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「あのキャンペーン」の担当者に直撃!

年齢や性別ではなく価値観で繋がる、マーケティング発想からあえて離れたキリンビールのプロジェクト

購入者を分析して分かった、SVBと一番搾りのユーザーの違い

編集部:丹羽さんはサイトを通して、商品の魅力を伝える立場にあると思います。ターゲットを作らない分、アピールするのは難しいかと思いますが。

丹羽氏:SVBの価値をお客様に伝えるうえで、WEBや現在の仕組みを使って、“個”のお客様にどのように伝えるかを主眼に取り組みをしています。吉野が言うように、これまでは全員に均一なメッセージを流したり、ワンフレーズなど限られた情報の伝え方しかできませんでした。そうではなく、ユーザーそれぞれに、ビールの魅力を伝えることが、デジタルなら可能だと考えています。

 だから、ターゲットを決めないことは大事なことだと思います。それぞれのお客様が知りたい情報を適切に伝えて、各自で判断してもらう。そのような流れを考えています。

 また今回、醸造家が顔を出して、自分のコメントをそのままダイレクトにお客様に伝えています。どんな想いで造ったのかがわかる。そして、重要なのは、結果としてどのようなお客様が商品を買ってくれているのかを分析し、次のアクションにつなげることだと思います。

 具体的に言うと、SVBは特に30代の方を中心に手に取ってもらえています。SVBを売る前に、一番搾り日本代表応援スペシャルセットという商品をDRINXで販売しました。これは、一部店舗でしか販売していないものを他エリアの人も購入できるように行った施策です。SVBと一番搾りでは30代のユーザーが構成比で10%くらい違うことがわかりました。

4,000セットが3日で完売、DRINXの会員も1万8,000人超

編集部:今回のプロジェクトで具体的な数値目標はありますか?

丹羽氏:DRINXは2014年4月にオープンしましたが、2年間はテスト期間と位置付けています。通販のノウハウを蓄積する期間。そのため、売り上げ目標には軸を置かず、顧客獲得を目標にしています。年内に2万人の会員獲得を目指したいと考えていましたが、現時点(10月現在)で1万8,000人に達しています。

 要因は、SVBの順調な新規ユーザー獲得です。SVBは製造数にも限りがあるため、一人当たりの購入できる数に制限を付けました。ですが、3~4営業日で完売しています。第2弾からは数を増やしましたが、完売までにかかる日数に延びはありません。

吉野氏:予想以上の反響です。今回販売しているのは完成品ではなくプロトタイプ。良い商品を作るために、途中段階でユーザーの声を聞きたいと思っていたんです。だったら商品として売って、意見を聞いてみようと考えた。この背景があるため、売れ残ったらどうしようという不安がありました。

丹羽氏:しかし、ふたを開ければ第一弾の496は4,000セットが無事に完売したうえに、購入者のうち約250名の方がすぐにメールで感想をくれました。これはかなりの割合だと思います。

吉野氏:頂いたメールは全部、醸造家にフィードバックしています。どうやって意見を反映させようか、今まさに頭を悩ませている所です。

ユーザーはモノではなくコトを買っている

編集部:購入者から声を集めるための工夫は何かされましたか?

丹羽氏:購入者にはビールを仕込んでいる様子などの進捗をメールで伝えて、ワクワクしてもらえるような工夫をしています。例えば、商品購入の手続きをされた方には商品が届く前に、製造の様子や醸造家のコメントを送っています。その後に、商品が手に届く。そして、同じタイミングで醸造家のコメントとして感想を聞かせてください、というアプローチをしました。

 通常、こちらから送ったメールの開封率は10%程度です。しかし、製造過程の様子を伝えたメールの開封率は約5割でした。購入者の商品が届くまでの期待の高さが伺えました。

吉野氏:ビールに同梱したリーフレットも工夫しています。例えば、「496」というビールの名前。少し変わっているので、よく由来を聞かれます。でも、私たちは「それは言えません」と返しています。でも、購入者が手に取るリーフレットにはブランド完成秘話やブランド名決定の背景が書かれています。

 買った人だけが商品の詳しい背景を知ることができるんです。普通のマーケティングだったら、商品名などを積極的に伝えます。しかし、今回は感想を教えてくれる、一緒にビールを作っていく相手である購入者にのみ共有することにしました。

 そして、DRINXを活用されるのは、食生活を豊かにしたいという意思を持ったお客様達。だから、モノじゃなくて、開発に参加してもらうというコトを買われているように感じます。SVBはワクワクするビールの未来をつくるプロジェクトです、と伝えていますが、そこに参加するということに反応してくれた。セグメントでターゲットを切るよりも、価値観に共感してくれる人たちがいるはずという発想で進めていますが、今のところ間違ってはいないのだなと感じます。

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SVBは永遠のβ版

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/11/28 11:00 https://markezine.jp/article/detail/21323

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