「AISCEAS」(アイシーズ)とは?
オフラインでのマーケティングにおいては、「AIDMA」(アイドマ)という非常に古典的な消費者購買行動モデルがあります。消費者は商品の認知から購買までの間に、Attention=認知、Interest=興味、Demand=欲求、Memory=記憶、Action=購買という5つのステップを踏む、というモデルで、古くからあるロジックとはいえ今日でも一般的なマーケティングアプローチに数多く適用されています。
これに対して「AISCEAS」(アイシーズ)とは、企業やメディアがお仕着せに流し込む情報の氾濫を背景に、それに辟易した消費者が時間と空間の制約に縛られないオンライン社会において、自らの価値観の多様性を開放し、欲求の赴くままに方向を自ら選択して自由な行動を取り始めたことで見えてきた、インターネット上での消費者の購買行動ステップです。
AISCEAS(アイシーズ)の(A)はAttention=認知、(I)はInterest=関心、(S)はSearch=検索、(C)はCompare=比較、(E)はExamination=検討、(A)はAction=行動、(S)はShare=共有 を意味しています。
「AISCEAS」(アイシーズ)の典型的な購買行動ステップ
Attention=認知
消費者はまずテレビや雑誌、オフラインでのコミュニティ活動などによる受動的な情報の取得を通じて新たな情報を認知します(A)。情報に飽食化した現代の消費者にとって、認知とは「自らの情報取得フレームから排除しなくすること」と捉えてもよいものです。おそらくあなたも、何度も訪問するサイトのバナー広告の配置を記憶し、そのエリアを意識の外において回遊してしまうような経験はあることでしょう。これは特にインターネットのヘビーユーザーによく見られる行動です。
Interest=関心
次に、機能・便益に関する情報を得ることで、その商品・サービスに興味を持ちます(I)。ここで消費者は初めて自ら情報を取得しようとする段階に入ります。能動的な情報活動ツールであるインターネットの特性が活かしやすくなるのは、ここからということになります。ただし後述しますが、ここまでの段階でもインターネットを通じて消費者に購買行動へのきっかけを持たせようとするアプローチは、現在も研究と実践が進んでいる領域です。
Search=検索
そして検索行動です(S)。インターネットユーザーにとっての情報収集行動の入り口は「検索」がデファクトとなっています。興味を持った情報、商品カテゴリーに関するキーワードをYahoo!、Google、gooなどの検索サイトの検索ボックスに入力し、その検索結果のハイパーリンクを順に辿っていきます。
Compare=比較
検索結果の先に現れる公式サイト、販売サイトから興味のある情報を選択して比較したり、価格コムや比較コムなどの比較サイトを訪問して商品毎のスペックやイメージの比較を行います(C)。これまで、リアル社会であれば店舗間の移動や詳細情報の探索が物理的に高い障壁となっていたため、店舗の提供情報程度による商品毎の比較以上の深堀りはかなり困難でした。しかし、時間と距離に縛られないインターネット空間に、比較するに十分な店舗数と商材数が出揃ってきたことにより、消費者は自分の納得のいくまで比較行動をとることができるようになったのです。
Examination=検討
比較行動の後や、時には同時に取る行動が口コミを参考情報とした検討行動です(E)。Web2.0環境においてより存在感の高まっているのが、この検討段階における「口コミ情報」のパワーです。売り手やマスメディアの発する情報には信頼を置けなくなってきた「かしこい」消費者が、主に自分たちと同じ目線や興味を持った他の消費者のナマの声を元に商品選択をしたり、購買の後押しを受けたりする傾向が強くなってきているのです。
Action=行動
検索・比較・検討のサイクルを1度から数度回転させた後に、ようやく購買行動に移ります(A)。購買行動の段階においては、オンラインでの購買であることによるメリットが提示されていることが重要です。検索・比較・検討までの段階で消費者が必要とするものは有形の物体ではなく無形の情報であるため、インターネットの特性が生きてくる段階にあたりますが、いざ購買となったときには本来ならば商品をすぐに手に入れたいにも関わらず物理的な制約でそれができないわけですから、消費者に「待つ」という障壁を超えさせるだけのメリット、例えばオンライン特価や送料無料やポイント付与といったものを提供することが、オンラインでの物品販売においては非常に重要となります。
Share=共有
購買した商品が手元に届き実際に利用してみた後に、その使用感や使って初めてわかる特徴などをブログや商品掲示板などを通じてインターネットで他人と共有する行動が一部の消費者によって行われます(S)。この共有行動によって生成される消費者の声がそのまま他の消費者の検討(E)段階の参考情報となる口コミとなります。昨今の口コミブームに伴いこのような消費者のナマの声の重要性はますます高まる一方ですが、片や自社商品やマーケティング対象商品に対する好意的な口コミを消費者から意図的に引き出すことは、そう容易なことではありません。現在は購入ポイントの付与やコミュニティ形成などの手法で、口コミを引き出すアプローチが図られています。
このように、「Web2.0」という環境変化と「AISCEAS」(アイシーズ)というユーザー行動の変化が起こっている昨今、この変化に対応するWebマーケティングの姿が求められています。その新しいWebマーケティングの姿が本稿の主題となる「Webマーケティング2.0」です【図2】。