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DMPとオーディエンスデータ

プライベートDMPの使い方と「最新DMPマップ」で理解する選択のポイント【最終回】

プライベートDMP導入の準備期にやること

 DMP導入の際に必須となるシナリオの構築には手順がある。導入準備期に行うべきタスクをまとめたワークフローを紹介したい。

 「シナリオ」を構成しているのは、ユーザグループと課題に対する、個別対策の総体である。そしてその根拠は、企業提供価値に基づいた「ビジネスゴール」と、ユーザの姿を把握するための「行動分析」の掛け合わせ、によってしか得ることができない。言い換えれば、ユーザに対して、“企業の思い”を整理し、どのように彼らに接するかを、一覧化したものが「シナリオ」である。

 ある意味、本来のマーケターの仕事であり、その力量が問われる部分である。我々は、通常数ヶ月の時間をかけ、この部分を構築するための支援を行っている。

 その後、「シナリオの運用」が始まるわけだが、ここで初めて効率化の名のもとにツールの選定が行われる。あるいは自動処理のためのコストが見合わなければ、手動運用するという判断もあるだろう。

プライベートDMP導入 準備期のワークフロー
プライベートDMP導入 準備期のワークフロー

プライベートDMP内部の自動処理フローとマスタールール

 下記の図は、プライベートDMPの内部でどのようにシナリオが自動処理されるのか、そのフローをあらわしたものである。

プライベートDMPにおけるシナリオの自動処理フロー
プライベートDMPにおけるシナリオの自動処理フロー

 名寄せ処理されたプライベートDMPのマスターDB(データベース)があり、ユーザ単位でマスターIDが振られた各種行動フラグが立っている状態をイメージをしてもらいたい。このマスターDBに対し、上記で作ったユーザグルーピングをもとにして作られた、「判別ロジック」が適用される。たとえば、ある時期における“特定商品の購入”という条件によって、マスターDBから「特定商品の購入者リスト」が抽出されるイメージだ。

 その後、「特定商品の購入者リスト」に合わせた「実行タスク」が走る。前述の例でいえば“クロスセルを狙ったレコメンドメール”が配信される。最後に、実行タスクのフィードバックが、マスターDBまたは再度判別ロジックに回され、自動的な運用がされていくという流れだ。

「判別ロジック」と「実行タスク」の中身

 下表は、判別ロジックと実行タスクの中身をカテゴライズした表になる。この2つの定義ファイルは、企業の“ユーザとの向き合い方一覧”に相当し、PDCAによる洗練とマーケティングのノウハウが凝縮された機密の高いファイルとなる。ゆえに実例による解説が非常に難しいことをご了承いただきたい。

「判別ロジック」と「実行タスク」の中身
「判別ロジック」と「実行タスク」の中身

 まず基本的な判別ロジックとして、企業データ3軸の行動ログ系ロジックがある。多くはリアルタイムに活用され、例えば“特定の広告を経由し、あるページを閲覧したユーザ”がログから判別され、実行タスクとして“コンテンツパーソナライズ”を行う、といった形で使われる。

 次に、企業ごとのノウハウが色濃く反映されるものとして、購買分析系ロジックがある。このロジックは大枠として「育成モデル(ひと)」、「商品特性別スケジューリング(モノ)」、「顧客ランク判定(LTV)」に分類され、購買分析視点で得られるユーザグループに対し個別対応を行うというものである。

 中でも重要なものは「育成モデル」だろう。これは、ユーザ育成モデルを構築し、ステージごとの判別軸をもって“あるユーザ”がどのようなステータスにあるのか判定を行い、訪問ユーザを分類していく方法論になる。この場合、分類別の対応は多岐に渡り、サイト内外におけるタッチポイントが、ユーザを次のステージに上げるために最適な一手になるような実行タスクを設計することになる。

 他の代表的なロジックとして、統計解析を用いた判別ロジックや、外部データの行動ログを用いるケースなどが挙げられる。

 この「判別ロジック」と「実行タスク」が複合的にユーザへ働きかけ、究極的にはマーケティングのOne to Oneが実現されるというわけだ。我々は、2つを合わせて「定義ファイル」または、「マスタールール」と呼んでいる。

「導入失敗」をしないために

 以上が、プライベートDMPの導入準備~運用までの、使い方概要になる。自社保有データの統合分析と、施策実行の基盤であるプライベートDMPは、事業会社にとって、独自のマーケティングノウハウを蓄積するインフラとなることができるだろう。

 とはいえ、DBが散在し、事業部別にデータ管理されている環境では、分断された行動ログしか持つことができず、そもそも統合されたユーザ分析が、どのくらいの費用対効果をもたらすのか見当すらつかない、というマーケターも多いと思われる。

 そのようなケースにお勧めしているのは、まずはコストをかけずに“小さく検証を重ねてみる”ことだ。

「小さな検証」のススメ

 例えば、自社が保有する20基あるDBのうち、2~3基程度あたりを付け、ローカル環境にて手作業によってデータ統合の上、分析&施策実行する、という方法論だ。小さくはじめて金脈を探し負荷の少ない施策を選び検証してみる。当たれば横展開を検討することで、どのくらいのビジネスインパクトにつながるか予測をすることができるだろう。

 このようなDMP導入検討のための検証を行う場合、BI製品を使うのが良い。昨今の製品では、簡易的な名寄せ処理をプログラミングできるものもあり、数十GB程度であれば、インタラクティブな分析も可能だ。

 プライベートDMPは、比較的に導入負荷が高く、準備期間も必要となる。これまでのマーケティング活動において、どのくらい自社の考え方とユーザの動きを整理できているか、という点が、導入期間の長さに掛かってくると言える。

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新興DMPの種別と、DMP導入の選択ポイント

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この記事の著者

福田 晃仁(フクダ アキヒト)

株式会社 学研ホールディングス CMO
株式会社 学研エデュケーショナル 取締役 / 株式会社 学研プラス 取締役 /
株式会社 学研教育みらい 取締役 / 株式会社 地球の歩き方 取締役

総合代理店 / ITベンダー / 事業会社のキャリアを持ち、一貫してマーケティングとTechの両面によ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/05/30 11:00 https://markezine.jp/article/detail/20070

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