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統括編集長インタビュー

「自らの価値を言語化し、チーム一丸で突き進む」注目Fintechベンチャー・マネーフォワード成長譚


自分たちの存在価値は何か?

── 「ユーザーにどのような価値を提供するか」。業種・業態問わず、みなさんが課題に感じている点だと思います。

細谷:ダウンロードして、とりあえず自分の銀行口座を連携しても、アプリを利用する価値を即座に感じていただけないと、ユーザーは利用してくれません。ただでさえ数多くのアプリが存在する中で「すごく便利だな」「役立つな」ってことを直感的に感じていただけないと、継続して使っていただくのは、難しくなってますよね。

── 実は、私はマネーフォワードをかなり早い段階でダウンロードしていたのですが、まったく使っていませんでした(笑)。まさに、直感的に価値を感じることができなかったのだと思います。その後、ふとしたことがきっかけとなって、今は頻繁に利用するようになりました。

森:そうでしたか(笑)。逆に聞きたいのですが、ご利用を再開されるきっかけは何だったのでしょうか。

── 御社が主催されたリアルイベント「お金のEXPO」に参加したことです。その時にいただいた本を帰りの電車でパラパラと読んだところ、家計管理の考え方や全体像がざっくり掴めました。そして、御社サービスを利用すれば、自分が考えていたのより簡単に家計管理ができるのではないかと感じたのです。

森:「お金のEXPO」は、弊社にとっても初の試みだったのですが、蓋を開けてみたらすごく盛況に終えることができました。みなさんにお金のリテラシーを上げてもらうことを目的としていたのですが、押久保さんのように、マネーフォワードを使ってみようと思っていただけるきっかけにもなったみたいです。

 家計簿をつけることに、挫折してしまう人も多いと思います。管理することは多いし、面倒ですし。その煩雑な作業を自動化して、一つにまとめて、キレイに見せる。さらに、色々な視点で家計の状況を把握することで、漠然と持っているお金に対する不安を払拭できればと思ってます。

 私たちが提供したい価値の根底には「将来のお金に対する不安の払拭」があります。子供の教育や老後の年金など、お金に対する将来の不安は数えあげればきりがありません。しかし、現状がどうなっていて、これから何をすれば自分が描くライフプランを実現できるのか、それを把握することができれば不安は和らぎますよね。

 お金に対して不安を持たない生活を、ユーザーに提供していきたいのです。

提供価値の言語化には理由がある

── 自分たちが提供する価値を、そこまで言語化できるのは素晴らしいですね。

細谷:提供したい価値の話は、最初から明確に固まっていたわけではありません。紆余曲折を経て、じょじょに言語化されてきた感じです。サービスが成長する中で固まってきたとも言えますね。

── といいますと。

細谷:どの事業でもそうだと思うのですが、成長する過程で関わる人が増えてくると、色々な考え方や視点がでてきます。少人数で回している時は、いわゆる阿吽の呼吸でなんとかなるのですが、関わる人が増えてくると、年齢、立場、これまでの経験などで考えが変わりますし、その状況が続くと結果的にサービスの軸がブレていきます。

 具体的には、無駄なコミュニケーションが増えストレスになったり、開発のスピードも遅れるので、結果的にアウトプットや改善の質が下がっていってしまいます。

 企画、マーケティング、開発、カスタマーサポート……立場やミッションは違いますが、みんなが同じ方向を向いているチームビルディングが必要です。

 そのためには、自分たちがどのような価値を提供するのか、言語化し、共通認識を持つことが大切です。そして、それぞれが自身の言葉で共通認識を語れるようになることで、少しずつチームの血肉になっていくのではと思います。

── おっしゃるとおり、明確に言語化ができれば、後は施策レベルに落ちていきますね。ところで、これまで成長の過程を聞いてきましたが、特に印象に残る飛躍のきっかけがあれば教えてもらえますか。

森:大きな転機として挙げるなら、やはり2015年6月から開始したテレビCMの出稿でしょうか。私たちのようなベンチャーにとって、テレビCMへ出稿することは、まさに清水の舞台から飛び降りるような気持ちです。当時の社内はざわざわしていました(笑)。

 ただ、この業界は先行者メリットが大きく、先に一番になったところが独走する傾向にあることは、経営層も理解していました。また、テレビCMの効果を最大化するためにテレビCMの影響で来訪したユーザーが直帰しないように、ランディングページやアプリの解説ページなど、要所要所の場所でしっかりとコミュニケーションを練り上げました。

 結果的には、流入が大幅に増えるなど、多くの人に知ってもらうきっかけを作ることになったので、次のステージに立つきっかけになったと思います。

細谷:開発サイドとしては、Androidへの対応が挙げられますね。国内の自動家計簿では初めて、Googleのデザインガイドライン「マテリアル・デザイン」に対応し、2014年、2015年と2年連続でベストアプリ賞をいただきました。

 ベストアプリを受賞することで、Google Play上での露出が増える効果があったことはもちろんです。また、Androidのユーザーが、他のマテリアルデザインに対応しているアプリと同じ感覚で当社のアプリを利用できるようになるため、よりよい体験を提供することにつながったと思います。

 また、テレビ等で自分たちが考える文脈に沿った取り上げ方をしていただくと、効果が絶大だと感じます。こういった効果を実感しているので、開発側とマーケティング・PRが一体になって取り組むことで、大きなインパクトが生み出せると思います。

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思い込みがユーザーとの「ギャップ」を作った

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/07/08 14:31 https://markezine.jp/article/detail/24514

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