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CVR1.4ポイント向上/CPA30%改善を実現するDMM.comが目指す“広告の正しい運用”とは

 近年、市場拡大を続けているDMM.com。同社がリスティング広告の“正しい”運用を目指し、マリンソフトウェアの「Marin Search Enterprise」を導入したのは2014年12月のことだ。「広告全体を横断的に管理し、ノウハウを社内に蓄積することは、将来の広告市場にとっても価値を持つ」と語る同社に、マリンソフトウェア活用術を聞く。

広告代理店一任の状態から脱却を目指す

 DMM.comは、近年急速に事業を拡大している総合インターネットサービス企業だ。事業内容も多岐にわたり、オンライン英会話サービスをはじめ、エンタメからエネルギーまで多様な分野をカバーしている。そんなDMMのWebマーケティングを担っているのが、DMM.comラボ社のマーケティング本部だ。同部 部長 高木一輝氏は次のように話す。

株式会社DMM.comラボ マーケティング本部 部長 高木一輝氏
株式会社DMM.comラボ マーケティング本部 部長 高木一輝氏

 「マーケティング本部は、DMMのプラットフォーム全体にまたがる『プラットフォーム事業』の集客やマネタイズに係る企画を起案していく部門です。もともとは広告管理を専門としていたチームで、人数も20~30名ほどでしたが、集客からマネタイズをより効率化して事業拡大に貢献すべく、Web広告の“正しい運用”を追求してきた結果、少しずつ人数が増え、現在では広告運用におけるデータマイニング業務やクリエイティブ業務、リスティング、SEOの専門家など80名ほどのスタッフが属しています」(高木氏)

 ここでいう“正しい運用”とは、単純に決められたCPAで運用することではない。それだけならば、運用スキルが高い代理店に一任し、より安価なコンバージョンを追求する代理店を探し続けていけば良い。だが同氏が目指す広告運用のあるべき姿は、それとはまるで違う。

 「まずは、Web広告運用に関わる業務はどのようなもので、それを遂行するためにどのくらいコストがかかり、自分たちが今できることのパフォーマンスで目標をどれくらい達成できるのかを定量的に知ること。そして、より優れたパフォーマンスを実現し、信頼できるパートナーになり得る代理店に正当な対価をお支払いし、自分たちは自分たちの得意な分野や企画立案に専念すること。こうして『自分たちがWeb広告運用に関わる業務に正当な値付けをし、広告運用を最適な形で分離させていく』というカルチャーとノウハウを自社内に蓄積したいと考えたのです」(高木氏)。

 高木氏は、広告代理店に勤務していた経歴を持つ。だからこそ、Web広告運用を請け負う代理店が乱立し、代理店のサービス費が値崩れを起こしつつある現状に危機感を抱いていたという。サービス費が値下がりすると、より付加価値の高い提案を行うコンサルタントはほかに流出してしまう。代理店には運用の専門家しか残らず、また事業会社の方も業務を全面委託していると、広告全体のバランスを見て戦略を考えられる人材がWeb広告の運用においていなくなってしまう。

 そこで、自社にノウハウを残しつつ、さまざまな広告のパフォーマンスを横串で一気通貫にモニタリングできるツールの模索を開始した。こうして2014年12月に導入したのが、マリンソフトウェアが提供する「Marin Search Enterprise」(以下Marin)だ。

コスト削減ではなく、「コスト」と「戦略」を総合的に考える

 Marinを採用した理由は、米アップルやデル、シマンテックなどグローバル企業での採用実績があり、かつさまざまな広告を横串でモニタリング・運用できるという点が大きかった。加えて「闇雲に広告運用コストを削減するのではなく、運用ノウハウを自社で蓄積しながら代理店とパートナーシップを組んで進めていく」という共通認識を持っていたことも大きいという。

 米MarinSoftware でCSMO(Chief Sales and Marketing Officer)としてセールスとマーケティングを統括するラッセル・ワース(Russell Wirth)氏は次のように語る。

MarinSoftware Chief Sales and Marketing Officer ラッセル・ワース氏
MarinSoftware Chief Sales and Marketing Officer ラッセル・ワース氏

