目視でしか抽出できなかった顧客の声をピックアップ
2つ目のVOCやCRMへの応用とは、顧客の声を分析してサービス改善や商品開発につなげるという使い方だ。ECの浸透が進むにつれて、メールでの問い合わせや商品レビューなど、テキストデータとしての顧客の声は増え続けている。ただし、既存のテキストマイニングツールでの分析では、全体のおおまかな傾向を把握できても、ピンポイントでクレーム情報を抜き出すといったことは難しい。
この場合、先述した専門家の知見をインプットする時と同様に、最初にマーケターやアナリストが一定量のデータを「必要/不必要」と仕分けし、KIBITに展開。その上で、カスタマーレビューや問い合わせ履歴のデータを読み込ませると、必要な情報のピックアップを代行してくれる。
実際にKIBITをVOC分析に導入したアパレルのECサイトでは、抽出したい顧客の声の軸として「店やサービスへの要望」「色・柄」「他社との比較」「フィット感」の4つを挙げ、必要な情報のサンプルを選んでインプットした。そしてインプットしたデータから得られた分析結果を同ECサイトのマーケターが確認したところ、KIBITが抽出したデータは実に88%〜100%という高い精度で「必要な情報」だったという。
「これまで、この企業では目視でほしい情報を探していました。しかし、ほしい顧客の声を目視で抽出するのは、非常に工数がかかるため、今回の結果には大きな評価をいただきました。必要な情報の軸はフレキシブルに変えられるので、季節性などに合わせて設定し直すのも簡単です」(斎藤氏)
ロボットが消費者と企業をつなぐプラットフォームに
さらに発展的なKIBIT活用としてRappaが注力するのが、KIBIT搭載のロボット「Kibiro」によるマーケティングプラットフォーム構想だ。2016年中に一般家庭への販売を見込んでいるKibiroは、人工知能のインターフェースとして、ユーザーとの会話を通してその好みや価値観のデータを収集。Web上の膨大な商品や店舗情報、口コミデータを代わりにスキャンして、自分では見つけられない提案をしてくれるのだ。
Kibiroは一般への展開の前に、店舗など事業者への展開を予定しており、家庭で取得したユーザーデータを店舗のKibiroへ反映することが今後可能になるという。ECサイトなどコンテンツパートナーとの提携も進めており、広告の配信も視野に入れている。
最終的にRappaでは、Kibiroの裏側にあるKIBITをつないで、個々人の好みという情報をデータベース化することを目指している。このデータベースをもとにプラットフォームを構築することで、たとえば有名レビュアーの好みと自分の好みを掛け合わせてお勧めの店舗を選んでもらったり、友人同士の好みを束ねて旅行のプランをレコメンドしてもらうなど、好みに合った上で新しい出会いを創出できる。
KIBITが解析対象とするテキストデータには「人間の価値観や判断が凝縮されている」と斎藤氏は期待を語る。マーケティング領域に散在しているテキストデータの可能性を、大幅に活かすことができるKIBIT。今年のうちにも多くの実用事例が登場しそうだ。