AI時代に必要なマーケターは「レーズンパン型人材」
AIが進化した時代に求められるマーケターとはどのような人材なのか。2016年4月に開催されたイベント「MarkeZineDay 2016 A.I. 機械学習/A.I.で進化するデジタルマーケティング」内では、その解を探るセッション「AI、機械学習の登場で変わるマーケターの役割」が行われた。
登壇したのは、リクルートホールディングス Recruit Institute of Technology(以下、RIT) 推進室 室長 石山洸氏。同氏は最初に「AI時代のマーケターのあるべき姿は、一言でいえば“レーズンパン型人材”です」と語った。
「パンはパンで食べてもおいしいし、レーズンはレーズン単体で美味。その2つが合わさったことで、よりおいしく、レーズンパンにしか提供できない価値が生まれるのです」(石山氏)
このレーズンパン型人材とは、石山氏が所属するRecruit Institute of Technologyの研究員であるOren Etzioni氏の造語で、以下のような考え方に基づいている。
経済界は、ビジネス需要を喚起して事業を開発し、市場拡大を実現したという実績で評価される。これが「パン」に相当する。一方AIが生まれた科学界は「どれだけ科学技術の進化に貢献できたか」という科学的な観点で評価される。これが「レーズン」にあたる。
つまりレーズンパン型人材とは、ビジネス的な感覚・評価を持ちつつ、かつ科学界の成果であるAIを掛け合わせてビジネスを進化させるスキルを持った人材のことを指す。レーズンパン型であれば、ビジネスのどこを取り上げても「AI」が介在しているため、どのようなビジネスモデルでもAIを基にして効果測定を行いながら、より効果的な次の一手を見つけ、拡大し続けることができるというのだ。
リクルートを形成する「ビジネス開発とAI研究に精通した人材」とは
では、石山氏はなぜ「ビジネスと科学技術の両方の感覚を持つ人材」に注目するのだろうか。同氏によれば、そこには2つの理由があるという。
ひとつは、石山氏自身、もともと商学部でコトラーのマーケティング理論を学んだ後に、大学院で理系の道に進んだ経歴を持ち、ビジネス感覚と研究開発の感覚の両方を持ちあわせているという背景がある。当時の研究テーマは「社会学・経済学といった社会科学に機械学習を導入する」ということで、修士時代には18本の論文を執筆、マーケティングと機械学習の両方に精通しているというキャリアの持ち主だ。
リクルートに入社後は、ビッグデータ関連事業会社の立ち上げや、リーンスタートアップの方法論をもとに新規事業開発を推進。現在所属するRecruit Institute of Technologyを立ち上げたのは、2015年4月のことだ。その背景には「2030年に人材領域・販売領域においてグローバルNo.1」というリクルートグループの一つの目指すビジョンが、背景の一つとしてあった。
石山氏は、「その目標を達成するために、当研究所ではテクノロジー研究成果を持ちながら、起業家精神にあふれる研究者を採用しています。この採用活動を通じて、両方の分野に精通した人材の重要性を考えるようになりました」と語る。これがふたつめの理由だ。