 「広告代理店には、広告戦略の支援や、効果測定の手法、考え方などを示し、一歩先の提案を行うという重要な役割があります。一方、事業会社はそうした知見をもとに、自社の事業拡大に向けた打ち手を実行しなくてはなりません。Marinは、そうした双方のニーズに対応すべく、広告のほかソーシャルメディアを含めてさまざまなチャネルのデータを統合し、どのような要素がビジネスに関与・貢献しているかを分析できる仕組みを整えています。これにより、マーケターの作業負荷を軽減し、事業会社・広告代理店の双方で、より『戦略』に軸足を置くことができるのです」(ワース氏)

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現場では、無駄な業務やPDCAの改善が課題に

 こうした大きな目標に加え、運用型広告の現場では業務上の課題もあった。それらに対しても、Marinの機能は大いに期待できたという。現場の課題としてSEMプランナー 渡邊智也氏は「これまで代理店にキーワードの入札調整を一任していたため、社内にノウハウが蓄積できない側面がありました」と語る。

株式会社DMM.comラボ マーケティング本部 SEMプランナー 渡邊智也氏
株式会社DMM.comラボ マーケティング本部 SEMプランナー 渡邊智也氏

 さらに代理店を変えるたびに、入札ツールのアカウントを変更したり、キーワードを再設定したりなど、手間も生じていた。

 また、広告効果の検証においても、代理店との定期的なミーティングで結果を共有し、その時点で入札停止やクリエイティブの絞り込みを行っていたため、適切なタイミングでの打ち手が取れないという課題もあった。細かい点でいえば、代理店から上がってくるレポートの数値もその都度確認を取っていたので、それだけで時間が経ってしまう。将来を見据えた戦略的な話は何もできず、「結果を見て打ち手を変える」だけに終始していたという現実があった。

 MarinはGoogle Adwords、Yahoo! Japanスポンサードサーチといったサーチ広告やGoogleディスプレイネットワーク(GDN)やYahoo! Japanディスプレイアドネットワーク(YDN)といったアドネットワークをパブリッシャー横断で入札や運用管理を行い、何か突発的な事象が起これば自動アラートを出す機能やレポーティング・分析機能を備えている。また社内データとも連携でき、獲得単価やCVRだけでなく、事業との関連性を含めて分析することも可能だ。以上のことから、「Web広告の正しい運用」という大きな目標だけでなく、現場の課題解決にもつながると考え、導入を決めたという。

Marinの導入でCVR、CPAが大きく改善、PDCAサイクルも迅速化

 現在、同社においてMarinは大きく3つの分野で活用されている。第一に「自動入札」だ。自動入札には様々な戦略があるが、同社では「DMM」を含む「ブランドワード」と、それ以外のワードで自動入札を推進している。ブランドワードは、社名やサービス名を想起させる重要なワードであるため、常時検索トップに掲載されるようにMarinを使ってGoogle, Yahoo! Japanを横断して順位指定入札を行っている。

 それ以外のワードに関しては、投資対効果をもとに目標CPAを設定し、各キーワードで自動入札による調整を行っている。渡邊氏によると、この自動入札機能によって、広告の無駄クリックが削減できたほか、細かい入札調整ができることでCVRが劇的に改善。数値で見ると、導入前に比べCVRは1.4ポイント向上、CPAも30%ほど改善したサービスもあるそうだ。

 第二に、アラートメールだ。「たとえばニュースに取り上げられるなどでキーワードのimp数が急激に増えた場合、すぐ対応できるようにMarinからアラートを送ってもらいます。さらにもうひとつ、運用調整用にもアラートメールを利用しており、CPAが極端に高かったり、またはコンバージョンが多いのにCPAが非常に低かったりといった時に、メールで通知するように設定しています」と渡邊氏。以前に比べ、毎朝アラートメールをチェックして、大きな変動の確認や対策を立てられるようになったという。

