デバイス間で体験をつなげユーザーに最高のマーケティング体験を
押久保:冒頭でも、分散化するユーザーのデータを裏側でつなげる話が出ましたが、どうやってそれを実現するのですか?
高田:カギになるのは、識別子です。識別子が、広告だけでなくサービス面でもすごく大事な役割を担います。
ユーザーは今、PCもスマホもシームレスに使っていますから、体験の継続を考えるとコンテンツの閲覧もカートの中身も連携しているべきですよね。スマホの2台持ちでも同じです。そうじゃないと、スマホで買ったのにPCではレコメンド広告が出続けて「売り込まれている」と思われる可能性もある。だから、サービスでも広告でも、識別子によるデータのひもづけの精度を上げることが「おもてなし」になるんです。
押久保:なるほど。送り手視点ではなく「おもてなし」発想で考えれば、リターゲティング広告が嫌がられるといったこともなくなりそうです。
高田:そうですね。DMP、DSP=リターゲティングと捉えられがちですが、その風潮は変えていきたい。事業者さんがリターゲティングではなく「リマーケティング」という言葉を使っているのもうなずけるのですが、リマーケティングの概念は本来「その人が過去に来たことを知っていれば、よりよいおもてなしができるはずだ」ということです。
僕は、最高のマーケティング体験はコンテンツによって決まると考えています。この「コンテンツ」には、消費行動も含まれます。ものを買うのって、基本的に楽しいですよね。だから消費もコンテンツであり、その「もの」を知らないと買うこともできないので、適切な人に適切なタイミングで情報を届けることはサービスだと思うんですよ。
ネットで実現する「高速で精緻なおもてなし」
押久保:そういう体験を、広告で実現していくと。
高田:そうですね。ネットは長らく、簡単に最安値を探せるなど省力化の方向で進化してきましたが、データがつながって「高速で精緻なおもてなしができる」ことこそが本質だし、そこにもっとチャレンジしていきたい。ECもだいぶ楽しくなりましたけど、まだ街での実際のショッピングにはかなわない気がするので、その点を突き詰めたいですね。
押久保:では最後に、今後の取り組みや展望を教えてください。
高田:4月に新しくコンテンツマーケティング事業本部をつくり、メディアに親和性の高い広告制作に取り組んでいます。特に「コンテンツマーケティング×動画」は今年の注目トピックですね。また、「TRILL」という女性向けアプリを手がけており、ノウハウも溜まってきているので、このノウハウとレコメンド、ソーシャルを掛け合わせたマーケティングの提供も考えています。
直近では、Yahoo!リサーチをリニューアルしました。Yahoo! DMPでYahoo! JAPANのマルチビッグデータにリサーチデータを掛け合わせることで、商品を知らなさそうなユーザー層への広告配信や、ブランディング広告のPDCAを回すことなども可能になります。
スマホの広告は、出稿企業様も増えましたが、まだ単体での活用という印象です。クロスデバイスは新しい概念でもないですが、今後はPCとスマホでの連携を前提とした設計を強く推進していきたいですね。