A/Bテストの次は、パーソナライゼーション
押久保:NYタイムズの場合は、そもそもビジネスモデルを変える必要に迫られていたのですね。
シロカー:そう思います。当社では今年、A/Bテストに続くセカンドプロダクトとしてパーソナライゼーションの機能をリリースしましたが、これもメディア企業にはマッチしています。当然ですが、スポーツニュースをよく見ている人と、国際政治の記事をチェックしている人では、関心事が違います。ユーザーの位置情報や行動情報からパーソナライズし、コンテンツを最適化することは、メディア企業のビジネスに直結します。
私たちには、記事を制作する機能はありません。私たちができるのは、メディアが書いた記事について、どれがうまく行っていてどれが伸び悩んでいるかを示すこと。加えて、要素をフレキシブルに変えてどんどん試せる環境を提供することです。それはもちろん、メディア企業以外のクライアントに対しても同じですね。
押久保:なるほど。ほかに、特に導入が進んでいる業界などはありますか?
シロカー:どの業界にもアーリーアダプターとフォロワーがいるので、メディア企業以外でも、全般的にトラディショナル企業へ広がり始めているという状況です。ただし前述のように、やはり競争が激しい業界では意思決定のスピードも速める必要があるので、データドリブンへのシフトも進んでいます。
データドリブンカルチャーを日本でも広めたい
押久保:先ほども、デジタルに必要以上に恐れを抱いて敬遠する人たちの話が挙がりましたが、良質なツールはもちろん重要だとして、それを使いこなせる企業体質へ変わることが、より大きな成果を得るのに不可欠なんですね。
シロカー:おっしゃる通りです。なので、私たちもツールを提供して成果が上がって終わりというよりは、ツールを使いこなす過程で、データドリブンのカルチャーが企業に浸透してほしいと願っています。
HiPPO、つまり偉い人たちの意見は変わらなくても、ユーザーが変わり、市場環境も変わっています。現場で成果を上げるには、彼らリーダー層がデータドリブンの文化を受け入れる必要があるのです。
押久保:最後に、日本市場における今後の展望をうかがえますか?
シロカー:当社としては、日本のローカルパートナーと協業できることが楽しみですし、大きな可能性を感じてもいます。
デジタルマーケティングにおいて、日本の市場は欧米を後追いしているといわれています。ですが見方を変えれば、欧米では主流の先端テクノロジーのコンセプトを日本に導入することで、日本の企業のビジネスが大きく進展するかもしれない。
日本市場へOptimizelyを紹介し、意思決定にまつわる企業体質も変わっていけば、より成果を上げられる企業になれると思います。欧米に引き続き、データドリブンのカルチャーを日本でも広めていきたいですね。