが約670円なのに対して、ディスプレイ広告は約260円。そして貢献度を比較すると、それぞれ3%と2%で、それほどの差はない。
「ディスプレイ広告とTVCFを、一つのものさし上で比較することで、今まであまり評価されていなかったディスプレイ広告のブランディングへの効果を可視化できた。今後はディスプレイ広告を単にCPAだけではなく、ブランディング系の指標に対しても使っていきたい」と塚本氏は述べ、事例から導きだした4つの結論を提示した。
・CPA以外にも評価すべき指標がある
・1つの指標だけでディスプレイ広告の価値を判断しない。複数の指標をKPIとして設定し、各メニューの強みと弱みを理解した上で、ゴールを達成するためのポートフォリオを構築すべき
・インプレッションの効果を可視化するためには、その前提としてインビューを測定することも大事。その結果をPDCAマネジメントにフィードバックする
・マルチデバイスでのパフォーマンスの可視化