「場」を作るのも広告のお仕事
TwitterやFacebook、YouTubeやニコニコ動画等のパーソナルに活用できるメディアの発展によって、ユーザー自身が「場」をもつことができるようになりました。そのため現在では、広告施策を考える際にはコンテンツを作るだけではなく、人々が集まる「場」も設計する必要があります。最近の傾向としては、提供されるデジタルキャンペーンが自分も参加でき、つながることができる場かどうかがユーザーに判断されます。
その場に参加することで得られるものがデジタルならではの、自分にとって価値がある体験にまで昇華されているか。ソーシャルでつながる友だちに自慢したくなるような体験であること。シェアすることが単純に広告活動に乗っかっているのではなく、発信することで自分が能動的でポジティブな印象や、イケてるという評価をもらえるかどうか。ユーザーはそのような観点で判断をします。参加者にどういった感情をもたせ、どういった行動を起こさせたいかを考える必要があります。
このような側面があるため、デジタルの世界では、自分の発信に対してレスポンスをくれるTwitterアカウントや、ニコニコ動画で書き込みコメントを取り上げて、リアルタイムに番組内で紹介してくれる生放送タレントの方が、有名タレント起用の広告よりもユーザーのアクションが活発で盛り上がりやすいです。低予算で荒い作りであってもユーザーにとってリアルな驚きや発見がある、そして、誰かに伝えたくなるエモーションが刺激される映像へのアクセス数が増えているのです。
ユーザーによる、ユーザーのための、ユーザーの「場」
デジタルが日常のツールとなった今、提供されている場の使い方をユーザー自身が創出することで、ムーブメントが生まれる時代になっています。つまり、場を決めるのは提供側の意図ではなく、ユーザー側の行動の結果だと感じさせることが重要です。そのためには、ユーザーの「リアル」なエモーションにストレートにつながる価値が提供されているかどうか。その上で、ユーザー自身が行動を起こすトリガーがつながっていることで、ユーザーがユーザーを連れてくる自走するコンテンツとしてのユーザーが集まる場になります。
とはいえ、ユーザーにすべてを自由に委ねても、なかなか成功することはできません。ユーザーが求めるものに寄り添った形をとりながらも、企業が望むゴールへ持ち込むことができるルールやフレームを上手に設定して、ユーザーをナビゲートしてあげることが必要になっています。
そのためには、「どういったユーザーに最終的に何をしてほしいか」という明確な企業側のターゲッティングが必要です。また、今まで以上にプロフェッショナルクリエイターの存在が重要になると考えています。ここで言うクリエイターに求められる能力とは、オーディエンスの心理や行動の視点から「企業側の意図をどのようなユーザーの求める体験価値に変換するか」を考え、コンテンツ力をさらに高めるストーリーを描けることです。
そして、もう一つのキーワードは「ドキドキを提供する」ということ。手に汗握るような体験、目が離せなくなるリアルなライブ感。デジタル・ソーシャル・ネットワークという日常の中で、いかにユーザーが求める魅力的な非日常な体験をもたらせられるか。ユーザーが求めているのは、いい意味で期待を裏切る「ユーザーに対する企業の本気への期待」なのかもしれません。
次のページからは、バスキュールが担当した事例を通じて、ユーザーが主役になれる場づくりについてご紹介します。