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ビッグデータがあって初めてAIは機能する、技術とビジネスの両面から見るAIの本質と影響

AIは人間にとって脅威になり得るのか?

 2つ目の「予測」では、売上や需要予測、前述の与信スコアリングなどはすでに実用化されている。これらは比較的易しい、と安宅氏。今この切り口で最も熱いのは、「人の心の予測」だと氏は語気を強める。

 幾つかの用途では、AIにより画像などの認識をおこない、時系列の変化の読み取りにより、次に人間がどのような行動を取るかという意図をかなりのレベルで推測できるようになりつつあるという。

 例えば、日本のEmotion Intelligence社ではECサイト向けに、どういったタイミングでクーポンを配信すると購買につながるのかを予測しプッシュ通知するサービスを提供。高いコンバージョン向上を実現しているという。「これらの技術の延長でAIベースのパーソナルアシスタントも実用化に向けて進んでいる。結果、人間とデバイスの間に、パーソナルアシスタントが入ってくるような時代」と安宅氏は語る。

 さらに3つ目の「実行」でも、これまでは人間が手掛けるしかない、あるいは人間ならではの能力と考えられてきたデザインやゲームの攻略、物流におけるピッキングといった領域でのAIの活用が目覚ましい。先日、Google傘下の英DeepMind社が開発したAIプログラム「アルファ碁(AlphaGo)」が世界トップレベルの棋士に勝利したことは記憶に新しい。

 これら人間の能力を凌駕するAIが生まれつつある中、「AIは人間の存在にとっての最大級の脅威」「完全なAIができれば人類の終焉となりうる」といった諸説があるが、「それは当面考えづらい」と氏は否定する。

進むテクノロジーとデータホルダーとの連携

 AIは確かに情報処理に優れ、生産性やスケールを桁違いに向上させる。だが、少なくとも現状のAIには意志がなく、常識やひらめきもない。十分なデータ(前例)がなければAIとして機能しないのも、前述の通りだ。さらに安宅氏は続ける。

 「目標を設定して現状の課題を見極め、分析設計し検証し伝える、という課題解決のプロセスを考えると、ほぼ全てのステップにAIの深刻なボトルネックが存在しています。つまり、これらの大半は当面、人間の仕事として残ります。AIは確かに人間を劇的にアシストする存在となっていきますが、正しいタイミングで正しいクエスチョンを投げかけることが、共存へのカギになるでしょう」(安宅氏)

 では、AIはビジネスや経営をどう変えるのか? 安宅氏は、データ×AIによって意思決定の質とスピードが大きく上がることを指摘。また、IBMの「Watson」が世界最高レベルの医療機関である米Mayo Clinicと共同プロジェクトを始めているように、AI活用を見越したテクノロジーとデータホルダーの連携、データホルダー間の連携がますます重要になるという。

 さらにデータとAIは、マネジメントも変容させる。「ヒト・モノ・カネ」という経営資源は、「ヒト・データ・キカイ(AI・ロボット)」へ置き換えて語られるようになり、従来通り人のモチベーションを上げて動かすことに加え、AIと人間の世界をつなぐことも求められるようになる。

 「AIの発展によって、総合的に見立てるとか、人をやる気にさせるといった『人間しかできない役割』が明確になっていきます。今起きているさまざまな変化を捉えて、皆さんとともによりおもしろい未来をつくっていけたら」と安宅氏は期待を語り、講演を結んだ。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/03/29 15:00 https://markezine.jp/article/detail/24121

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