「調整さん」を復活させたリクルート
最後に登場したのが、リクルートホールディングスの山本一誠氏だ。山本氏はR&D部門に所属し、「調整さん」の顧客開発をしている。また、過去最大567%の改善率を発揮した日本国内初のOptimizelyエバンジェリストとして有名だ。

山本氏は、社内スタートアップサービスの一例を取りあげ、どのようにA/Bテストをしているか、Nick Benavides氏や野口竜司氏とは異なる目線で紹介した。山本氏が顧客開発をしている「調整さん」は、飲み会に参加する人の日程調整・出欠管理をスムーズに管理できるツールだ。2008年にリリースされ、飲み会などの幹事には非常に重宝されている。
しかし、リリース後はビジネスモデルが無く長い間放置されていた。そこで山本氏は「調整さん」のデータを抽出分析したところ、マーケットニーズがあると感じ独自チームを編成。顧客開発を行い放置されていたコンテンツの復活を行った。
そこで新機能チームはAPIを作り機能を実装。その際、フロント側ではOptimizelyを使い数%のユーザーに機能を公開して新機能にニーズがあるのかどうかを調査。KPIが伸びていれば改善チームへバトンを渡し、新機能チームから来た検証済み新機能のKPIを伸ばす為にフロントに改善チームが実装するというPDCAサイクトを回した。
月曜日にテストを開始し金曜日にテストを終え、結果を分析し翌月曜日に実装する。このモデルで1回につき10パターン、多い週は100パターンのテストを回したという。改善サイクルとともに、様々なグロースハックも同時並行で実施した。結果的にチーム結成時には58万だった月間アクティブユーザーが、現在110万月間アクティブユーザーと飛躍的にユーザー数を伸ばすことに成功した。山本氏の話を総括すると、A/Bテストを成功させる重要ポイントなのは以下の2つだ。
スピードを重視
1つ目のポイントはスピードを重視することだ。A/Bテストというとデザイン要素のテストを思い浮かべる人も多いと思うが、「調整さん」のA/Bテストではデザインのクオリティよりもスピードを重視していた。デザインの制作時間を決め、その中で作成できる範囲のデザインをリリースし、仮説が検証できた後にデザインのクオリティを上げていく事でコンバージョン率を高くしたという。
仮説検証を素早く行うオペレーション
2つ目のポイントは仮説検証を素早く回すオペレーションを構築することだ。「仮説検証を素早く行なう運用フローを構築することが大切」と山本氏も主張していた。
三者三様の切り口でのプレゼンテーションは、A/Bテストのニーズの高まりを感じさせる内容となった。今後の動向にも注目だ。