生活者が買いたいタイミングに合わせたマーケティングを
ここで、「モーメント(moment)」の重要性について長谷川氏は言及。すなわち、生活者が購買するタイミングに合わせて、企業はマーケティング施策を行うべきということだ。
「例えば、海外旅行中のお客様に向けて、梅田店の東急ハンズでキャンペーンしてますよと言っても、響かないですよね。企業側のタイミングで行うキャンペーンではなく、買いたい気持ちになっているお客様のタイミング合わせてマーケティングをしていくことが重要です。ここは弊社としても、さらに強化していきます」(長谷川氏)

では今後、オムニチャネル化が進むにつれて、接客はどのように変わっていくのだろうか。
「かつて私はEC事業部で、どう写真をとってコメントをつければECでモノが売れるのか、といったことに取り組んでいました。ところが、『カエルパルコ』ではそんなことはいっさい気にせず、テナントのスタッフの方が自撮りの写真をアップして、『入荷しました』の一言と商品名と値段だけをアップする。たったそれだけの情報ですが、注文は入ります。これは、これまでのECとは異なる売り方でしょう。詳細な商品情報などといったことを飛び越えて、スタッフの方が発信する情報でお客様には十分に伝わっているんですね。
これはやってみて気付いたことです。接客とは、細かな商品情報がたくさんあることが良いわけではなく、お客様に伝わるかどうかが大事なのです。セルフィー写真1枚でも、お客様にはきちんと伝わって、消費がそこで生まれていく。スタッフの方が持つ感覚の限りない可能性をすごく感じましたね」(林氏)
これを受けて西村氏は「もともとスタッフの方が持っていた力を、テクノロジーの力で最大限に引き上げたのですね」と語り、講演を締めくくった。