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『MarkeZine』(雑誌)

第107号(2024年11月号)
特集「進むAI活用、その影響とは?」

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MarkeZine Day 2016 Spring

ビッグデータがあって初めてAIは機能する、技術とビジネスの両面から見るAIの本質と影響

 2016年3月3日(木)に行われた「MarkeZine Day 2016 Spring」は、今マーケティング領域で熱い関心を集めている人工知能に関するセッションが多数展開された。中でも、脳神経科学者、マッキンゼー社のコンサルタントを経て現在ヤフーにてチーフストラテジーオフィサーを務める安宅和人氏の講演では、テクノロジーの発展による大きな時代の変化を背景に、ビッグデータと人工知能の本質が分かりやすく解説され、氏が示唆するビジネスや経営にもたらす影響に多くの参加者が聴き入った。

ICTを牽引し、かつ未来を変える企業が富を生む時代

 ヤフーCSOの安宅和人氏は、人工知能(以下、AI)がマーケティングやビジネスそのものに与える影響を語れる人物のひとり。本講演「AI×データはビジネスをどう変えるか?」では、「富の方程式が変わった」という指摘を皮切りに、互いに入れ子構造になっているというビッグデータとAIの関係、さらにはビジネスや経営にとってのAIの意味合いについて、1時間弱の短い間に非常に凝縮された論が展開された。

ヤフー株式会社 チーフストラテジーオフィサー 安宅 和人氏
ヤフー株式会社 チーフストラテジーオフィサー 安宅 和人氏

 「今、皆さんは30年前のスーパーコンピューターよりもはるかに性能の良いコンピューターを持ち歩いています」と安宅氏は切り出した。インターネットの普及やソーシャルメディアの登場によって、情報の拡散の仕方は様変わりした。口コミ投稿やO2Oの促進、各種センサーを搭載したウェアラブルツールの進化などを通して、街自体や生活空間そのものがICT化している。あらゆる産業にICT化の波が訪れていることを背景に、安宅氏が指摘するのが「富の方程式の変化」だ。

 「世界の時価総額トップ10企業の時価総額と生み出す利益を見ると、すでに上位の大半がICT系の企業であること、また、従来型の“付加価値を生む”方法で伸びてきた企業と異なり、ICT系のプレーヤーは明らかに純利益に対して時価総額が大きいことがわかります。これは“未来の成長期待を生み出せるかどうか”が、富に直結する時代になっていることを示しています。すべての産業がICT化している流れを踏まえると、ICTをテコにし、かつ未来を変える期待感を生み出せる企業が富を生む時代が来ていると言えるのではないでしょうか」(安宅氏)

ビッグデータとAIは人間を情報処理から開放する

 では、企業が時価総額を高め、ひいては国富が増加することにICTが密接に関わる時代は、技術的に見るとどのような局面なのだろうか? 安宅氏は、スケジュール管理から画像や音楽の利用データ、ウェアラブルデバイスの利用データまで、多くの行動情報がクラウドに上がり、相互利用可能な情報が激増していると指摘。

 「5年以内に、ネットに接続したデバイスは世界の人口の6倍以上の数になると予測されています」と話す。結果、モノからも含め多種多様なログデータが今後、爆発的に発生する。いわゆる「ビッグデータ」だ。

 幸い、コンピューターの計算性能も日々向上しているため、処理可能な容量も加速度的に大きくなっている。さらに、大量データ処理技術、深層学習(ディープラーニング)の実用化、データ可視化技術が大きく進展と、情報科学も劇的な進化を遂げつつある。

 かつて産業革命で、内燃機関、石炭・石油、電気工学らの新たなリソースにより、人間と家畜は当時の労働の大半であった肉体労働、手作業の多くから開放された。同じように今、ビッグデータ、高い計算能力、そして情報科学の進化という3つの要素によって、人間は現在の労働の多くを占める退屈な数字入力、情報処理的な作業から開放されようとしている

 「ほんの50年前にコンピューターが使われはじめたことで、単純な作業はどんどん機械に置き換えられるようになりました。ですが、ある程度は段階が成熟したことで、それだけでは頭打ちになっています。今まさに我々が直面しているのは、ビッグデータとAIの力でさらに一段階上、知的作業の相当部分を機械が担うようになるフェーズへの移行なのです」(安宅氏)

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/03/29 15:00 https://markezine.jp/article/detail/24121

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