データ上の顧客の動きから的確にニーズを読み取る
そして、ZOZOTOWNのCRM戦略についても触れられた。一般的なCRMは、収益性の高い優良顧客を長期的に囲い込む文脈で語られることが多い。しかし、ZOZOTOWNが目指すCRMはそれとは異なるという。
「我々が目指したのはCRM2.0です。顧客起点で顧客満足度を重視し、一部のお客さまのみにフォーカスするのではなくて、全てのお客さまと友だちのような関係になること(CFM/カスタマーフレンドシップマネジメント)と定義して取り組んでいます。
従来のマーケティングは、企業側が広告したい商品やサービスを、企業側のタイミングで発信しており、それを押しつけのように感じたお客さまのCV、CVRは当然低くなります。それに対して、我々が取り組んでいるのはイベント・ベースド・マーケティング。データ上で購買行動の変化が見られたお客さまを1時間ごとに検出して、その動きのニーズに合った最適なオファーをします。すると、お客さまは企業からのメッセージを広告ではなく、親切なお知らせが来たと感じます。親切なフォローだなと感じてもらえると、CVは10~30%と非常に高くなるのです」
具体的には、1時間あたり140種類以上のパーソナライズドメールを自動的に出しわけているという。ダイレクトマーケティングに取り組む以前の3年前は、ここの売上はだいたい25億円程度だったが、それが去年の売上では8倍の200億にまで拡大し、ダイレクトマーケティング経由の売り上げは非常に大きな位置を占めるようになっている。
「例えば住所変更が合った時に、それは何か新生活がはじまったのだろうと推測し、新しい生活にこのような商品はどうですか?とメッセージを送ったり。またZOZOTOWNで販売しているTシャツは1万円以上したりすることもあり、それを購入する方はすごく洋服が好きで、大事にされる方でしょう。そこで『こんな風にしていただくと、長く着れますよ』といったお手入れ方法をメールで送ったりします。売りに特化しない内容ですが、結果的にこのような内容のメールから売上につながるのです」
デジタルで省力化できた労力を価値づくりへ
そして最後に、武藤氏が「デジタルマーケティングは、戦国時代の打ち手になるのでしょうか。いま一番重要だと思っていることは何ですか」という問いに対し、資生堂の徳丸健太郎氏は、「デジタル技術によって、1to1マーケティングが現実のものとなってきています。これはマーケターにとっても、企業にとっても、うまく使いこなさなくては損でしょう」と語る。
「ただ弊社にとっての最終的なゴールは、化粧品を買っていただくことです。デジタルマーケティングで全てが解決するわけではないし、もともとの商品の価値をどう伝えていくかがやはり大事です。デジタルをうまく使うことで、誰にそれが受け入れられているのか、そうではないのかがわかるようになります。
また今日では、WEBだけではなく、リアルの店舗においても商品の比較が容易になっています。だからこそ、その企業じゃないとダメというか、企業ならではの独自価値を創出していく必要がさらに強まるでしょう。デジタルを活用して省力化できた労力を、価値づくりにまわしていく。それを同じサイクルで回し、双方をシナジーさせていくことがこれからのポイントでしょう」(徳丸氏)
