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事例で探る!デジタル時代の「共創マーケティング」

「インサイト」はどうやって見つけるの? 生活者を理解する共創コミュニティの役割を考える

生活者理解を促進する、共創コミュニティ4つの特徴

 商品やサービスのファンを集め、継続的に運営している共創コミュニティにおける生活者理解は、他のリサーチ手法と比較して、次の4つの特徴があります。

他リサーチ手法と共創コミュニティの違い
共創コミュニティの特徴

特殊な意見を集めやすい

 通常のリサーチでは一般的な人(あるサービスに特別な思い入れの無い、フラットな人物)を集めます。一方、共創コミュニティでは商品やサービスのファンなど尖った参加者を集めることが一般的です。20%の消費者が売上の80%に貢献していると言われています。この20%の消費者の意見をマーケティングに活かすことができます。ファンは商品やサービスに対する強い思い入れを持っています。そのため、1つの質問に対して2,000文字を超える回答を寄せたり、企業側も予期していなかったような特殊な意見を提供してくれることがあります。

 また、このようなファンの声は企業側の担当者の熱意を高める効果もあります。クレームや苦情の問い合わせなどのネガティブな意見に比べ、「この商品を買って良かった」「この商品を使って楽しいです」といったポジティブな意見は社内で共有されにくいものです。共創コミュニティでファンの声を集めることで、インナーブランディングにも役立てることができます。

建設的な意見を集めやすい

 共創コミュニティでは継続的にコミュニケーションを取っていくため、参加者との間に人間関係が構築されます。このため、調査を行う際も単純な否定意見ではなく、「どういうシーンやケースならいいと思う」といった建設的な意見が集まりやすい傾向にあります。

 例えば、キリンビールは共創コミュニティ「カンパイ会議」を使い、低アルコールビールの「オフホワイト」に関する調査を行いました。低アルコールビールはその名の通り、アルコール飲料に不可欠の要素であるアルコール度数が低いため、一般的な調査では否定的な意見が出やすい傾向があります。しかし、「カンパイ会議」を使った調査では、参加者が協力的に参加してくれるため、建設的な意見が集まりました。

カンパイ会議で集まった意見
カンパイ会議で集まった商品に対する意見

 加えて、共創コミュニティの参加者をグループインタビューやオフ会に招けば、オンラインと同様にコミュニティでのニックネームで対話をすることができます。そのためリアルイベントの初対面同士でも、身近な気持ちで意見を出してもらうことが可能です。

生活者の立場をリアルに理解できる

 共創コミュニティは生活者の立場をリアルに理解することができます。継続的に生活者の意見を聞くことができるため、意識変容のあった時点からさかのぼって、「要因は何か」「どのような刺激を与えれば変容が起こるのか」などを検証できるのです。また、コミュニティの運営・維持には費用が必要ですが、コミュニティの中で何度質問をしても追加費用は発生しません。このため、企業側は気軽に何でも質問ができ、生活者側はスマートフォンなどから好きな時に回答できる。これは、共創コミュニティの大きな特徴です。

 BtoBの事例ですが、富士通はクライアント企業とのイベントと共創コミュニティ「Innovation Farm」を通して、ニーズの見える化を行っています。イベントなどを通して最先端のICTをクライアントに体験してもらい、それを使ったアイデアを共創コミュニティで話し合うことでプロトタイプを作っています。

イベントにおけるディスカッション風景
イベントにおけるディスカッション風景

 クライアントに突然「ニーズは何ですか?」と聞いても、なかなか答えは出てきません。そうではなく、ドローンなどの最先端の技術を見せて、「これを使って、どんなことができたら面白そうですか?」と質問することで、様々なアイデアが浮かんでくるのです。そして、プロトタイプを作る中で具体的に何を実現したいのかが明確になり、クライアントニーズを把握することができるのです。

エバンジェリスト育成とクチコミによる推奨効果

 コミュニティ参加者に質問してその結果を基にマーケティングが行われていることがわかると、コミュニティ参加者はエバンジェリストになります。前回の連載でも紹介した伊藤ハムの「ハム係長の商品開発部」では、商品を共に作るプロセスで得た参加者からの意見をウェブに商品のクチコミとして掲載しています。商品を共に作った熱量とともに書かれたクチコミは、通常のクチコミ以上の推奨効果があります。

ウインナーの共創に参加したメンバーのクチコミ
ウインナーの共創に参加したメンバーのクチコミ

 加えて、共創コミュニティにコンテンツを用意して企業側が感謝を伝えることで、参加者に「企業活動に貢献した」と実感してもらうことができます。

生活者の立場に立ったマーケティングを

 企業のマーケティング活動の中で重要性は認識されながらも、これまで深く理解できなかった生活者のことが、共創コミュニティを使うことでわかるようになります。生活者にとっても、自分の意見を受け取ってマーケティングを進めてくれる企業は親近感を抱きやすいでしょう。そして、関係が深まることで「自分のブランド」として認識してくれるようになります。共創コミュニティで生活者を知ることで、生活者の立場でマーケティングを行うことができるのです。

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この記事の著者

宮本 昌尚(ミヤモトマサナオ)

 株式会社トライバルメディアハウス 共創マーケティング部 部長。アクセンチュアのITコンサルタントを経て現職。ソーシャルメディアの黎明期から、ソーシャルメディアマーケティングの戦略策定や、オウンドメディアのソーシャル化支援、リスク対策、国内外のFacebookページ構築運用支援のプロジェクトマネージャーを勤める。その後、共創マーケティング部を立ち上げ、コミュニティの戦略策定から商品の企画提案を担当。過去に担当したクライアントはキリンビール、KFC、P&am...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/03/12 16:30 https://markezine.jp/article/detail/21994

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