インターネットでのコンテンツ無料配信、地上波の視聴率への影響は?

久保田:話題となった無料配信の取り組み「日テレいつでもどこでもキャンペーン」ですが、有料コンテンツへの売上へにはどのような影響がありましたか?
船越:予想では有料コンテンツの売上が伸びると思っていたのですが、実際はほとんど影響がありませんでした。また、今回の実験から、無料動画を最後までみる人は、想像以上にはるかに少ないということもわかりました。無料動画を観る人と、有料動画を観る人のマインドは大きく異なっているようです。
久保田:また無料で主力のドラマやバラエティ番組を放映することで、地上波放送の視聴率にはどのような影響がありましたか?広告代理店としては、視聴率が落ちるのでは……という心配もあります。
船越:視聴率の問題は非常に大きいですね。先行している英米では、微減傾向にあったものが、今日では微増傾向になっていると言われています。
我々の中では、インターネットで無料配信を始めることによって、DVDの売上に響くのでは、という議論がありました。しかし、検証した結果、DVDの売上に関して言うと、間違いなくインターネットで配信をしたほうが売上が上がりました。また地上波放送への影響ですが、今のところは検証するほどの影響力がないというのが実情です。なので下がることはないと思っています。
プラットフォーマーを目指す日本テレビ
久保田:モルガンスタンレーのアナリストによると、2020年にはYouTubeの売上は2兆円を超える見込みと言われています。コンテンツホルダーではなく、日本テレビがプラットフォーマーになるためには、どのような戦略をとっていくのでしょうか。
船越:我々はAdVOD(無料広告モデル)のプロジェクトを作って、3年近く議論を重ねてきました。どういう広告の見せ方がいいのか。また地上波のクライアントと同じCMでいいのか。
ビジネススケールでいうと、インターネットと地上波で仮に同じCMをながしたとしても、それはサービスにしかならないでしょう。なのでそこは一旦切り分けてやっていくべきでしょう。ただ、単にYouTubeの広告モデルをまねるのではなく、どういう売り方がいいのかを引き続き試行錯誤していかなくてはいけないと思っています。
久保田:日本テレビとしては、どの程度の規模まで、VOD事業を拡大したいと考えているのでしょうか。
船越:現状の日本テレビの地上波の売上は3,000億円程度です。少なくとも100億円程度の売り上げがなければ、インパクトのある事業とは言えません。なので短期的な売上目標として、来年度中には100億円を達成したいですね。中期的な目標としては、2018年度までに1,500億円を達成したいと考えています。それを達成するためには、AdVODでのビジネスモデルの確立が不可欠でしょう。
6年後の2020年には、世の中は劇的に変わり、同時にテレビ局のビジネスモデルも一変しているはずです。インターネットでのコンテンツの無料配信はもはや当たり前でしょうし、地上波の売上を超えるVOD事業のビジネスモデルが確立されていなければおかしいと思います。
今回の無料配信キャンペーンなどを行うために、様々な権利処理団体と話し、承諾を得てました。彼らには「地上波モデルはいずれ限界がくる。テレビは必ず、無料で広告をつけて、いつでもどこでも見られるようにしたい。そのために協力してほしい」と伝えています。いずれ到来するこのような時代に備えて、これからも様々な新しい取り組みを始めていきます。