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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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踊り場企業だからわかる「オウンドメディア」の本当の価値

オウンドメディアは一体何の役に立つのか?
「サイボウズ式」に学ぶ成熟市場におけるPR手法


KPIは「PV」、でもページ分割はしない

 サイボウズ式ではPVを1つのKPIとしていて、1000PVで「ヒット」、1万PVで「殿堂入り」と編集部内で定義しています。2年間で生まれた殿堂入り記事は16本。中でも、一番多く読まれたのは

少子化が止まらない理由は「オッサン」にある?-「男性学」の視点から「働き方」を考える

という記事です。武蔵大学で「男性学」というあまり聞き慣れない分野を教える田中先生と社長の青野が、少子化について対談した内容です。内容のおもしろさもさることながら、タイトルのキャッチーさが功を奏しソーシャルで拡散、結果として7万PVを超える大ヒットとなりました。この「ワークスタイル」に関するテーマの記事はサイボウズ式の中でも一番人気のあるカテゴリとなっています。読者の方々が新しい働き方に関心が高いことがよくわかります。

 ちなみに、サイボウズ式では記事の読みやすさにこだわって、

・広告やその他ブログパーツをやたらと貼ったデザインにしない
・PVを稼ぐためのページ分割をしない

といった工夫をしています。

 この記事は5000文字程度あり、かつ写真もあるので、一般的なネットメディアでは5ページぐらいに分割される感じでしょうか。だとすると、ネットメディアとの比較で言うと35万PV相当のレスポンスだったのでしょう。「PV重視なのにページ分割しないの? もったいない」とメディアの方は驚かれるかもしれませんが、PVはあくまで結果指標であり、それを増やすことは目的ではないのです。その理由はこの連載の中でお話していきます。

お手軽だけど効果の高い記事

 その他にも、

 「サイボウズ社員が総力を挙げてお届け☆水道橋近郊おすすめランチマップ

なんていう記事も人気です。社員に会社周辺のおすすめランチをアンケートしてまとめたものですが、とにかくSEO効果で毎月1、2位を争うPV数を叩き出します。ぜひ「水道橋 ランチ」で検索してみてください。けっこう上位に表示されると思います。余談ですが、このページがきっかけでイベントに参加していただいたり、製品導入を検討していただく、なんていうことも起きています。

 こうしたまじめな記事だけでなく、おもしろ記事にもチャレンジしてみました。

……すみません、嘘をつきました。チャレンジなんていうハードルの高さは微塵もなく、サイボウズの社風はどちらかというとおもしろ記事に命をかける、ちょっと変わったB2B企業です。そこで、サイボウズ式編集部にいる、おもしろ個人ブログを運営していた個性あふれるメンバーを抜擢。とにかく自由に書いてもらったところ、これがおもしろいように好感を呼び大ヒットにつながりました。たとえばこの、

 「社内恋愛を円滑にすすめる秘訣

という記事も約3万PVの殿堂入り記事となりました。すごく印象的だったのは、Twitter検索で記事の反応を確認していたところ、「以前はサイボウズのことがあまり好きになれなかったが、この記事を読んで印象が変わった」というつぶやきがあったことです。こんなくだらない記事が人の心を動かし、企業ブランド認知をも変えてしまう……そんなことが本当にあるんですね。

オウンドメディアは「売上」に貢献できるのか?

 いや、でもそんな程度の成果なら、ちょっとおもしろい記事を書けば達成できるのでは? 本業への貢献はどうなのよ? と思われる方もいることでしょう。

 私も当時は同じようなスタンスでした。手探りでの取り組みでしたので、売上への貢献はまだまだ先、まずは2~3年をかけてじっくり取り組んで、企業ブランディングの分野で成果を出せればいい、そう考えていたのです。

 しかしあるとき、サイボウズのクラウドサービス「cybozu.com」の契約ユーザーへのアンケートで「どこでこのサービスを知ったか?」という認知経路をたずねたところ、なんと5.7%の方が「サイボウズ式」で知ったとお答えになったのです。いきなり大きな数字が出てきて大変驚きました。

 その後、宝島社さんからムック本を出版したり、東洋経済オンラインの佐々木編集長と意気投合して「ブランドコンテンツ」という新しい施策にチャレンジしたり、有名ブロガーさんとのコラボを始めてみたりと、色々なトライをした結果、現在では月間約20万PVのサイトにまで成長しました。

今回のまとめ

流行っているから、という理由ではなく、自社の中でなぜオウンドメディアをやるのか?という目的をはっきりさせることがとても大事。その際に自社事業のライフサイクルがどのフェーズにあるかで考えると分かりやすくなる。特に商品選択の決め手が機能ではなく価値で決まる成熟市場のフェーズにあるならば、オウンドメディアを使って、価値を主体としたストーリーで伝えることは効果を生みやすい。

 次回はサイボウズ式誕生のきっかけや、編集部の体制などについてお話ししたいと思います。

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この記事の著者

大槻 幸夫(オオツキ ユキオ)

サイボウズ株式会社 ビジネスマーケティング本部
企業ブランドマネージャー 兼 サイボウズ式編集長 兼 サイボウズLiveプロダクトマネージャー

大学卒業後、知り合い2人とともに株式会社レスキューナウ・ドット・ネットを創業。プロダクト企画と営業を主に担当。2005年にサイボウズ株式会社に転職。以来、マーケティングに従事。2010年、ソーシャルコミュニケーション部長就任。
2012年5月、オウンドメディア「サイボウズ式」のスタ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/06/12 10:20 https://markezine.jp/article/detail/20195

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