UX確認にはプロトタイプの活用を!
サービスやアプリの企画がある程度できた段階で大切なのは、プロトタイプを作りステークホルダー、プロジェクトメンバー間で体験を共有することです。これは完成をプレビューするためのものではありません。サービスリリース後にユーザーが触って手に入れるものをできるだけ精密にシミュレーションし、サービス設計にフィードバックする意図で行います。
実装前には、ワイヤーフレーム(大まかなコンテンツやレイアウトをまとめた構成図)を作ることが多いでしょう。ワイヤーフレームは仕様を検討するには有用です。しかし、プロジェクト全体でUXを形作っていくような作業をする場合には、やはり実際に触れて理解できるプロトタイプが一番です。
「JoinTown」はもちろん、バスキュールではアプリ・サービス設計をする際にプロトタイプを評価します。エンドユーザーに届ける体験として目指すゴールを、ステークホルダーと実装プログラマーが実際に自分たちの手で触れ・確認しながら進めていきます。
災害時の避難誘導アプリ
「JoinTown」の場合は、高齢者や独居者の多い地域で災害時の避難活動を支援するツールの側面について、プロトタイプを中心に検討しました。その結果採用されたのが「JoinTown」から住民にIDカードを配布しておき、避難所で提示することでチェックインする方式のアプリです。

さらに、危険地域に取り残されている可能性のある人を災害発生時のテレビの視聴ログを元に地図上にプロットし、効果的な誘導・救助ができるよう災害時の避難状況と課題を可視化しています。

アプリのゴールは避難誘導と人命救助です。災害発生時にアプリユーザーがまず何を判断したいのか、次にアクションするために何が必要になるのか、アプリ制作時に議論しました。その際にプロトタイプを用意することで、メンバーの思考をUXに一点集中させることができました。例えば、雨が降って画面が汚れる・軍手をしたままなど使うなど悪状況下での操作性を想定した上で、表示方式や表示内容の取捨選択、UIの大きさやレイアウトなど細部まで意見を出し合いました。
ユーザーにどのようなエモーションを発生させたいか
冒頭にUI/UXディレクターは演出家・脚本家的アプローチを取ると説明しました。大切なのはユーザーがどのような状況で対象サービス・アプリを利用し、どのようなエモーションを発生させたいのかを注意深く設計することです。提供したいのが安心なのか楽しさなのか、もしくはスリルなのか、その判断にあわせてUI、デザインを乗せていきます。
ユーザーが利用するシチュエーション、そして利用者間の関係性をどのようなストーリーに仕立てあげるかが重要です。UI/UXディレクターに大切なことは「自分たちが作りたいものを作る」ではなく、「ユーザーの利用シーンを徹底的にシミュレーションする」ことかもしれません。実際に仕事で携わっている方は、ぜひ演出家・脚本家視点でサービス・アプリ設計を楽しんでほしいです。精細に計算した上でリリースしたサービス・アプリをユーザーが利用してくれるシーンを見ること、これはとてもやりがいのある仕事です。
【JoinTown UI/UX担当者プロフィール】
大塚晃 (おおつかあきら):UI/UX ディレクター。スマホをはじめ、テレビやゲーム機などいろいろなデバイスでアプリプランニングをしています。ユーザーの「遊び」を意識して作られたシンプルなアプリが好き。頭よりも自分が欲しいかどうか?ハートに聞いてアプリコンセプトを企画します。
