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DMPとオーディエンスデータ

プライベートDMPの使い方と「最新DMPマップ」で理解する選択のポイント【最終回】

新興DMPの種別と、DMP導入の選択ポイント

 早いもので、連載開始から約5か月が経過している。日進月歩の進化を続けるマーケティングテクノロジーは、この連載期間中にも、注目すべき新しい2種類のDMPを生みだした。

 下記の図は、既存の2種類のDMPに加え、Saas領域インフラ領域の2種類のDMPをマッピングしたものになる。このマップは各種DMPの領域を俯瞰的に把握するために、便宜的に各種DMPを1枚の図にまとめたもので、1企業が導入する場合をあらわしたマップではないことをご了承頂きたい。

DMP種別マップ
※画像をクリックすると、拡大表示します。

 これまで比較対照的に、データセラーDMPとプライベートDMPの解説を行ってきたが、それぞれ右上の①と、中央の②がそれに相当している。また、上図に具体的な製品をマッピングしたものが下図である。

オーバーレイ
※画像をクリックすると、拡大表示します。

 では、図に示した領域について、それぞれの特長と選択ポイントを見ていこう。

①データセラーDMP

 アウトバウンドデータの統合活用を特長としたDMP。ユーザとはおもに広告で接点を持ち、Web上の行動ログを、セグメンテーション、クリエイティブ、メッセージなどの最適化に活用する。

 一点、「データセラー」という名称について補足をしたい。この名称は、DMP製品が出そろう前に、この領域の売りのひとつであるオーディエンスデータを媒介するcookieデータセリングを想定していたものである。現状その機能がある製品は少数派であり、名称と実態がずれる、という事態になっている。名称については、より大きな意味合いで企業にとっての“アウトバウンドマーケティングデータの統合最適化”という意味合いの名称に変わっていくと思われるが、業界の結論を待ちたい。

選択ポイント

目的:
・ユーザのインターネット上の行動ログ分析をしたい
・ユーザのグルーピング抽出インフラが既にあり、自社外の接点最適化の連携を行いたい

メリット:
比較的導入にかかる工数が少ない

②プライベートDMP

 インバウンドデータの統合活用を特長としたDMP。図表は企業が導入する場合の1セットをイメージしている。プライベートDMPからのアウトプットは、広告/Web/CRMの3軸になり、データ統合した行動分析をもとに、ユーザグループ別の個別対応を行っていく。

選択ポイント

目的:カスタマージャーニーに代表される、時系列シナリオ施策の構築を行いたい

メリット:CRMやコンテンツパーソナライズなど、施策の実行&チューニングのための管理画面が用意されている

備考:データが複数部署で分散管理されている場合、部署間連携が必要になる

③DMP最適化インフラ

 この領域の製品自体はDMPではなく、プライベートDMPのストレージ~データマートの領域に相当するインフラを安価かつフレキシブルにクラウド提供する。標準的な機能として、Hadoopに代表される並列分散処理エンジンを搭載しており、テラバイト級のデータに対しても、データの大きさを感じさせないスムーズな応答が可能になっている。

 このインフラの特長は、様々なコネクタが用意されている点にある。例えば外部データを実験的につなげたい場合や、既存の基幹DBや大量のPOSデータなど多岐にわたるデータソースと柔軟に接続することが可能だ。

 自社開発を前提としている場合、このような基盤を使うことで大幅に工数を抑えることができる。しかし、そもそも機密が高い行動情報が含まれる場合など、レギュレーション上、クラウド環境であることについて検討が必要なることや、大量データをフロー型で運用する場合などは、使い方に工夫が必要になることに注意したい。

選択ポイント

目的:
外部データ連携などにより、局所的なピーク発生が予想される場合
データ運用インフラの、クラウド移行計画のテストケースとして

メリット:クラウドサービスの利便性、圧倒的な応答速度

備考:自前でのDMP開発を前提としており、社内にシステムエンジニアリングのリソースが必要となる

BIダッシュボード

 現時点で②、③の製品群には、部分的な集計以外の、“可視化”の機能が搭載されていない。そのため、外部に持つ形でBIダッシュボード(図の左下部分)を構築する。例えば、「広告媒体別の顧客ランク傾向」 や「特定商品の購買予測リストによるメール配信と結果集計」 といった、DMPによって垣根を越えたデータを、集計し可視化するといった事が可能になる。

