マーケティングを成功させるための、データを扱う道筋を提示したい
MarkeZine編集部(以下、MZ):エクスペリアンでは、世界のマーケターを対象にした調査を毎年行っているとうかがいました。今年も英語版のレポート「The 2015 Digital Marketer」に続いて、日本語版も編纂されています。そもそも、なぜ御社がこのような客観調査をされているのでしょうか?
北村:当社には、ツールありきではなく、マーケティング活動を成功させるためにどのようにデータを捉え、活用していくべきかを伝えたいという思いが根底にあります。こうした調査も、その一環と考えています。 我々はマーケティングパートナーとして、クライアント企業の課題解決を支援していくために、日々ツールやデータ、サービスの開発に取り組んでいます。しかし、それらを使いこなして最大限の成果を上げるためには、企業自身も時代に合わせて変わっていかなければいけません。データへの取り組み姿勢や、組織構成の面を含めてです。そのために、自社がどう変わっていくべきかを考える材料にしていただきたいと、マーケターへの調査を続けているんです。
MZ:テクノロジーを駆使したさまざまなツールが出ていますが、使う側の企業の体制が整っていないと使いこなせないと。他社の状況を知って、企業が変わるのを助けるために、毎年1,000人ものマーケターへの調査をされているんですね。
北村:そうですね。同じように最先端のツールを導入しても、活用体制が整っている企業とそうでない企業とでは、成果に大きな差が出てしまうんです。
“多重人格化”する消費者への対応に迫られている
MZ:具体的に、どういったレベルの方が調査対象者で、どんな方々がこのレポートを活用されているのですか?
北村:2015年版の調査概要を紹介しますと、調査自体は昨年11月から12月にかけてオンラインで、世界15か国、1,012人のシニアマーケターから回答を得ました。日本も含まれるアジア太平洋地域で全体の29%を占めています。回答者のレベルですが、おおまかに経営者・役員が1割、本部長クラスから課長相当の役職者が半数強。コンサルタントとアナリストが2割強、残りはその他といった形です。
北村:レポートの結果は、経営層から現場の担当者まで幅広く役立てていただいています。ただ、どちらかというとメール件名をどうするかといったティップスではなく、客観的なデータをベースに今後企業がどのような課題にどう取り組むべきかという視点でまとめているので、経営層~役職者クラスの方に、より活用いただけると思います。
MZ:では、今年の調査結果についてですが、まずは特徴などをお教えください。
北村:デバイスの多様化、また企業との接触チャネルの多様化によって、消費者は近年どんどん“多重人格化”しています。特に今年はそれが、ごく一般の方々にまで広がる年になるでしょう。複数のデバイスを使いこなすクロスチャネルな消費者に対応するために、企業は特に組織構造から変わる必要に迫られているということが、今年の調査から見えた大きなポイントです。
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クロスチャネルマーケティング実現への障壁
MZ:確かに、複数のチャネルを自由に行き来する消費者に対しては、クロスチャネルで対応できる組織が整っていないと難しいかも知れませんね。
北村:ええ。例えば複数チャネルを統合して、つまりクロスチャネルでコミュニケーションを図るには、メルマガ配信やSNS運用、ECなどの部門を横断して、データを統合する必要があります。各部門で協力し、ときには強い旗振り役の下でデータ統合を推進していかないと、施策の段階に進めません。場合によっては、組織自体を大きく変える結果になることもあります。今回の調査でも、31%のマーケターがクロスチャネルマーケティングの実現を妨げる主な障壁のひとつとして組織構成をあげています。
MZ:現在企業はどのような組織構成を持っているのでしょうか?
北村:前年の結果と比較すると、二極化が進んでいるといえますね。マーケティングチームがチャネルを越えて完全に統合されているか、という設問に対して「統合されている」「分断している」のいずれも6~7%増えました。
最初の、かつ最大の課題はデータの収集・統合・管理
MZ:今年のレポートはどのような構成になっているのでしょうか。
北村:大きく、4章で構成しています。第1章は、クロスチャネルマーケティングに取り組むにあたって何が障壁になっているのかを、世界各国のマーケターへの調査を元に紐解いています。続く3つの章で、具体的に障壁として浮かび上がった「データ整備」「顧客理解」「適切なコミュニケーション設計」について、調査結果やケーススタディを織り交ぜながら解説しています。
- 第1章:顧客の心をつかみたければ、マーケターはスマートであれ
- 第2章:真の顧客像を明確化する
- 第3章:顧客の行動と思考を理解して、コミュニケーションを最適化する
- 第4章:チャネルを横断した顧客とのインテリジェントなコミュニケーション
MZ:第1章で解説されている、クロスチャネルマーケティング実現への障壁のひとつ目が「データ整備」とのことでした。データ統合の重要性は指摘されて久しい気もしますが、まだ大きな課題として残るのでしょうか?
