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DeNAの電子チラシアプリ「チラシル」、Amazonギフト券活用で狙う顧客購買行動の変容とは

 電子チラシのスマートフォンアプリ「チラシル」を展開するDeNA。掲載されている商品を買い物したレシート画像を送るとAmazonギフト券がもらえるという仕組みで、利用者数を伸ばしている。なぜAmazonギフト券を選んだのか、そのメリットや成果、今後の展開まで、同社EC事業本部 サービス開発事業部の秋元里奈氏に伺った。

毎日の買い物に欠かせない! ヘビーユーザー多数のアプリ

 秋元氏が所属するEC事業本部 サービス開発事業部は、eコマースを中心とした新規事業を創出することをミッションとした組織である。また、既存サービス「チラシル」のプロモーションも担当。チラシルは、関東をメインとしたスーパー等の折り込みチラシを無料で見られるスマートフォンアプリだ。郵便番号か現在地から近所のスーパーを検索し、よく行く店舗とよく買う商品ジャンルを登録しておくと、該当店舗のチラシが配信されるという仕組み。

電子チラシアプリ「チラシル」

 個人情報を入力する必要はなく、特売品やお店、商品ジャンルごとにチラシを検索することができる。商品をタップすれば、複数店舗の価格比較も可能だ。チラシ情報は基本的に独自で収集しているが、提携して情報を受け取っているスーパーもあり、今後は徐々にお得情報を共有できるスーパーを増やしていきたいという。

株式会社DeNA EC事業本部
サービス開発事業部 秋元里奈氏

 「当社では様々なアプリを提供していますが、リリースして2年になるチラシルは当社の他アプリに比べて粘着度が高いことが特徴です。主婦の方をはじめとして買い物に毎日行かれる方も多いので、平均で週に約4回開いてくれています。インストールしてから翌月の継続率も80%と高いので、高い満足度もご提供できているかと思います」(秋元氏)

購買行動を変容する「おこづかい」機能とは

 同アプリは、購買意思決定を左右する情報を与えてくれる「おこづかい」機能を7月27日にリリースした。これは購入期間や商品など、キャンペーンの指定条件を満たしたレシートを撮影した画像を送ると、Amazonギフト券のコード番号が送られてくるというもの。このコード番号は、Amazon内の商品購入時に利用できる。

おこづかい機能

 キャンペーンは応募するとAmazonギフト券が必ずもらえるものと、抽選のものがある。ほぼ毎日新しいキャンペーンがアップされ、ギフト券の金額は5円から。全員プレゼントの場合、最高で150円分のAmazonギフト券が付与され、抽選であれば100名に1,000円分のAmazonギフト券がプレゼントされてきた。キャンペーンは常にいくつも開催されており、1つのレシートで複数のキャンペーンに応募することも可能だ。

 「商品が高価だと、還元額も高くなる傾向があります。例えば松茸の場合は150円還元で開催しました。また還元率という観点でこれまでに一番お得だったのは、もやしのレシートで100円還元というものです。たとえ19円のもやしでも100円もらえるので、お客様によっては還元率500%超えという方もいらっしゃいました。どのキャンペーンも応募は1人1回のみですが、使い方でお得度が変わってきます」(秋元氏)

 同機能の提供開始後、アプリダウンロード数は100万を突破。1日あたり数万のユーザーが利用している。キャンペーンによっては、期間中にレシートが数千規模で送られてくるものもあるという。またリピーターも多く、今まで行ったキャンペーンの8~9割に応募しているユーザーも多数いるとのことだ。

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Amazonギフト券を選んだ3つの理由

 インセンティブにAmazonギフト券を選んだ理由は3つあるという。1つ目は、Amazonギフト券の需要の高さ。多くの人が利用しているAmazonギフト券は、「欲しいギフト券ランキング」でも上位に入っている。そんな需要の高いAmazonギフト券であればより多くのチラシルユーザーに喜んで頂けると判断されたそうだ。

 2つ目は個人情報がなくともギフト券を付与できる点。チラシルは、登録するときにメールアドレス含む個人情報を一切必要としていない。そのため、郵送やメールで送る必要のあるギフト券では、住所やアドレスなどの情報を入力してもらうところから始めなければならず、手間が増えてしまう。Amazonギフト券であれば、コードをアプリ上で見せれば、その場でユーザーに利用してもらうことが可能だ。

 そして、3つ目はアプリユーザーに小額でAmazonギフト券が付与できるところだ。おこづかい機能を実装する際、小額で多数の商品キャンペーンを打って機能改善を行いたいという希望があった。そのため最低のインセンティブ付与金額が大きいと、付与できるユーザー数が少なくなってしまい、キャンペーン数も減らさざるを得ない。その点Amazonギフト券では、50円以上であれば1円単位で金額指定の上Amazonギフト券が配布できる。これにより、小額でのキャンペーンが多数行えるようになった。