 DMPの最も重要なワークは、効果測定によるマスタールールのチューニング=運用フェーズにある。②、③の製品の運用について、BIダッシュボードは、導入必須と言っていいだろう。

④Saas領域のDMP

 現時点の国内製品において、注目を集める2製品がある。それはGoogle社とYahoo!社からリリース予定のDMPだ。(2014年5月現在)大枠としてこれらは広告出稿型を基本としているが、それぞれに特性が異なる。

既存の「①データセラーDMP」との違いは、①が企業にとってのアウトバウンドデータであるインターネット上の行動ログを、DSPタグによって収集するのに対し、Saas領域のDMPは、Saasサービスの各種インフラをオーディエンス統合のために利用する点にある。

Google 社

 GoogleのDMPの場合、Google Analyticsの上位サービスである、「Google Analytics Premium」(以降GAP)と、広告出稿サービスの「DoubleClick Digital Marketing」(以降DDM)の連携を前提としている。

 これによって、Webログを中心とした行動ログ分析によるユーザセグメントリストを、Googleの全オンライン広告出稿インフラと連携することが可能になる。また、配信レポートが連携され、ビュースルー計測や、アトリビューション分析を統合管理できるようになるのは、非常に大きなメリットとして挙げられるだろう。

 さらに、ユニバーサルアナリティクスの「User ID機能」によって、クロスデバイス計測が可能になり、チャネルをまたいだ接触におけるID統合もサポートされる。(2014年4月の正式版リリースによって、GAPと同等のサービスレベル契約がされるようになった)

 機能として、自社の各種行動ログデータの蓄積を必要とする場合、Googleが提供する④のインフラ領域のサービス「Google BigQuery」を利用することが可能だが、現時点ではGAP(およびオンライン広告出稿インフラ)と内部的な連携はされておらず、外部接続する形になることに留意したい。

 BigQueryとGAPが連携するデータの種類と形式については、以下のページを参照してほしい。

Google Saasサービスの行動ログの提供について

 現時点において、Gmail、カレンダーといった、Google IDの行動情報の活用の可否について正式なアナウンスはされていない。しかし、利用規約に、“内容は分析している”とある通り、リリースの時期や、DMPのメニュー提供があるのか、といった基本的なこともまだ不明であるものの、何らかの活用の模索段階にあることは間違いないだろう。

Yahoo!社

 Yahoo!のDMPの場合、「Yahoo! プライベートDMP」と「プレミアムDSP」がそれにあたる。

 現状まだ、サービスの詳細は未発表であるが、属性情報の他に、検索履歴などのYahoo! IDの行動ログを広告出稿メニューとして提供することを公表している。国内最大級のポータルサイトであるYahoo!各種サービスの行動ログを、ユーザインサイトとして扱えるのは大きな魅力と言えるだろう。

 技術的な話をすれば、Yahoo!はBrightTag社の技術を導入しており、恐らくこのタグマネージャーで得られるペアリング情報を、Yahoo!へのログインでsyncする仕組みを取っているものと思われる。

 この技術の特長はリアルタイム処理クロスデバイスアプリ、POS、CRMなどの他チャネルのデータとの同期とうたわれており、あらゆるデータを紐づけ、ID統合をするというものだ。

 自社データの集約、蓄積については、「Yahoo!プライベートDMP」として提供される。仮に、上記のようなデータを統合できるインフラが提供されるとして、事業会社側のデータがどのように連携されるのか、また、オンライン広告以外の施策のアウトプットについて明言がされておらず、現状、自社データ活用の範囲が不明だ。6月のサービスイン以降、事例ベースでサービスのアウトラインを整えていくものと予想される。

GoogleとYahoo!の比較

 両社ともに自社インフラから得られるオーディエンスデータを提供しており、事業会社の保有データの受け皿も用意している形となる。下記は、両社の比較表になる。

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まとめ

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この記事の著者

福田 晃仁(フクダ アキヒト)

株式会社 学研ホールディングス CMO
株式会社 学研エデュケーショナル 取締役 / 株式会社 学研プラス 取締役 /
株式会社 学研教育みらい 取締役 / 株式会社 地球の歩き方 取締役

総合代理店 / ITベンダー / 事業会社のキャリアを持ち、一貫してマーケティングとTechの両面によ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/05/30 11:00 https://markezine.jp/article/detail/20070

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