日本の動画広告市場が盛り上がらない理由

有園:いわゆる静止画のバナーだけでなくて、動画も売れてきていると。
徳久:そうですね。
有園:その背景にあるのは、さっきおっしゃった、コンバージョン目的ではなくて、ブランディングをしたい広告主が増えてきているからということでしょうか。
徳久:そうですね。もっと好意度を上げるとか、そういう目的に近いですね。
有園:この辺の話は、すごく大事だなと思っています。スマートフォン利用者が増え、電車に乗っているとき、女子高生が動画を見ているシーンを目にするのは普通になりました。先日、喫茶店でコーヒーを飲んでいたら、隣に座っている50歳くらいの男性のサラリーマンがスマホでずーっと動画を見ているんです。「なにを見ているのかな」ってちょっとのぞいてみたら、ゴルフレッスンの動画を見ていました。徳久さんのようにこの業界をよく知っている方ではなく、インターネットやウェブサービスに対して特に高い知見を持たない一般的な方でも、喫茶店でごく自然に動画を見る時代になったんだなと。
徳久:なりましたよね。
有園:それがゴルフレッスンというのが、またなんか。
徳久:分かりやすい。
有園:そう!分かりやすいですよね。ただ、スマホの普及なんかの影響もあって、だれもが動画コンテンツを楽しむようになってきている一方で、日本の動画広告市場って、まだまだ発展途上じゃないですか。これはこれまでインターネット広告が主にコンバージョン獲得のための手段として使われてきて、ブランディングのツールとして考えられてこなかったことに原因があるのではないかと思うんです。
徳久:そうですね。それは大きいと思います。ただ、広告主がブランドを築くにあたって、インターネット広告を重視し始めていることは間違いありません。ブランドセーフティを強く意識しているナショナルクライアントは信頼できる媒体で、主に動画などのリッチなコンテンツを通じてユーザーエクスペリエンスを阻害することなくユーザーとのコミュニケーションを取りたいと考えています。また、まとまった量のインストリーム広告が流せる媒体はYouTubeがダントツですが、ひとつのペイドメディアやフォーマットだけではブランディングは難しいので、他のメディアやオウンドも含めて、様々な動画フォーマットを活用してくことになるでしょう。
ブランディング目的でのネット広告活用の可能性
有園:ブランディングでのお金が、媒体社の方に流れていくことになるので、そこがより儲かる要素なのかなとは思っています。
徳久:そうですね。
有園:いわゆる純広だけでは解決できなかったものなのかは僕もよく分からないのですが、今回のAGやUFRといった領域で、ブランディングのお金が入ってきて動画広告がとれ、ブランドセーフティでブランドが喜ぶ、媒体社が儲かるというサイクルができると、別に、テレビとかを敵対視しているつもりは全くないですが、テレビとかに使われているブランディングのお金が、ネット広告市場に流れてくるのではないかなと思います。
徳久:そうですね。
有園:そういう風に、徳久さんたちも、きっと思ってやっているんだろうなと。
徳久:もちろん、意識してやっていますよ。
有園:そうすると、テレビ局とかも、2015年から見逃し視聴で放送番組コンテンツをインターネットに無料で流すみたいない話が出ていますし、ゆくゆく、これはテレビのブランディングなのかネットのブランディングなのかは関係なく、広告主側にとっても、テレビ局とか新聞社とかにとっても、紙はもう未来永劫続くか分からない状況になっているので、こういう市場をきちんと育てていくことが大事なのかなと思っています。
徳久:そのとおりです。
有園:結局、プライベートエクスチェンジがなぜ重要なのかというと、ブランディングに役立つネット広告というものを作っていくからだってことですよね。
徳久:広告主の視点で言うと、そういうことですよね。どっちかというと、ネット広告は安いものを上手く買えたほうがいいという風潮で成長してきました。「ROIが良ければ最高だぜ」みたいな感じできたけれど、当然、それだけではないことは、かなり明らかになってきています。AGやUFRというのは買い方の話で、広告の手法の話ではありません。だけど、広告主の求めるブランドセーフティと媒体社のプレミアム性というのを担保しながら効率的なブランディングを実現するのは買い付けの仕方、課金の仕方、価格形態というのが当然、重要になってきます。それに応えられるのがプライベートエクスチェンジなんだと思います。