 それでも、秋元氏はキャンペーン実施当初は不安だったという。「チラシルのユーザーはチラシを見て実店舗に買い物に行く人たちなので、果たしてオンラインショッピングのAmazonギフト券をもらって嬉しいのかなと。ですが、蓋を開けてみるとギフト券の登録方法についてのお問い合わせはあるものの、特に悪影響もなく利用者も順調に増加しているので、Amazonギフト券を魅力的に感じていただけているようです」(秋元氏)

 実際おこづかい機能をリリースして2ヶ月後には、同機能をチラシルユーザーの半分が使うようになった。

インセンティブ設計のコツは「価格と当選者数のバランス」

 今回のようなインセンティブを用いたキャンペーンで、秋元氏はどういった点を意識しているのだろうか。

 「限られたマーケティング予算の中で、より多くのユーザーにお得だと思ってもらうことが大切です。そのためには、チラシルで得したという体験をしてもらうことが重要なので、商品設計にはかなり気を使っています。特に、沢山応募が集まる商品や価格を意識すること。当選者を少なくすれば、価格は上げられるのですが、その兼ね合いが難しいですね。キャンペーンのリリーススケジュールは毎回細かく決めるのですが、それも常に結果を見て次回のキャンペーン設計に反映して……というのを繰り返しています」(秋元氏)

 また、秋元氏はUIのデザインにもこだわったという。ギフト券を使いやすくするために、チラシル内に“ギフト券を登録する”というボタンをわかりやすく置き、Amazonのサイトにすぐ飛べるようにしている。機能の動線設計には、チームメンバーを何人も巻き込んで議論を重ねた。わかりやすい動線設計によって、よりユーザーの体験を高めるためだ。

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PDCAをより早く回して、迅速な機能改善へ

 UIデザインだけでなく、機能改善も短期間で大幅に行うことができた。おこづかい機能のリリース後、当初の目的でもあった小額で多くのキャンペーンを行えたことで、PDCAを迅速に回せたことが大きいという。最初は“先着何名にギフト券をプレゼント”という形だったが、小売店と連携することになり、先方のリクエストでレシート送信後に回答してもらうアンケート機能をつけた。また、利用者数が増えてきてからは、先着のみだと当選者が限られてしまうため、抽選形式も取り入れた。

 アンケートの際に記入が必要な個人情報は、年齢と性別だけなのでハードルもそこまで高くない。インセンティブは、企業やスーパーなどとの連携(アンケート有り)の場合は約100円還元。従来のおこづかいキャンペーンと比べて、高めに設定している。

 「これも、Amazonギフト券導入の工数が少なく済んだからこそ、実現できた機能です。商品や店舗に関する消費者の声をアンケートによって取得できるため、メーカーや小売店、飲食店などとのタイアップもしやすくなりました」(秋元氏)

 従来のおこづかい機能におけるキャンペーンの商品指定は、例えば「バナナ」など商品名のみ。しかしタイアップは「◯◯のバナナ」とメーカーも指定される。メーカーや商品など細かい条件がつくことで、レシートの応募数が下がるかもしれないとの懸念があったが、結果は全く問題がなかったという。

 「見せ方や還元額によって、メーカーを指定しても応募は沢山来ることがわかりました。いつも買っているものや還元率が高いものなら買おう、となりますので。それこそ従来のキャンペーン以上の応募が来ることもあります。1回買ったら次も、とリピートされやすいので、ユーザーの増加に合わせてメーカーの販促面でもどんどん活用してもらえそうです」(秋元氏)

既存サービスの活用でさらなる購買行動の変化を巻き起こす

 今後の方向性としては、おこづかい機能でメーカーや小売店との連携をさらに増やしていく予定だ。

 「チラシルには既存の動画広告や記事広告があり、それと組み合わせて新しい広告をつくる予定です。Amazonギフト券とも様々な金額やボリュームで深い連携をとっていきたいですね」(秋元氏)

 クライアントからも、様々な要望がきているという。

 「メーカー様からは、自社商品が他の何と一緒に買われているのか、また1回の購入金額はどれくらいか知りたいという要望があります。現在レシートのデータ活用までは行っておりませんが、今後対応を進めて要望に答えたいですね。また小売店様からは、“〇〇エリアで買い物をしている人に広告を打ちたい”という地域指定のリクエストをいただきます。チラシルなら、地域をかなり細かく限定できるので、お役に立てます」(秋元氏)

 さらにスーパーで売られているようなものに限らず、「例えば、今年のシルバーウィークには新幹線のチケットやガソリンスタンドのレシートなどでAmazonギフト券を付与しました。こうした、季節やイベントに合わせた幅広い展開も行うことで、色んな生活シーンでチラシルを使っていただきたいです」と秋元氏。様々な購買行動に変化を起こしたいと展望を語った。

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター
出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2015/12/16 14:39 https://markezine.jp/article/detail/23247