データ分析レポートだけでは実践につながらない
MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は、この5月に統合分析ソリューション「XICA magellan」(以下、マゼラン)を先行リリースされたサイカの平尾社長を訪ねました。サイカはマゼランの開発・事業推進に関して、3月に電通および電通デジタル・ホールディングスと業務提携し、企業のデジタルマーケティングの企画から実践までのサポートにあたることも発表しています(参考情報)。
また、7月4日に矢野経済研究所が発表した『広告効果測定のためのデータ活用に関するアンケート調査』でも、データ分析・活用へのニーズが高いと示され、データ分析・活用を促進するサービスへの期待が高まっているのではと感じます(参考情報)。
2012年に創業されたとのことですが、初めにこれまでの経緯を教えていただけますか。
平尾:当初は統計分析の会社として起業し、企業に対して統計分析ツールを通したコンサルティングを行っていました。ですが1年ほど経って、僕らが提出したレポートも「なるほど」とは思われても、そこから実践に落とせる企業が非常に少ないことに気付いたのです。
現状に対して問題意識を持ち、仮説を立てて実践するには、やはり外部である僕らだけでは不十分でした。そこで、事業会社の方が使いこなせる統計分析ツールの開発に取り掛かりました。
MZ:ちなみに、統計分析に着目したのは、どういった背景があったのでしょうか?
平尾:それは、僕の個人的な原体験に基づいています。実は中学1年生のとき、父が勤めていた大手小売企業が倒産し、父も周囲の方々もとてもつらい思いをしたのを間近で見たんです。
数値化された客観データがあれば倒産は防げたかも
平尾:父は課長くらいの役職だったので、倒産を知ったのは発表のわずか1時間前だったそうです。勤めている以上、自分ではどうにもならない悲しみがあるんだと痛感して、将来は自分の足で立つことを意識しました。統計学に出会ったのは、進学した慶応義塾大学での竹中平蔵教授のゼミでした。
MZ:理系のバックグラウンドではなく、経済政策における統計学に触れられたんですね。
平尾:ええ。経済政策の価値を、しっかり数字で明らかにすることを求められて、衝撃を受けました。父の勤めていた会社はカリスマ経営者で有名でしたが、もしも統計分析で客観的な判断材料を得ていたら、倒産しなかった可能性が0.001%でもあったかもしれない。あの悲しみを防げたかもしれないと感じて、もっと世間一般に統計分析の価値を届けたいと思うようになりました。そうして、卒業の直前に起業しました。
MZ:そうだったんですね。先ほど、翌年にデータ分析のツール開発に着手されたとのことでしたが、そこから「マゼラン」開発にはどうつながっているのですか?
平尾:特別な知識がなくても使えるツールを開発したものの、やはり有効活用するには、使う人自身が仮説を立てられること、またそれだけの問題意識を持っていることが必要でした。
そのころ、ちょうど僕らのビジョンとして「すべての会社にデータから得られる示唆を届ける」ことを掲げたんですが、これでは“すべての会社”にはならない。そこで、分析ツールではなく、そこからどうアクションを起こすべきかを示唆するツールの開発に乗り出しました。