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マーケティング4.0を実践する、かものはしプロジェクトに学ぶ!マーケティングオートメーション活用術


「マーケティング4.0」を実践する、NPOのマーケティング

小畠:なぜ人は寄付をするのかは、とても難しい問題です。何かのサービスや商品などと対価の交換ではないにも関わらず、寄付を行う行動原理は紐解けていません。

稲垣:フィリップ・コトラーが、「マーケティング4.0」という概念を発表しましたよね。簡単に説明すると、マズローの段階欲求の最上位の自己実現欲求に焦点を当てたマーケティングがマーケティングの成否を分けるという話です。すでに先進的な企業は試行錯誤しながら取り組んでいますが、逆にNPOのファンドレイジングは、まさにそれだけを徹底的にやってきているのです。

――たとえ事業規模が企業と比べて小さくても、むしろ企業よりも高度なことを行っているNPOも存在しているのですね。ところでMarketo Social Impactでは、どんな活動をしているのでしょうか。

稲垣:Marketo Social Impactは、グローバルでは子どもの教育にフォーカスしたボランティア活動や寄付などを行っています。ただ、日本法人では、立ち上げの際に代表の福田と相談して、かたちだけのCSR活動にせず、より本業に近い領域で持続可能なかたちで関わり続けることで価値を発揮していこうという結論に至り、事業が相性の良いNPO法人にマーケティングオートメーションツール「Marketo」のライセンスを提供し、社員がプロボノで運用をお手伝いしています。日本ではまだ小さな活動ですが、会社の事業の拡大に合わせて成長し、無理なく続けていきたいと考えて取り組んでいます。

――デジタルマーケティング業界では一般的になりつつあるマーケティングオートメーションですが、NPOでの導入は一般的なのでしょうか?

稲垣:アメリカでは多くのNPOが寄付管理ツールとしてセールスフォースを導入して、Marketoと連携して活用しています。NPOにとって、セールスフォースは寄付管理にとても適した仕組みです。そこからより高度な施策をしたい、いろんな寄付者との接点をよりOne to Oneで最適化していきたいとう思いから、マーケティングオートメーションのようなツールを使いたくなってきます。

 日本ではまだ少ないですが、かものはしプロジェクトさんをはじめ4団体が、両方のツールを連携して活用されています。まずは今支援している団体にしっかりと使いこなして圧倒的な成果を出していただくことで、裾野を広げていきたいですね。また将来的な話ですが、NPO向けに様々なITサービスを無料、もしくは格安で提供する事業者が増えてきているので、それらのエコシステムを提供する構想も今練っています。

小畠:セールスフォースでは、積極的にアクションをしてくれる人はわかるのですが、こちらから何か施策を行いたい場合は、マーケティングに特化した仕組みのほうが良いかなと思いました。

稲垣:そうですね。セールスフォースは、人間がセールスフォースに入力したり見たりしながら、ある程度温まった人だけとお話をするための仕組みとしてよくできています。ただ、その少し手前には、たくさんの潜在的な寄付者の方々がいます。そこに対して人力だけでは全てをフォローしきれません。だからこそ、メールやウェブサイト、LINE、モバイルのアプリなど、様々なチャネルを通して自動的にコミュニケーションできる仕組みとしてマーケティングオートメーションが役立つのです。

――実際にMarketoを導入されて、メールの開封率が大きく向上したとうかがっています。

小畠:これまでOne to Oneのメールマーケティングをしていなかったこともあり、効果はてき面でした。もともとMarketoを活用した目的は、私たちの活動に興味を持ってくれている人に対して、知りたい情報を適切に伝えることでした。その上で、長い目でみて寄付者や仲間になってもらえればと考えていたのですが、結果として直接的に寄付会員を増やすことにも結び付いたのです。

――具体的にはどのようなキャンペーンを行ったのでしょうか。

小畠:まずはコンテンツマッピングといって、大きく5つのセグメントにユーザーを段階分けしました。各ステージのゴールや伝えたいメッセージによって、メールのコンテンツを出しわけました。今まではメルマガの購読希望者に同じ内容のメールを一斉送信していたので、正直なところメール購読の解除もありました。しかしMarketo導入後、ステージ3のセグメントに対して、会員申込ページへの誘導を促すメールを送ったところ、KPIであるページ訪問を超えて、数十件に及ぶ寄付会員や単発寄付を獲得することができたのです。

コンテンツマッピング

ステージ1:Anonymous(匿名)
ゴール:匿名から少しでも多くのKnownリードを増やす
KPI:メルマガ登録、コンテンツDL、フェアトレード商品購入
コンテンツ:かものはしプロジェクトという団体への信頼感を得る

ステージ2:MCL(Marketing Captured Lead)→MEL(Marketing Engaged Lead)
ゴール:エンゲージ済みのリードを増やす
KPI:ブログやイベントページへのアクセス、資料請求
コンテンツ:団体に親しみを持ってもらう

ステージ3:MEL→MQL(Marketing Qualified Lead)
ゴール:会員見込みリードを増やす
KPI:イベント申込、会員申込ページ訪問、単発寄付
コンテンツ:詳細な活動内容を理解してもらう

ステージ4:MQL→SAL(Sales Accepted Lead)
ゴール:イベント参加などでサポーター会員を仮登録にする
KPI:イベント参加、会員申込ページへの複数回訪問
コンテンツ:サポーター会員の必要性を理解してもらう

ステージ5:SAL→Customer
ゴール:仮登録から本登録へ
KPI:会員申込完了
コンテンツ:あなたが会員になることの意義

小畠:またステージごとにメールの内容も変えて、トリガーキャンペーンを行いました。“トリガー”とは、とあるアクションのことです。あるアクションをした人に、こういうメールを送った結果、会員になってもるあことができたという事例です。

 例えば、私たちはイベントに参加してくれた方に会員になってもらうことを重視してるので、イベントページに訪問した人に対して、イベントの参加をお願いする内容のメールを送ってます。他には寄付の申し込みページに訪問した人に対して、会員になってくださいとお願いするメールを送ったり。また年次報告書をダウンロードした方に対して、さらに詳しい団体の活動内容をお知らせする動画をメールで送付して、会員になってくださいというメッセージを送ったりしています。

稲垣:小畠さんたちが実行している施策は、当たり前のことのように思えるかもしれませんが、実際にこの仕組みがまわるように組み立てるのはとても大変なことです。まだできていない企業さんも、多いのではないでしょうか。

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メール開封率が平均約70%まで向上!直接CVの獲得も

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この記事の著者

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/05/23 17:46 https://markezine.jp/article/detail/24333

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