思わずお金を使ってしまうのは、なぜ?
では、本題に入りましょう。今回のテーマは、「人はなぜ、モノを買うのでしょう?」ということです。なぜ、お金を払うのでしょうか? ちょっと禅問答のような問いですが、一緒に考えてみましょう。
ある27歳のOLさんのケースをイメージして考えてみましょう。彼女は、会社の帰り道で、週に何回か、自宅の最寄り駅のそばにあるコンビニエンス・ストアに立ち寄って、夜食として大好きなデザートを買って帰ることがあります。
ところが、今日は、会社で3か月間関わっているプロジェクトの中間発表会がありました。彼女は、ここ1週間、毎晩終電で帰り、プロジェクトの一員として、無事資料の作成を成し遂げました。プロジェクト・リーダーからも「この調子で今後も頑張ってくれ」と励まされ、誇りと達成感を感じながら、気分良く家路に着いていました。そんなにアルコールが強くない彼女でしたが、今日に限っては、大好きなデザートより、新商品の缶チューハイに目が止まり、買って帰ることにしました。
彼女は、なぜ缶チューハイを買ったのでしょうか? 普段は、飲み会やデートといった機会にお店でカクテルを飲むことはあっても、ほとんど自宅にアルコールを買って帰り、それを飲むということはしません。でも、今日は缶チューハイにお金を払いました。これはなぜかを考えてみましょう。
今日の彼女にとって、缶チューハイは、どんなものだったのでしょうか? きっと、今日の自分の気分を満たしてくれる“価値あるもの”だったからではないでしょうか? プロジェクトの中間発表を無事終えた今日の彼女は、なんか自分を褒めてあげたい、ちょっとした高揚感を味わってみたい気分だったと推測されます。
なにか自分へのごほうびをあげて、明日という現実の時間を迎える前に、もう少しだけ今日の気持ちよい気分に浸っていたかったのではないでしょうか? そこで、いつも食べ慣れている大好きなデザートではなく、ちょっと非日常の気分を高揚させる役割を、非日常のアルコールに求め、お金を支払ったと考えられます。
