2015年はヒト/モノ/データの関係が大きく転換する年
スパイスボックスのテクノロジー研究開発機関 WHITEは、国内外の最先端事例を基に、2015年に具現化が進み、プロダクトやサービスのユーザー体験に大きな影響を与えると予測されるキーテクノロジーをまとめた。
同社は、2015年についてヒト/モノ/データの関係が大きく転換する年になると予測。「ヒトは機械によって能力を拡張し、モノは人工知能の発達によって人間との対話できるようになっていくでしょう。また、ネットやコンピュータ空間にあるデータは物体化することで、ヒトが触れ、感じられるものに。これらの領域に関するテクノロジーが組み合わされ、融合することで新しいユーザー体験が生まれていく、それがWHITEの考える2015年です。」と見解を示し、次の6つのテクノロジーがカギになると発表している。
1.「身体の拡張」による人と機械の一体(Augmented Human)
下腿義足のドイツ人アスリート、マークス・レーム選手が、走り幅跳び8m24cmの記録で、健常者も出場するドイツ陸上競技選手権で優勝したことが象徴するように、機械によってヒトの補助をするだけでなく、機械によって人間の能力を極限まで高める「Augmented Human(身体の拡張)」のコンセプトが、2015年は急速に広まると予測される。
バネやテコの機構を利用して小さな力で大きな力を発揮するパッシブな外骨格、あるいは、モーター駆動による義手や義足によって身体能力を高めるデバイス。ドローンとVR(Virtual Reality)、脳波などを組み合わせて、遠くにあるものをあたかもその場にあるような感覚で操作するテレイグジスタンス(遠隔臨場感)などの活用事例が数多く登場することが予測される。
2.「人工知能」との創造的協働(AI/Deep Learning)
ECサイトで商品を探していると、バナー広告などによって、自分と同じような興味関心を持った人々のアクセス履歴をベースとした「(歓迎されない)リコメンド」に日々遭遇する。人間の言葉を解釈し、適切な回答を導き出す、IBM Watsonのような人工知能がAPIを通じて簡単に利用できる環境が整いつつある。
2015年は、人間を介さずに人間の知覚メカニズムを模倣する「ディープラーニング」のようなブレイクスルーによって、機械が私たち人間の抱くような「意味」を理解するようになり、機械ならではの作業スピードと正確さが組み合わさることで、人の能力をはるかに超えた品質と量を提供するサービスやプロダクトが数多く登場すると予測される。
3.「触れる技術」の普及による新体験(Physicalization/Haptics)
昨年登場し、大流行した「Oculus Rift」のような安価なVRヘッドマウントディスプレイ(HMD)によって、ディスプレイはもう四角形ではなくていいことが広く認知され、多くの人たちがあたかもその場に居る・あるような体験をした。
2015年は、ネットに取り込まれたデータやコンピュータ空間上の法則が、物理的なものを利用して現実世界に呈示される「フィジカライゼーション(物体化)」や、様々な触覚フィードバックを呈示する「ハプティクス」デバイスが数多く登場し、普及することでVRでの体験がより豊かなものになると考えられる。また、「触れられる」ことによって、人にとってより自然な操作体験が可能になると予測される。
4.「サービスをフィジカライズ」するIoT(Internet of Things as a Service)
「IoT」という言葉が流行し始めたとき、こぞってモノをインターネットにつなぐ「だけ」のものが作られ、その多くは失敗した。なぜなら、つながった先に有益なものが何もなかったからだ。2015 年のIoTは、これまでインターネットの世界だけで完結していたサービスが、現実世界とつながるためにデバイスとしてフィジカライズする流れが加速すると予測される。
例えばGoogleが買収して話題となった「Nest」は、端的に表現すると家屋の温度を調節する機器だ。しかし、「人工知能付きサーモスタット」として捉えるのではなく、「快適な居住環境を提供するサービスのためのタッチポイント」として考えることで、温度調節だけではなく、住宅における様々なサービスを接続するハブとして、また住宅をとりまく周辺環境を改善するためのスマートデバイスとしての価値を引き出すことが可能となる。
5.「限られたネットワーク」の台頭(Ephemeral Network)
FacebookやTwitterのようなソーシャルネットワークサービスの登場によって、親しい友人だけでなく、同じような興味関心を持つ離れた場所に住む人ともコミュニケーションできるようになった。その一方でオープンな環境に違和感やストレスを感じる「ソーシャル疲れ」のような現象も広く知られている。自分の名前を明かさずに、限られた人や場所・時間だけで成立するようなコミュニケーションが可能な、いわば「限られた(はかない)ネットワーク」を求める人々が増えることが予測される。
6.「遺伝子ハック」がより身近なものに(Bio Hack@Home)
国の研究機関や病院、大学の研究室の中だけの世界だった遺伝子研究や、研究成果を応用した製品やサービスが身近になりつつある。2015年はこれをさらに推し進めた「遺伝子ハック」が手に届くようになると考えられる。
すでに、遺伝子研究のハードルのひとつであった、従来は数百万円もするDNA増幅器をオープンソース化した「Ninja PCR」といった製品も登場している。これらによって小学生や中学生から遺伝子研究をスタートさせることが可能になれば、医学だけでなく様々な分野でDNAを使った製品やサービス、あるいはアートの実現を考える「ちょっと変わった人」たちが増えてくるだろう。
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