その先が見たい、応援したくなる企画「旅する傘」
MZ:アプリやイノベーションの部門で、印象に残った作品は?
高田:一般の部でグランプリを獲得した、踊る折り紙「DANCING PAPER」ですね。これは本アワードの開催より前にYouTubeにアップされて話題になっていた作品で、私も知っていました。
すでにネットを介して伝播した作品がクリエイティブアワードに応募されたことで、まさに個人が世の中に発信できるというネットの良さを表していると感じ、印象に残っています。おもしろければ必ず広がるというのは、とても“ネット的”だなと思っています。
MZ:鈴木さんは、いかがですか?
鈴木:イノベーション部門でGoldを受賞した、位置情報を取得できるビニール傘を追うプロジェクト「旅する傘」は、審査中にどんどん評価が高くなっていったのが印象的でした。オリジナルの主題歌が添えられるくらい凝っているのですが、なぜそこまでしているのか、どこを目指しているのかとか、審査員の皆さんが次第に応援する雰囲気になって(笑)。
副賞の賞金で、もっといいものにしてほしいといった意見まで挙がり、そういう気持ちにさせたことが興味深かったですね。
ネット広告をクリエイターにとっての“憧れる場所”に
MZ:10周年の節目を経て、今後はどのように展開されていくのですか?
鈴木:10周年を機に社内でも、今後のよりよいアワードのあり方や、ヤフーが開催する意義についての議論をすでに重ねています。
高田:マス広告に比べれば、ネット広告は制作コストも抑えられ、取り組むハードルも低いですが、その利点の裏返しでまだクリエイターにとって“憧れる場所”にはなっていないと感じています。
やはりこれだけ影響力のあるメディアになったので、私たちとしてはネット広告をクリエイターが憧れる場所にすること、ネットのクリエイティブの価値を皆さんに分かっていただく活動は、今後も絶対に続けていきたいと思っています。
MZ:広告の掲載面選択やターゲティングは、テクノロジーによってかなり進んでいますが、クリエイティブの強化にはまだ余地がありそうですね。
高田:個々のキャンペーンの成果をテクノロジーで改善できる幅は、数%からせいぜい倍くらいだと思うんですね。でもクリエイティブでは、10倍も20倍も引き上げることができます。今回、企業の部でグランプリを受賞されたサンリオの「ちゃんりおメーカー」も、やはりクリエイティブの力があれだけのヒットを支えたのだと思います。
もちろん、テクノロジーありきで発展する表現も後押ししたい。今後もテクノロジーとクリエイティブの両方に重きを置いて、クリエイターを支援したいと考えています。