 第三が検証レポートだ。これはランディングページや広告バナーの検証レポートを自動出力する機能で、これにより現場側ですぐに広告効果が確認できる。「以前は代理店との打ち合わせの後でしか対策が取れませんでしたが、現在は有意差が出た時点でクリエイティブを絞り込んだり、配信を停止することができます。これにより、無駄な広告出稿コストを抑えることができるほか、現在どのような訴求メッセージが有効かを即時確認できるようになり、検証結果が出る前に次のクリエイティブ作成の方針を立てられるようになりました。これにより、クリエイティブ検証のスパンや精度が上がっていると実感しています」(渡邊氏)

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動画広告やSNSなどMarin適用範囲の拡大を目指す

 では、「Web広告の正しい運用」についてはどうか。

 「入札戦略に関して、代理店と相談しながら進められるようになりました。また、打ち合わせの頻度は変わりませんが、以前のような『数値の報告会』ではなく、事前に数値を確認しているので、どのように今後の改善・増加につなげていくか、というような戦略ベースで進められるようになりました」(渡邊氏)

 Marinを導入したことで問題点を自動で指摘してくれ、レポートも出してくれるようになった。入札に関しては自動で調整してくれるので、運用の手間は格段に減り、代わりに代理店と協力し合いながら戦略的に進められるようになったのだ。「そのため、戦略を考える時間がない、現状がわからないという逃げが通用しなくなりましたね」(高木氏)

 「運用は、Marinが完全にサポートしているため、ほかに獲得が取れるワードがないかなど、新しいことを見つけるための時間が毎日取れるようになりました」と渡邊氏。両氏共に満足気な表情を見せる。

 では、代理店に委託する業務内容やコストに変化はあったのか。サービスによる違いはあるが、サービスによっては月間コストが約30%削減できたそうだ。

 もちろん高木氏は、「何が何でもコストを削減することが正解とは思わない」というスタンスをとる。「現場の課題解決を含め、当社が目指したことは、『広告運用に関し、あらゆる業務を細分化した上で、その業務一つひとつについて価値付けをしていくこと』です。

 なぜなら、コスト感覚を育てながら、委託する部分に関しては『何に対して、いくらの対価を払って、どのような成果を受け取るのか』という意識を持つことができるからです。これにより、広告運用の戦術にはまらず、上位の戦略に目を向けられます。そのためには統合的に広告戦略を捉えられるツールが必要でした。決して、ツールを導入して楽をしようという考えではありません」(高木氏)

DMM.comは挑戦を続ける

 これからも挑戦を続けていくと語る高木氏。具体的には2つの取り組みを考えている。ひとつは、リスティングだけでなくSEOやブランディング広告など、全体的な視点で広告戦略を考えられる人材を育てていくこと。もうひとつは、今後さらに拡大すると予想される動画広告への対応や、Facebook・TwitterなどSNSチャネルを使った集客・マネタイズのプロセスを構築することだ。

 これに対しワース氏は「ソーシャル広告管理プラットフォームであるMarin SocialでのFacebook、Instagram、Twitterでのソーシャル広告やそれぞれでの動画広告への対応を始め、データフィードを活用したGoogleショッピングキャンペーンとFacebookダイナミックプロダクト広告との同期機能、サーチキーワードを使ったソーシャル広告でのリターゲティングなどを現在提供しているが、今後さらにあらゆる媒体に適した広告フォーマットの入稿サポートなど、あらゆる局面でユーザーの支援を行えるよう、これからも開発を進めていく」と前置きし、次のように語る。

 「Web広告はさまざまなフォーマットやチャネル、プラットフォームがあり、非常に複雑なものとなっています。これにより、マーケターが年々疲弊していく状態は否めません。MarinSoftwareは、高木さんが仰るように、クロスチャネル・クロスプラットフォームへのさらなる対応を進め、全体を横串で捉えて戦略的マーケターを育てるための支援を続けていきます。また、グローバル企業との協業で培ったノウハウという価値を提供し、DMM.comのような日本のビジョナリーカンパニーのパートナーとして、あらゆる課題を解決していきます」(ワース氏)

 挑戦を続けるDMM.comと、それを下支えするMarin。両者のチームワークが今後もビジネスを加速させていく。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2016/05/12 10:00 https://markezine.jp/article/detail/24323