北村:ええ。多くの企業で、データについての課題に気付いてはいるが、対応できていない。これは、企業がクロスチャネルマーケティングを行う上で最初の課題であり、かつ最大の課題ですね。例えば、こんな調査結果があります。ブランディングや新規顧客獲得などいくつかの項目のうち、どれを2015年の重要課題と捉えているかという設問で、「データ」の項目は4位(36%)に挙がりました。ですが、何に優先的に取り組むかを聞くと、データの収集・統合・管理は6位(29%)になってしまうのです。
MZ:課題としては認識しているのに、優先度としては後の方になっているんですね。
北村:そうなんです。一方で、テクノロジーへの注目度は高い。優先事項として、「適切な顧客分析に基づいた適切なコミュニケーション」という項目は2位(43%)、「顧客とのコミュニケーションを自動化し、一元管理するためのテクノロジーの統合」という項目は3位(36%)でした。これらから、マーケティングオートメーションツールをはじめとする技術を導入し、コミュニケーションを適切に展開することを重視しているのに、前段階のデータ統合ができていないという実態を見て取れます。
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精度の低いデータは「収益を圧迫する」との認識が進む
北村:第2章では、データを整備して顧客像を明確にする方法を紹介しています。エクスペリアンが行ったデータ品質に関する調査によると、営利企業の83%において、データ品質の低下は経営幹部レベルの課題であると指摘されている点です。精度の低いデータは、生産性の低下やコミュニケーションコストの増加など、収益を圧迫すると懸念されています。
MZ:データの精度を高めるには、集め方に注意すればいいのでしょうか?
北村:もちろん、データ収集時から精度に注意することも大事ですが、メンテナンスも同様に大事ですね。今はDMPの活用も進み、それに伴ってサードパーティーデータをどう組み合わせるかもマーケティング成果を左右するポイントになります。そのあたりも当社の知見を元に解説しています。
MZ:冊子には、データ収集のベストプラクティスも紹介されていますね。まずデータを整備して、次の顧客理解のステップへ進むと。ここでポイントになるのは、どのようなことでしょうか?
北村:消費者は、それぞれ独自のプロファイルを持っているということです。データ整備により真の顧客像をつかむことが第一で、それを元にプロファイリング戦略を立てて、カスターマージャーニーをデザインすることが大事です。
海外に遅れを取る、CRMやアトリビューションに着手を
MZ:その上で、最後の章、実際のコミュニケーションを展開していくというステップへ進むのですね。
北村:ええ。アトリビューションの考え方なども紹介していますが、ここでは特に日本のマーケターの回答が世界の平均と異なっていました。適切なアトリビューションモデルの選択や、着手の仕方、またこれによって得られたインサイトに基づく行動にも、他国以上に困難を感じていることがわかりました。
MZ:なぜ、日本のマーケティングが特に遅れているのでしょうか?
北村:冒頭の問題に戻りますが、やはり組織が分断され、データも分断されていると、アトリビューションのトラッキングは難しいですよね。日本の企業は、同じように一気通貫のデータ活用が重要になる長期的なCRMも苦手な傾向があります。海外の結果と比較すると、この部分はもう少し意識する必要がありそうです。
MZ:では、今回挙がった課題に対して、エクスペリアンはどのようなサービスを提供されていくのか、今後のロードマップを教えていただけますか?
北村:当社は近年、「Cross-Channel Marketing Platform(CCMP)」というツールを中心として企業のマーケティングをサポートしていますが、元々データ分析とその活用に大きな強みを持っています。データに基づく適切なコミュニケーションを実現できるように、ツール活用の前提となるデータ整備やコンサルタントによる人的なサポート、また今回のような調査・レポート活動も含めて、さまざまな面から企業の支援を続けたいと考えています。
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第1章:顧客の心をつかみたければ、マーケターはスマートであれ
第2章:真の顧客像を明確化する
第3章:顧客の行動と思考を理解して、コミュニケーションを最適化する
第4章:チャネルを横断した顧客とのインテリジェントなコミュニケーション
全4章にわたり、調査結果やケーススタディを織り交ぜながら解説した本レポートには、デジタル時代に合わせて企業が組織構成や施策などをどう変えていくべきかを考える多くのヒントが散りばめられていますので、ぜひご活用ください。ダウンロードはこちらから!