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イベントレポート

なぜアプリ?成果は出る?どう説得する? “アプリ活用の疑問”にパルコ・東急ハンズ・良品計画が答えた

社内の向かい風にはいかに立ち向かう?

 予定通りに施策の結果が出せなかった場合、社内での風当りも強くなるケースがある。それでも施策を続けるためにどうすればよいのだろうか。ここで重要になってくるのは、売上への貢献具合のようだ。

 「アプリの全国展開を始めて約1年、DL数は当初の想定まで届きませんでしたがアクティブ率は想定以上でした。結果、一番の狙いだった売上のアップは計画以上の成績を出せた。だから説得できた部分は大きいです」と林氏。アプリユーザーの買い上げ頻度および、一回当たりの単価は高く、全体の一客単価は約2倍に跳ね上がったという。

 東急ハンズでも、売り上げ面において企画時の仮説に沿うような結果を出せた。アプリを投入し、オムニチャネル型の購買を促すことによって、客単価や購買回数が上がる点もデータによって示すことができたわけだ。アプリを使いこなしてもらえれば売上は向上する。その証明ができたため、次はパイをいかに増やすかを考えているという。

 また、「失敗をすることで、効率を最大化できるポイントが見えてくることもある」と濱野氏。失敗点から改善策を導き出し、その点を考慮した次回策を提案することでプロジェクトを進めている。これもアプリのパワーが社内に認知されているためだろう。「社内の期待を裏切らないように進める必要があります」(濱野氏)

共通点は「全体図を描く」ことと「DBまわりの内製」

 そもそもアプリを使った施策を構想したとき、何から取り掛かるべきか。この質問に対して三人は口を揃えて「まずは全体の図を描くこと」だと答える。

 「アプリは一つの手段でしかない。なぜアプリなのかという問いに答えなければなりません。ですから全体の絵を描いて、本部も現場もお客様も納得できるようにする必要があります」(濱野氏)

 また緒方氏は、顧客にとってネガティブなこと、ポジティブなことを棚卸して、アプリの要件定義を行ったという。ポジティブ面は買いやすさ・選びやすさ・楽しさ、ネガティブ面は妨げない・ストレスを掛けない・迷わせないの3つ。前者を向上させ、後者を減らすためにどう行うのかディスカッションをした。

 パルコではアプリの提供以前、カエルパルコなどを展開している頃に全体図は描けていた。

パルコが描いた構想
パルコが描いた構想

 その背景には、顧客接点創出のために様々なアプリやSNSを積極的に利用することで、ユーザーの反応が見えていたことがある。アプリの必要性を感じ、データとしても証明できていた同社が懸念していた点はUI/UXだった。

 「お客様にとって使いやすく、いいアプリだと思ってもらうことが重要。だから、一緒にアプリを作ってくれるパートナー探しが最初の課題でした」(林氏)

 林氏も触れる通り、アプリ施策の展開において“内製と外注”も頭を悩ませるポイントだろう。どこまでを自社で行えばいいのだろうか。ここでも共通点があった。データベース周りは内製していることだ。

 「アプリは外注し、サーバーサイドの部分は内製しています」と濱野氏。そもそも、アプリの施策をするといっても、ポイント制度を取り入れる場合、POSレジやネットストアの改修や、基幹システムとのつなぎ込みが必要だ。システム開発の面は既存のパートナーと進め、サーバーサイドの開発は内製している。すると、基幹システムとの繋ぎこみもスムーズになる。

MUJI passportの構築範囲
MUJI passportの構築範囲

 「オムニチャネルの文脈だとデータの連携は必須です。ここを社内で持っていないとキツイ。内製しておけば、フットワークが軽くなります」アプリのフロント以外を内製しているという緒方氏は語る。

 一方で、外注をする部分についても想いを共有できるパートナー探しが重要だ。「些細な面でも喧々諤々のディスカッションをしました。一緒に考えてくれるパートナーさんなしには成立しません」(林氏)

顧客接点はどのように変わっていくのか

 セッションは、3名の“今後のBtoCビジネスにおいて顧客接点のチャネルは今後どうのように変わるか”という視点から語られて締めくくられた。

 「顧客との接点はリアル・ネット・スマホの3点からは大きく変わらないと思います。重要なのは接点を増やすことと、それぞれに最適なコミュニケーションを設置すること。ですから、ひとつ例として、今後は自社と他社の連携も大切だと考えています。他社のアプリやサイトと連携してライトユーザーを誘致し、興味を持ったら自社のアプリ(会員)にアップデートするという動きが必要でしょう。また、アプリは削除が楽ですから、ウザがられないコミュニケーションをしつつ、アプローチしていく方法の最適化を日々ブラッシュアップしていく必要があると思います」(緒方氏)

 「顧客接点を広げる場合は「衣食住」から「医食充」にシフトする必要があると思います。ここでの医はメディカルやビューティーですね。このキーワードでお客さんと接点を広げていく。衣料品の展開においても、この言葉を意識して、提供するサービスによって新旧のイショクジュウをつなげていきたいと思います」(林氏)

 「メディアはポータル型からアプリなどをはじめ分散しつつあります。いかにして単一でない中に、気持ち悪がられずに、一貫したコミュニケーションをしていくのかという観点は必要でしょう。また社内では、BtoCではなくBwithCでもなく、BforCでないといけないという考えが広がってきています。お客さんが無印良品というプラットフォームにどう参加してもらうか、遊んでもらうか。そのなかの一ツールとしてアプリも突き詰めていきたいと思います」(濱野氏)

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伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/03/10 10:00 https://markezine.jp/article/detail/24003

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