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DAC 徳久昭彦氏に聞く/プライベートエクスチェンジの重要性、そして媒体社の収益向上に必要なこと

媒体価値及び収益向上のために、媒体社がすべきこと

有園:媒体社視点であらためて伺いますが、そういうプログラマティックなプレミアムな枠の取り引きができるようになってきたとき、そのシステムを媒体社が導入するだけでは、なかなか儲からないということでしょうか。

徳久:そうですね。

有園:徳久さんは媒体社を啓発していく立場におられますが、媒体社は何をしていけばよいのでしょうか。

徳久:やはり自分の媒体にきているオーディエンスを、もっと正確にとらえることが大事だなって思います。

有園:となると、日経IDのような、媒体へやってくるオーディエンスを把握するCRM的なものとかを用意するということでしょうか。

徳久:日経グループさんは、自前のDMPみたいなものを持っていて、以前からそういった取り組みをしているので自社のオーディエンスをよく理解していますね。有料会員というところまで踏み込まれているからこそ、そこまでできるんだと思います。媒体社がなんとなくの思い込みで自社の媒体価値をとらえるのは意味がないと思います。当然、またコンテンツによってもオーディエンスが違うし、視聴態度も違う。そこをきちんと把握した上で、その価値を正確にとらえていくことが、まず第一歩かなと思います。

有園:媒体社によって、実は、広告枠の在庫管理がきちんとできていないという話があったりして。そこからではないかという話もあるかと思います。

徳久:そうですね。マス媒体によくありがちなんですが、スポーツ面はこの営業さん、企業面はこの営業さんと担当が分かれているじゃないですか。売り方は営業さんに任せていて、その上司も詳細はよく分からないということがあったりして。 2008年にマイクロソフトが買収した広告収益を管理する「ラプト」というソリューションは、媒体営業担当の売り方を管理して収益向上を図るものでした。

有園:売り方を管理するというのは、営業Aが安く売ってしまった。その後に、営業Bは10パーセント高く売れる案件があるとする。それを管理して、10パーセント高いなら、後から入ってきた10パーセント高い方を優先しようよってことでしょうか。

徳久:そうです。「ラプト」は、そこまではやっていなかったと思いますが、営業マンの成績をグロスだけでは評価しないということです。グロスだけで評価すると、単価がどんどん下がっていきます。それは、ネットのページビュー信仰みたいなのが、まだ影響しているんだと思います。「ページビューが無尽蔵に増えます」という前提でやっていくと、単価が下がっても、グロスが増えていくからOKじゃんみたいな話になってしまう。

 でも、そうはいかない時代がついにやってきたので、売り方が結構大事になってきます。営業さんが実際、どんな単価で売っているのかを管理することも大事ですが、それをアドサーバ側でホリスティックに管理することで、予約を受け付けるべきか否かというところからコントロールしていくのです。

有園:それは、御社のアドサーバであればできるのでしょうか。

徳久:はい、現在数社の媒体でトライアルの段階です。

有園:いわゆるアドサーバがあって、SSPがあってという形になるのでしょうか。

徳久:基本的にアドサーバ側でどの媒体にいくらで渡すかをコントロールします。また固定単価で販売するプライベートエクスチェンジにも対応する必要があるので、オープンオークションしかできないSSPではダメですね。

有園:そうすると、いわゆるプレミアムと言われる枠に対して、AGでくるのか、UFRでくるのか。

徳久:加えて純広告も含めて、予約の仕方、在庫の渡し方、それぞれきちんと管理できるといいよねということなんで。単純に、SSPに渡しましょうというのが最近ちょっと流行っていますが、それだけでは単価の下落を招いてしまいます。やはり、プレミアムな媒体価値を作っていくためには、全体的(ホリスティック)な視点で考えていかなければならないんで、そこは僕らが強く意識して取り組んでいるところです。

媒体社にとってのオーディエンスデータ活用の可能性

有園:いまおっしゃった、アドサーバでホリスティックに管理するということと、媒体社側がDMPを導入して、あるいはCRM機能をもって、データドリブンをきちんと進めていくことは、どっちが大事なんでしょうか。

徳久:両方ですね。例えば、criteoさんのパフォーマンスや収益は高いですが、媒体社にとってはオーディエンスごとのCPCやCPMがいくらなのか、全然わからないわけです。だから媒体社はそのオーディエンスの価値を把握して、根拠なく安く売り渡さないということが大事なことの一つですね。

有園:安く売り渡さないために、予約管理もするし。

徳久:常にオーディエンスの価値を把握することが大切です。そうすることで、適正な値付けをすることが可能になります。広告主にとって1万円の価値があるオーディエンスを100円とかで渡してしまうのは、おかしいのではないかなと僕は思いますけどね。適正な価格で販売しないと、良いコンテンツが作れなくなります。コンテンツの価値が低下すると、広告主は良いオーディエンスを見つけられなくなりますよね。

有園:アドサーバを導入してきちんと売り方を管理することと、DMPを導入してオーディエンスの価値をきちんと管理できるようになることが大切なんですね。

徳久:媒体社が誰に、いくらで、いつ売るべきなのかを、オーディエンスデータを活用して判断すべきです。予約の取り方に関しても、渡し方が正しいのか、シミュレーションに近いですが、そのシミュレーションを正しくやらないと、勘だけで商売することになってしまう。コンテンツの価値に見合う適正な値付けを行っていくことが大事です。これまでのように枠だけで価値を守るのは無理があると思っています。枠にベースの価値はあるけれど、オーディエンスの価値を加えて、個々のインプレッション価格を決められるようになっていくでしょう。ですので、僕らが媒体社にDMPを導入するときは、深い分析に基づいたオーディエンスレポートをお出ししているんですよ。単なる配信レポートとは全然違います。

有園:それは媒体社に出しているんですか。

徳久:広告主と媒体社の両方に出しています。そういうことをやっていかないと、「それなら純広でいいじゃん」ということになってしまう。これまでの媒体社レポートはインプレッションとクリックしかない。今はちゃんとデータでお互いに理解しあわないとダメな時代になってきたし、それに対して僕らが応えていくべきだと思っています。

有園:実は結構、DMP市場をつくっていく際には、御社みたいに媒体社と広告主の間を仲立ちするメディアレップという立ち位置の会社が、ある種、会員制倶楽部の元締めみたいなものですよね。特定の媒体社の特定のプレミアムな枠を持って、特定の広告主が取り引きしますという。そこを作っていく人たちが、実は一番大変なのかなって思っています。 

徳久:それが生業ですから、やって当然ですね。ディスプレイ広告商品の販売は原則レベニューシェアでビジネスしているんで、単価が高いほうが取引効率が良いのです。安くて誰も得しないというか。もちろん、広告主にとって価値があわないものは買われないという話になります。ただ、その値付けの理由をロジカルに説明できるよう僕らは強く意識しています。

有園:きょうは、本当に勉強になりました。長い時間、ありがとうございました。

本記事は「Unyoo.JP」の記事「DAC徳久昭彦氏に聞く!〜プライベートエクスチェンジの重要性、そして媒体社の収益向上に必要なこと〜」を要約・編集したものです。長編のオリジナルコンテンツを読みたい方は、こちらをご覧ください!

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/04/09 08:00 https://markezine.jp/article/detail/22270

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