テレビ局はGoogle、Apple、Amazonにどう立ち向かっていくべきか
RKB毎日放送は、九州初の民間放送局として1951年に開局したラジオ・テレビ放送局。今日では、地域密着型データ放送情報掲示板「よんDay」、番組で紹介した商品などを取り扱うEC「今日感百貨店」などの事業にも取り組んでいる。
「今、メディアの環境が激しく変わっている。ネットだけを使う若い世代、ネットとテレビを両方使う私たちのような世代、それからテレビだけを見る世代。しかし最近、東京で働き始めた若い女性と話す機会があり、どうやらもはやそうではないことに気付いた」と久保敦氏は語る。

「一人暮らしの彼女たちの自宅にはテレビ自体がなかったり、スマートフォンファーストになっている状況が伺える。テレビを家に持たない若い世代は、10年もすれば企業に勤めて広告を出稿する職に就いているかもしれない。これは私たちテレビ局にとってはやっかいな状況だ。
加えて、GoogleやApple、Amazonなどのネット業界のメガプレイヤーたちは、新しい垂直統合モデルを構築しようと動いている。コンテンツ、ハード、それから物を買うサービスまで、メガプレイヤーたちだけで完結するモデルを作ろうとしており、これもテレビ局にとっては危機的な状況だ。このような状況において、今、私たちテレビには何が必要とされているのか?そして足りないものは何だろうか」(久保氏)
テレビの本当の実力は「視聴率+WEBへの影響度」
ここで久保氏は、エム・データという会社を取り上げた。同社には株主として電通・博報堂・民放キー5局などが出資しており、テレビの放送実績を「TVメタデータ」として記録している。(関連記事はこちら)
「TVメタデータ」とは、従来からあるテレビ放送の電子番組表「EPGデータ」に加えて、番組やCMを専門スタッフが実際に視聴し、「いつ」「どの局のどんな番組で」「誰が」「どんな話題・企業・商品・ショップなどについて」「どのくらいの時間」「どのようにコメント」したかを記録しているもの。
TVメタデータを活用することで、テレビ番組がどれだけインターネットに影響を与えているかがわかるようになり、テレビの新たな視聴スタイルの創造と視聴促進につながるのではと、業界各社が注目しているのだ。
「本当のテレビの実力は、視聴率+WEBへの影響度ではないかと私は考えている。だが、残念なことにこれまではTwitterで話題になったとしても、テキストデータでは、私たち放送局や代理店にとっては広告価値にはならなかった。その価値を可視化するのがエム・データの取り組みだ」(久保氏)

「そして、同様の取り組みとして、民放47局と電通、博報堂、ADKといったメンバーで、共通のスマートフォンアプリ『SyncCast』を作っている。テレビを見る時に、一緒にこのアプリをみる、そんな習慣を根付かせていきたいと思っている。
私たちローカル局は、デジタル放送が導入されてから、キー局と大きく差が開いてきた。ローカル局にとって残されている数少ないマーケットの一つはネット。そしてもう一つはダイレクトマーケティングだと思っている。これからも私たちローカル放送局は、ネットに対して最大の影響を与える存在になっていきたい」(久保氏)